僕の第三次世界大戦
※※この物語に登場する名前・団体は実際にあるものと何ら関係ありません※※
莫大な驚異が僕らを襲ってきたのは、寒さの真に差し掛かる直前だった。アジアの大国から未知の細菌《コレ》が連れてこられた。
《コレ》は次々に人々を襲い、世界を混沌へと導いた。《コレ》は感染力が強い。肺に入ると厄介で60代以上は必ず死に至る。「死の疫病」と称され、人々は、外に出ること、誰かの半径2m以内に近づくことが法的に禁止された。
各国が各々経済政策を始めたが、自営業者や中小企業が次々と倒産し悲鳴をあげた。
職を失うことは金を失うこと。
金を失うことは生を失うことだ。
僕の大好きなライブハウスも、クラウドファンディングを始めて3日後に潰れてしまった。
《コレ》は自らの能力を直接的に使うだけでは物足りず、僕らの星の経済を止め、間接的に人を殺している。ゆっくり、かつ確実に。
「なぁ、これって───」
僕は、床の模様が見えなくなってしまっているほどに散らばった就職のチラシを憎たらしく踏んづけながら電話の相手に語りかける。
「やめろよ、お前まだそんなこと信じてるのか」
「なんだよ、てっちゃん。まだ何も言ってないぞ」
電話の相手は僕の小学生の頃からの友達で、今では僕の唯一の友達となってしまった尊い存在、滝輝彦だ。
「お前の言いそうなことは大体分かるよ。《コレ》がフミーメンソンの陰謀だとか、宇宙人が放った細菌兵器……だとかそういうことが言いたいんだろう」
「あぁ、あぁ、まさにその通りだ。だがちょっと違うな。僕が言いたいのはね、宇宙人が送ってきた細菌兵器《コレ》、これをフミーメンソンの連中が世界に撒き散らす。これが、宇宙人と僕らのガチンコ対決。まさに世界を巻き込んだ戦争、第三次世界大戦だ!そしてその中!アイツら、世間様が見れないうちに何かデカいことをやるつもりだぞ。その証拠に、セレブたちのエルシュプイン島での児童売買の証拠が見つかって大騒ぎに……」
「あーはいはい、もう、分かったって。そんな胡散臭いこと」
受話器の向こうでてっちゃんが溜息をついてることが容易く想像できる。
「お前さぁ、いつまで縋ってるの?そろそろちゃんと働きなよ」
「いや、いや、ダメだ。メンソンみたいなエリートの奴隷になるのは。てっちゃんだって嫌だろ」
「俺は未来のエリートだよ。──ん、あぁ。今行く──……ワリ、戻らなきゃ。切るわ」
そう言って僕の吸う息すら待たずてっちゃんは電話越しに行ってしまった。
てっちゃんと僕は、昔から仲が良くて、昔から気が合った唯一の友達だったのに。今や彼は一流IT企業の一社員として働いている。将来を期待された彼と、就職に失敗した僕、一体どこで差が開いてしまったのだろう。
僕が彼と出会ったのは、小学五年生の春だった。彼は都会から引っ越してきた少々気取ったいけ好かない奴だった。
転校生は狙われる。
当時いじめに会っていた僕にとって彼の登場は恰好の逃げ場だった。案の定、僕をいじめていたいじめっ子達は転校生に標的を変える。しかし、僕の楽園はそう長くは続かなかった。
転校生は嫌にクールで何をされても動じない不動明王みたいな奴だった。面白みを欠いたいじめっ子たちのターゲットは再び僕に移り代わった。
小5の冬、河川敷で僕はいじめっ子に暴力を振るわれていた。小学生の殴る蹴るなんて、大したことじゃないかもしれない。だが、当時の僕にとって到底抵抗するなんて無理な話だった。
ひたすら耐え開放されることを待っている時に事件は起こった。
ふと痛みを感じなくなったのだ。
恐る恐る顔を上げると、そこにはあの転校生がいた。
「君たちいつもこんなことしてるの?」
転校生は僕を庇うように仁王立ちしたまま澄ました表情でいじめっ子たちに尋ねる。
「なんだよ、お前。お前も、俺たちが構ってあげてただろ」
突然の転校生の登場にいじめっ子のボスが声を荒げる。
「何の……話?」
転校生はキョトンとした顔でいじめっ子を見つめる。
「ごめんね、俺、他人に興味無いから」
更にそういうと、僕の方を振り向き、ボロボロになった僕に肩を貸した。そして、そのまま、僕の家の帰路までつこうとしていた。あまりにも素早く上品だった手際に、いじめっ子達は圧倒されていたが、やがて大声で喚く声が遥後ろから聞こえてきた。
「滝くんは、どうして僕を助けてくれたの?」
帰り道の途中にある公園で僕らは一休みをしていた。転校生は怪我だらけの僕に配慮してか、先に座っていた女子高生のグループを除けてまでベンチに座ろうとしていた。
「通りかかったから」
「え」
あまりにも素っ気ない答えで拍子抜けしてしまった。
「たまたま。通りかかったら、人がいて、■■くんが苦しそうにしてたから」
「言ったじゃん、俺、他人に興味無いって。あいつらのこと覚えてないけど■■くんのことだけは覚えてた。いつも見てたじゃん、俺のこと」
ずっと黙っていた僕に転校生はそう言い放った。彼がいじめにあっている間、僕は彼のことを相当目で追っていたらしい。いじめの標的が変わっても、いつまたこちらに来るかという恐怖からしていた行為なら相当気持ち悪かった。
「ご、ごめん」
「いいよ」
「……あ、そうだ。■■くんの好きなものを教えてよ」
転校生はさっきまでのクールさとは打って変わって無邪気な笑顔をこちらに向けた。
「他人に興味無い俺が■■くんのことを覚えていたってことは、■■くんと俺は友達だから」
こいつは実は、クールに見えて案外自分中心に物事を回している。そう僕は思った。
僕は、テレビで見た都市伝説の話をした。
エイリアン、UMA、ロボット、フミーメンソン……中でも1番好きだったのはマヤの大予言だった。
「僕は、こんな世界、さっさと滅んでしまえばいいと思ってるよ」
都市伝説トークにすっかり酔っていた僕は悪態をつきながらマヤ文明の予言に縋るような発言をした。
「なんかそれ、おもしろいね」
隣ではてっちゃんが笑っていた。
それから僕ら2人はどんなときも一緒に遊んだ。秘密基地を作ってフミーメンソンごっこをしたり、ダンボールで自作のUMAを作ったりした。
てっちゃんはきっと人以外にもあまり興味がなくて、いつも僕の都市伝説話を嬉しそうに聞いてくれた。
僕らはオカルトキッズだった。
あぁ、あぁ、そうか。
僕とてっちゃんの間に差が生まれたのではない。
それは、元々あったんだ。
てっちゃんは転校生で、強くて、いつも僕に合わせてくれてたから、僕が勝手に同じレベルだと勘違いしたんだ。
あの頃に戻らせてくれ。
あの頃僕らは純粋だった。
あの日あの時、僕らは本気で2012年に世界が滅亡すると思っていたし、未来の車は空を飛んでると信じてた。
だから僕はこの時、車の免許を取らなくてもいいんだと胸を撫で下ろした。
2012年に滅ぶのにその先の未来なんて、大人には理解できないチグハグな信条があった。
チグハグのUMAがこちらを見ている。
ゆっくりと歩みを進めてくる。
緑の麻が揺れる。
ぼくが育てて ィる 観葉植物だ 。
ウッ─────
頭を床に叩きつけられる感覚で目を覚ます。
どうやら夢を見ていたらしい。
懐かしい夢。
僕の目に即座に飛び込んでくる6月の文字に頭が痛くなる。
あの日、てっちゃんと電話を終えた日からもう何ヶ月経った。4ヶ月ほど経っている。
あれだけ騒がれていた《コレ》は徐々に収束しつつあり、街にも活気が溢れ出していた。
大学4年、就職から逃げた僕は今、第二新卒というブランドを使って就職をするべき立ち位置にいる。
マヤの予言は外れてしまった。
空飛ぶクルマや知能を持ったお仕事ロボットを夢見た少年にはもう何も残っていない。
僕にとって《コレ》の騒動は、世界を滅ぼす唯一の糧だった。頼みの綱だったのだ。
宇宙人とか政治家とか陰謀論とか正直どうでもよかった。ただ、世界が終焉を迎えるのをじっと待っていたのだ。
「なにが宇宙人と僕らの世界を巻き込んだ戦争、第三次世界大戦……だよ」
僕は意を決して椅子を蹴る。
一瞬息が詰まるが、直ぐに緊張は溶ける。
夢で見たあのチグハグなUMAがまたこちらをみている。
ただ、今回は
見てイ る だけ ダ。
、
コツ ち ヲ 隕九※
隨代▲縺ヲィ ??
(この物語は全てフィクションです)
(この物語 は すべて フィクション? です)
(この 迚ゥ隱ハ スススス ベテ??? 繝輔ぅ繧ッ繧キ繝ァ繝ウ death)
(縺薙?迚ゥ隱槭?蜈ィ縺ヲ繝輔ぅ繧ッ繧キ繝ァ繝ウ縺ァ縺)
ミ゜