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けーすけ
2022年10月23日 22:06
「ねえねえ、本当に入って良かったの?」 「大丈夫だよ。おいで。」 2人はひそひそと話しながら、勝手に社へと入っていった。いや、勝手というのは少し違うだろう。きちんと門前で何度も挨拶をしたのに、家主からの返事が一向に返ってこなかったので、しびれを切らして社の中へと入ったのだった。 「ねー、ねー、ネズちゃん。あのおじいちゃんのオオカミ様を一目見てほしいってどういうことなの。オオカミ様とは
2022年10月19日 19:52
「おはようございます!」 オオカミ様は、まだ戻らないオオカミ姿の自分の毛並みを愛おしそうに毛繕いしていた。相変わらず戻るような気配も無い姿に、半ば諦めのようなものも感じていた。朝陽が差し込む大広間で寛いでいた頃に、その声は社の入り口から聞こえた。 「入ってきてよいぞ。」 社の入り口に届くように大きく吠えて声の主がやってくるのを待つ。今日は12月も終わりに近づいていたが、差し込んでくる
2022年8月31日 17:56
クチナワの治める地方から更に西へと向かう。疲れてはいないが休み無しで大空を駆けるオオカミ様は、背中で呑気にガールズトークを楽しんでいる2人に呆れている。 「やれやれ。これから向かう地方は、”歪み” の生じた忌み地であるというのに。タツミが治めているから大丈夫だとは思うが…。」 オオカミ様の独り言は、ミカとカナエの耳にも聞こえた。ミカは、興味津々にオオカミ様に質問をした。 「オオカミ様
2022年8月29日 22:42
「ミカちゃんとこんなに早く再会できるなんて思いもしなかった。とても嬉しい。新しい街はどんなところなの。」 「私も嬉しい。ちょっと引き継ぎとか色々とあって、引っ越し準備ができてなくてごめんね。新しい街はまだゆっくりと見れていないけれど、悪くないところだよ。でも、ミカちゃんの街には長年いたから居心地良いし、いつかまた遊びに行きたいと思ってる。」 カナエとミカはオオカミ様の背中で楽しそうにおし
2022年8月28日 19:50
「そろそろ着きそうだね。」 オオカミ様の背中から、タマは自分の住んでいた街を見下ろした。いつも日向ぼっこをしていた自分の元住処だった寺を見つけると、自分の街に戻ってきたことが分かった。カナエは、自分の住んでいた街や通っていた学校を指差しては嬉しそうにタマに教えてあげていた。 自分の社から大空を駆けていたオオカミ様は、目的地である街の端にある小さな祠を見つけると、ゆっくりと下へ下へと向かっ
2022年8月27日 00:07
小鳥のさえずりが遠くから聞こえる。 オオカミ様はパチリと目を覚ますと、寝た姿勢のまま大きく伸びをした。伸ばした自分の足先を見ると、慌てて飛び起きた。 「まだ ”この姿” のままか!」 寝室に置いてある鏡に近づくと、恐る恐る自分の映った姿を覗き込んだ。そこにはピンと耳を立てた真っ白なオオカミの姿があった。オオカミ様が自分の姿を確認すると、鏡の中のオオカミはしょんぼりと耳を垂らしていた。
2022年8月26日 09:27
「ああー。疲れた。」 久しぶりにオオカミの姿になった大神様は、自分の社へ帰宅するとぐったりした。そして、自分の寝室へと向かい布団の上でとぐろを巻くように丸まると、自分のフサフサとした毛並みを愛おしそうにペロペロと毛繕いした。あまりに疲れきっていたのか、そのままスヤスヤと寝息を立てて眠りについてしまった。 「おはよー!」 朝陽がすっかり昇りきった頃、オオカミ様の社に元気