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【HIPHOP座談会】2021年クラった曲はこれだ!

Twitterにて、HIPHOPのレビューを書き続けて4年目に突入したドラム師匠です。今回は、私と同じようにHIPHOPを紹介している PAPA-KIMG(パパキムジー) さんとの対談をお届けします。KIMGさん、自己紹介をお願いします。

PAPA-KIMG:ドラム師匠と同じく2児の父です。自分は2020年1月から月に20〜30本ぐらいのMVを紹介しています。インスタでは、ちょっと長めのレビューを書いてます。都内在住です。

ドラム師匠:では今回、2021年にクラったMVを3曲ずつ挙げていこうと思います。

※文章のリズム感を優先し、アーティストへの敬称は略しています。

PAPA-KIMG:いや〜、3曲って選び切れないですよね。この企画のためにYouTubeでプレイリストを作って聴き直してたら、どれもいいじゃんってなっちゃって(笑)でも、これはって曲があるんで紹介します。

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PAPA-KIMGがクラった曲①

Kl$nt.JP / NOBORI


PAPA-KIMG:この曲は、聴いた瞬間に"おー"ってきましたね。ハングリーな感じがして。この Kl$nt.JP(クレセントジェイピー) は、RwyL(ロイヤル)、Jwyed(ジェイド)、Fetty Flatbush(フェティフラットブッシュ)、GLMRS(グラマラス)からなる埼玉・群馬のクルーです。

ドラム師匠:みんな乾いてるし、ギラギラしてるのがいいですね。

PAPA-KIMG:MV「GLMRS / CHAIN SMOKE feat.Jwyed」にもこの4人が出演してて、クソカッコいいんですよ。クルーの知名度はまだないんですけど、再生数がもっと伸びてもいいと思います。

SNSもそんなマメに更新していなくて情報があまりないんです。その媚びてない姿勢がまたカッコいいなって(笑)

ドラム師匠:伝える側としては、もっと情報ちょうだいってなりますけど(笑)このMVをリリースしているMam Fam Production.は、今年かっこいい曲を数多く輩出していましたね。私もJwyedやOROCHIの楽曲を紹介しました。


ドラム師匠:Mam Fam Production.を主宰している ROWNINGJO は、埼玉、西東京の若手ラッパーのミキシング、ビート提供、MV撮影などサポートしているみたいです。彼らの情報発信が少ないから一役買っているのかもしれません。

PAPA-KIMG:なるほど。西東京も(HIP HOPが)熱いんですよね。人化イルミネーションの音源もバカカッコいいですし。


ドラム師匠:私はKYONCEE APARTMENT から西東京のヤバさを知りました。

PAPA-KIMG:KYONCEE APARTMENTのメンバー自体も、誰が正式メンバーか把握している人がいないらしいです。

ドラム師匠:西東京って奥深いな。ちなみに、西東京ってどんな所なんですか?大阪にいるとイメージしにくくて。

PAPA-KIMG:えとね、郊外のエリアなんですけど、僕が注目しているのは福生(ふっさ)っていう場所で、横田基地があるんですよ。基地の外にはアメリカハウスってのがあって、古着屋とか雑貨屋とかがにぎわってて。福生周辺はHIPHOPカルチャーが根付いていますね。

ドラム師匠:基地からの流れなんですね。この勢いで私がクラった曲を紹介します。偶然、西東京のラッパーの曲なんですよ。

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ドラム師匠がクラった曲①

Montana Joe Carter / KINOPI / YB feat. YOUNG BOY


PAPA-KIMG:うわーきたー!Montana Joe Carterか!俺もこれはヤバいと思ってました。


ドラム師匠:KIMGさんもツイートしてましたね。この人もあんまり情報がないんですよ。今年はRYKEYとのフリースタイル曲「ur choice」をリリースしてました。

Montana Joe Carterって短いフレーズを繰り返してリズムに乗せるのが上手いんですよ。このMVは2曲入っているんですけど、ダークなのに心が躍るんです。夜の深い時間にクラブってかかったら最高ですよ!この苦味は子供には分かるまいって(笑)

PAPA-KIMG:確かに子供には聴かせられないな(笑)HIPHOPのダークな部分って惹かれますよね。僕もディール(取引)の曲とかバンバン聴きますけど、そういう事をやる訳でもないし、やりたいとも思わないんです。

じゃあ、なんで惹かれるのかな?って考えたら、"マフィア映画"とか"ヤクザ映画"をワクワクして見ちゃうじゃないですか。あの感覚に似ているなって。自分の知らない世界とか、生き様を垣間見れるのがいいなって。

ドラム師匠:分かります。HIPHOPが好きってだけで、「もしかして薬やってんちゃう?」「TATOO入ってるんちゃう?」とか言われるんです。それってHIPHOPで歌われている事がリアルに思える証拠だなって。まあ、リアルなんでしょうけど(笑)

PAPA-KIMG:では次の曲を紹介します。キャッチな曲もいいんですけど、クラった曲っていう基準で考えると、アンダーグランドなものになりました。

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PAPA-KIMGがクラった曲②

OGRE WAVE / finest feat. Maligno Blain,SHAKE


ドラム師匠:うわ〜この曲好きです!70sのブラックミュージックをサンプリングした90sのBoomBapを継承した曲ですね。OGRE WAVEは今年、SILENT KILLA JOINT や S-kaine との共作が目立ってました。

PAPA-KIMG:OGRE WAVEはヤバいですよね。頭で「ジャーン」ってシンバルで始まって、ビートが鳴ると同時にピアノとストリングスが挿入されという。出だしからつかまれちゃいました。

ドラム師匠:ビートが走る前、女性ボーカルで歌い上げて、期待をあおる高揚感がいいですよね。あとVerseとVerseの間のHOOKはサンプリングしたボーカルが歌うっていう構成も好きです。

PAPA-KIMG:この映像も良くて、コンクリートにグラフィティが描かれてて、それをバックにラップしていることろとか、しゃがみながらラップしていることろがツボでしたね。ネルシャツも首元までボタンをとめているところも。

ドラム師匠:分かる〜。これぞBoomBapって感じで。

PAPA-KIMG:僕の思っているHIPHOPの映像ってこういうのです。やっぱHIPHOPにはコンテナとかスクラップ工場が似合います。

ドラム師匠:サビて汚れた感じがね。

PAPA-KIMG:ド頭のビートの入りでクラって、ビートに乗ったMaligno BlainとSHAKEの流れるようなフローもスキルの高け〜ってクラって、さらに映像もいいっていう3段引き込みです(笑)

ドラム師匠:これだけカッコいいラップをするなら、MCの2人にはもっとリリースして欲しい…ってリスナー目線で思ってしまいます。

では次、私のセレクトです。2021年を振り返って、ビートで1番クラった曲でどれかなってパッと浮かんだのがコレでした。

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ドラム師匠がクラった曲②

S-kaine, Fuma no KTR, Spada / Day ’N’ Night (Prod. DJ UPPERCUT)


PAPA-KIMG:ヤバいですね。僕もDJ UPPERCUTは注目してて、彼がプロデュースした楽曲「$MOKE OG / $MOKE OG」を今回紹介しようか迷ってたぐらいです。

ドラム師匠:あの曲も良かったな。で、この曲に話を戻して。何がいいってワンループなんですよ。途中でブレイク(無音)を数秒入れて、またビートをドン!と出すっていう。この繰り返しだけで曲を成立させているんです。

PAPA-KIMG:そうなんだ。ワンループって同じフレーズだけを繰り返すってことですよね?

ドラム師匠:そうです。この曲は結構聴きどころがあって、S-kaineとFuma no KTRはMCバトルを辞めるって言ってたんですけど、今でもバトルに出場しながら音源もバンバン出してるんです。そのフラットさがいいなって。

あとSpadaは、今年Normcore Boyzがギクシャクしてて脱退するかも?ってインスタライブで話をしてて。結局クルーは活動休止という形になったんですけど、ソロではバチバチなラップをかましてて、クルーから離れたことで人間的にたくましくなったなって感じました。

S-kaineは、喉をつぶしながら言葉を吐くラップスタイルなんです。まだ若いんですけど年々その声に円熟味を増してきたっていうか、声の渋さに年齢が追いついてきたように感じます。

PAPA-KIMG:S-kaineはアルバムを出してましたよね。そのデザインをしているのがって人なんです。自身でもラップしてて、「RETURN OF THE LIFE」っていい曲なんです。

ドラム師匠:へ〜、知りませんでした。聴いてみます。


PAPA-KIMG:そしたら僕が選んだ最後の曲なんですけど、やっぱり3曲に絞るって難しいんですよね。でもクラったという基準でこの曲にしました。

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PAPA-KIMGがクラった曲③

Baderfly / bresmoke (Prod. nomadd)


PAPA-KIMG:Baderflyは、福岡を拠点に活動していています。フローが語り口調っぽくて、抑揚もそんなにある訳じゃないんですけど、リズムに乗せている感じもあって耳に残ります。リリックがYouTubeに掲載されていて、少年院で初めてラップを始めたっぽいんです。

「初舞台は檻の中のイベント フニが主催ラップクラブ犯罪者のセッション」

「bresmoke」のリリックより引用


ドラム師匠:この曲、初めて聞きました。少年院でラップを始めたってZORN みたいですね。

PAPA-KIMG:少年院に行ってる雰囲気もないんですけど、歌っている内容は結構ハードで。そのギャップにやられたっていう所もあります。「ドンペリや赤ワインじゃなく音源で乾杯」ってフレーズが刺さりました。

ドラム師匠:このラップスタイルは、リリックというか日本語がスッと耳に入ってきますね。

PAPA-KIMG:あとトラックは、nomaddっていう佐賀のビートメーカーが作ってて、荒井由美の「雨の街を」をサンプリングしています。

ドラム師匠:サンプリングしたフレーズと、リリックが関連してる感じですか?

PAPA-KIMG:そうですね。ほぼ原曲のままで、いいところ摘んでいるなと思いました。少年院の出来事を歌にしていますけど、俺悪いだろって強調するわけでもなく、切ない感じに歌い上げています。

ドラム師匠:「差し入れのANARCHYの小説」って歌詞が気になります。

PAPA-KIMG:小説っていうかおそらく『痛みの作文』っていう自叙伝ですよね。僕も買って持っています。結構ANARCHYに影響を受けているっぽくて、リリックによく出てきます。

ドラム師匠:福岡の若手クルー Deep Leaf もANARCHYへの憧れを公言しています。ANARCHYは今も最前線で活動しててスゴいですね。

そしたら最後に私が紹介します。

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ドラム師匠がクラった曲③

TORAUMA / Sol(Prod. CraftBeatz)

PAPA-KIMG:TORAUMA か。この人ヤバいですよね。

ドラム師匠:たぶんメチャクチャ不器用な人だと思うんです。必死でもがいてて、もがけばもがくほど糸が絡まるかもしれない、それでももがき続けてるのがいいんです。

PAPA-KIMG:沖縄の人ですよね。なにか紆余曲折あって、縁があって沖縄にたどり着いたっていうプロフィールだったような、、、

ドラム師匠:そうです青森出身で、沖縄のクルー604のメンバーです。604のメンバーって人気があるラッパーが多いじゃないですか。その中ではまだ目立ってなくて、負けの美学というか、ここから這い上がる感じが自分と重なってしまって。

「ラッパーなんだろ」って力強く吠えるフレーズがあって、自ら逃げ道を塞ぎ、自分に矢を突き刺す感じがたまらなく好きです。

PAPA-KIMG:僕もこの曲、よく聴いてました。

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終わりに

ドラム師匠:ということで3曲ずつ選びましたが、いかがでしたか?

PAPA-KIMG:いや〜、やっぱり3曲だけってのはキツかったですね。年1だと曲が多すぎて、選びに選べない。

ドラム師匠:たしかに1年は長すぎる。季節の変わり目とかで対談するのはどうですか?こうやって喋ることで、自分がどんなことを感じているかも確認できますしね。

PAPA-KIMG:いいですね。恒例企画にしましょうよ。僕も春にグッとくる曲、夏にグッとくる曲は違うと思うんで。

ドラム師匠:では子供が春休みに入る頃にまた座談会をやりましょう。最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。

PAPA-KIMG:ありがとうございました。

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ドラム師匠@ヒップホップライター
HIPHOPを広めたい一心で執筆しています。とは言え、たまにこれを続ける意味があるのかと虚無感に襲われます。 このまま頑張れ!と思われた方、コーヒー1杯おごる感じでサポートお願いします。自信をつけさせて下さい。