『週刊DiGG』 #3 -最新HIPHOP紹介('20/9/1〜9/12)-
HIPHOPのレビューをTwitterに毎日投稿し、気づけば1000曲以上紹介しているドラム師匠です。
今週の週刊DiGGでは、9/1〜9/12に公開されたMVを7本を、レビューをつけて紹介します。いま聴くべき楽曲や、他がまだ取り上げてない、これから人気が出る注目アーティストをセレクトしています。
曲の鮮度は変わりませんが、情報が新鮮なうちにぜひ聴いてみて下さい。
※ 歌詞=リリック、サビ=HOOK、ラップをしているパート=Verse
とHIPHOP用語で表記しています。
※ アーティスト名に下線がある場合、Twitterとリンクしています。
1|東海喰種 / Shall We Smoke|
2020/09/05 公開
ーヘビー級な曲はお好きですか?ー
東京喰種ならぬ東海喰種(トウカイグール)は、梵頭、BASE、CROWN-D (クラウンディ)の3MCで構成されていています。梵頭は“HIKIGANE SOUND”、BASEは“JET CITY PEOPLE”、CROWN-Dは“DRAMASICK”というクルーをそれぞれ率いています。
曲は、ビートメーカー・ティーイコールツーによるお経を取り入れた珍しい構成ですが、湿っぽくならず力強いBoomBapなっています。ブッといベースが、力技で首を揺らします。そして丸くならない、いい意味で荒削りなラップが曲とマッチし、ズシっと重い迫力があります。
お経にメッセージが込められていて、線香の煙で巻かれたような感じです。見た目怖そうなのにユーモアがある所が、なんとも憎めなくていいんですよね。女性は、母性本能がくすぐられるのではないでしょうか。
ラッパーSIMON JAPが3人をインタビューし、今まで活動が止まっていた理由、近況などが語られた動画⬇︎
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2|maki from ASAHI feat. Castro beats / 32日目|
大阪のHIPHOPバンド ASAHI のVocal / MCであるmakiさんのソロ作品となっています。引越しをして新しい場所で過ごす。そんな期待や寂しさが描かれています。
リリックに「ゲオに返却」「ウォークマン」「コインランドリー」などを入れることで、半径5キロ圏内の、すぐに手が届きそうな生活が垣間見えます。ゆえにmakiさんが近所に歩いてそうで、愛嬌のある声がより身近に感じられます。
引越しして距離が遠くなった分だけ、誰かに思い馳せる。気持ち飛ばすイメージが、曲に解放感を生み出していますね。
「loadingまだかかるからまだloading
誰かと電話したくなる夜に」
この曲が気に入った人は、ぜひバンドASAHIも聴いてみて下さい。えっ、こんなカッコいいの!?って驚くと思います。私のオススメは、『PHENOMENON』という曲です。
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3|ELIAS × MANTIS / Ghetto Science|
ー “見せる韻”と“聴かせる韻” ー
北海道から福岡へと活動拠点を移したラッパーELIAS(エリアス)、福岡の親不孝通りを拠点に活動するビートメーカーMANTIS(マンティス)のジョイント作品です。
注目して欲しいのは、ELIAS(エリアス)がストイックに韻を重ねるフローですね。
MCバトルで、韻をふむカッコよさを知った人が多いと思います。バトルでは会場を盛り上げるため、韻を強調することが多いです。でもこの曲では韻を強調するようなことはなく、流れるように韻をつづっています。
“見せる韻”と“聴かせる韻”、この違いが分かってもらえるのではないでしょうか。
この曲には日々、感覚を研ぎ澄ましているから感じる静けがあり、静と動が入り混じることで感情が何層も折り重なっています。派手さはないですが、渋さがあるので、ぜひ聴いてみてください。
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4|PETZ / Enemies|
ー早く行きたければ1人で行け 遠くへ行きたければみんなで行けー
(アフリカのことわざ)
東京のクルーYENTOWNに所属する PETZ 。2019年9月に発売した1stアルバム『COSMOS』以来、約1年ぶりの新曲は、できるだけシンプルな言葉を選び、静寂なトーンで始まります。
バース部分での静寂さからフックでは一転。神聖なシンセが大波のようなうねりを作り、ドラマチックな展開を見せています。「俺」という一人称ではなく、「俺ら」という複数人称を使っているところにクルーの好調ぶりが伺えるます。
私の中でYENTOWNは2020年、量といい、質といい、話題性といい、優勝だと思っています(まだ9月ですが…)。なので、クルー全員で、我々の想像をはるかに越えた、遠く地点にたどり着くのでは?そんな予感を感じさせます。
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5|J'Da Skit & Leo Iwamura / After the Rain|
ラッパー J'Da Skit(ジェイダスキット) とビートメーカー Leo Iwamuraによるユニットの楽曲で、9月16日にタワーレコードで先行リリースされる2ndアルバム『MANTRA』からの一曲となっています。
彼らは2年前に、雨をテーマに歌った「Lazy, Rainy 」という曲を発表していて、その曲の続編であり、当時の自分たちへのアンサーソングとなっています。
恐らく、『Lazy, Rainy』と同じマリンバを取り入れたトラックです。
ラッパー J'Da Skit は、あふれ出る想いを詩にしたため、詩を聴かせてくれます。最近、2Verseで2分代で終わる曲が多い中、この曲は3Verse、3分49秒を最後まで聴かせてくれます。歌詞というより詩に近くて、いく通りにも曲の解釈できる巧みな表現者ですね。
その歌詞には、「転轍機(鉄道線路の分かれ目につけ、これを切り換えて車両を他の線路に移す装置。)」「残りの猶予」 といった言葉が出てくるので、音楽だけで生活するための与えられてた時間が迫っているようで胸が痛くなりました。皆さんはどう解釈しましたか?
YouTubeのコメント欄にリリックが掲載されているので、噛み締めるように聴いて欲しいです。
届かぬモノ 溢れる浮世 手を伸ばせば 何だって掴めそうで
左手首刻む 残りの猶予 シクれば社会に収容
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|TERRA the McFLY / 幸 sachi |
2020/09/01 公開
ー 日常にある些細な幸せ ー
休日の昼下がり、何気に手にとったギターを爪弾いたようなビートメーカー・ucによるトラック。鎌倉のクルーS.P.Cの TERRA the McFLY は、日常の平凡さを壊さぬように淡々とラップしています。
その中で見つける些細な幸せに、人生を本当に楽しむってこういう事だよな。その積み重ねしかないよなと改めて気づかされます。
もしかしたら鎌倉という歴史ある土地柄が、そう思わせてくれるのかもしれません。
如何なる時も 幸は隠れている
だから今日もGOZAnoueniILL
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7|BES & ISSUGI / Welcome 2 PurpleSide|
2020/09/07 公開
ー これぞBoomBapの中のBoomBap ー
BESとISSUGIによるJointアルバム第2弾は、騎士が登場するかのような勇ましさのあるこの曲で幕を開ける。
いつになくタイトなBESのラップは、日本語ラップの系譜を引き継ぎつつ、次のステージへ向かう進行形。ISSUGIのラップは、派手さがないのにリリックが耳に残るから渋いです。
HIPHOPの魅力って、首を縦に揺らし、重力の変化を楽しむところ。カッコいいところ全部入ってます。
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さらにHIPHOPを知りたい人へ
駆け足で最新HIPHOPを7曲紹介してきました。皆さんに新しい発見があったでしょうか。
この「週刊DiGG」では、“HIPHOPをより身近に”をコンセプトにこれからもHIPHOPを紹介していきます。毎週火曜日に投稿するので、ぜひフォローして下さい。
YouTubeでもHIPHOPを紹介していますので、そちらもチェックしてもらえると嬉しいです。ではまた来週お会いしましょう。またね。
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