『週刊DiGG』#6 -最新HIPHOP 8曲紹介('20/9/26〜10/2)-
HIPHOPのレビューをTwitterに毎日投稿しているドラム師匠です。かれこれ1000曲以上紹介しているので、相当なヘビーリスナーです。
さて今回、最新MVを8曲紹介します。内3曲がスモーキーな曲で、ストーナー(stoner)ラップと呼ばれています。世界の情勢を反映したトレンドですね。
そんなことを意識しつつ、いま聴いて欲しい楽曲をセレクトしました。HIPHOPの最前線を一緒に味わいましょう。
※ 歌詞=リリック、サビ=HOOK、ラップをしているパート=Verse
とHIPHOP用語で表記しています。
※ アーティスト名に下線がある場合、Twitterとリンクしています。
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1|SILENT KILLA JOINT & SULLEN / Get wet wiz love|
2020/10/02 公開
「一度整理しよう自分のこと」
AbemaTV『給与明細』で30分のドキュメント番組が作られるほど、ラッパー / YouTuberとして注目を集めるSILENT KILLA JOINT(以下SKJ)。
SKJが、決して恵まれたとは言えない家庭を軸に語る自伝的な歌物語。
子供の時分に顔を見上げ、求めても得られなかった親からの愛情。
そして、自分が大人になり、求めるだけでなくなったゆえに感じる視点をHOOK〜Verse2にかけて描いています。人の強さも愚かさも知り、子供の自分も親もまとめて包み込むから、そこに温もりが宿ります。
加古川のビートメーカーSULLENが得意とする女性ボーカルのサンプリングは、この世で1番柔らかくて優しい。過敏になった心が、癒されるというより救われます。
「この世のせいにしないで
全ては何かの巡り合わせで
誰にも罪はないPainのChain
Gainあげて音のRainで濡れる」
⬇︎刑務所にいたこと、親との関係、OGRE WAVEのスタジオでのレコーディングなど、SKJのこれまでと今、そしてこれからを語ったドキュメンタリー。彼の人柄が伝わる。
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2|JOE IRON feat. TAKUMA the Great / Onslaught|
2020/10/01公開
ロサンゼルスで生まれ育った日系4世の音楽プロデューサーJOE IRON は、メジャーからインディまで数々のアーティストとの楽曲をTrapを中心に作っています。
この曲は、10月1日にストリーミング配信されたアルバム『Asiatic』に収録。横浜のクルーHOOLIGANZのメンバーで、台湾人の母親をもち、4か国語を操るラッパーTAKUMA THE GREATをフィーチャー。
ブリブリのベースがうねるダブステップに、TAKUMA THE GREATが、骨太かつ早口なラップで、ぶつかり稽古のように応戦しています。
SNSでバズらせるのに必死な同業者や、勢いまかせのシーンに牙をむいたリリック。“本物は俺だ”とスキルでねじ伏せていてしびれます。
Realとかfakeとか境界線はどこだ?
⬇︎TAKUMA THE GREATが半生を語った、2012年のインタビュー記事
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3|BFN DWELLS / SMOKE UP|
2020/09/30 公開
AbemaTV『ラップスター誕生』にも出演していたTokyo Trillを擁する Boof Boys のメンバー BFN DWELLS 。
MVにも映っているスナックを居抜きしたスタジオが彼らの拠点で、息抜きしながら夜通し煙を焚いてる姿が想像できます。
ユーモアがじみ出るメロディ。地声と高音を重ねることで、みんなで口ずさむ感じがして楽しそう。ブレイクではさらに声を重ね、LIVEでオーディエンスも合唱して盛り上がれるようデザインされています。
私はこの曲を聴きながら、メロディの良さとサービス精神から裏RIP SLYMEだなと思いました。何かスター性を感じませんか?
「Turn it up 終わらないこの夜
Turn it up 終わらないこの昼」
⬇︎BFN DWELLSが、ラッパーTattsrowで紹介されており、Boof Boysが結成された経緯や、クルーの様子が伝わる動画
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4|ジャパニーズマゲニーズ / NINJA SMOKE|
2020/09/30 公開
京都ラッパー 孫GONG と、大阪クルー竜巻一家の首領こと JAGGLAのユニット・ジャパニーズマゲニーズ。
軽快なギターカッティング、愛嬌のあるボイスサンプリング、冷涼感あるシンセ音が、ドライアイスの煙のように2人をコーティング。曲調にダークさがなので聴きやすく、ジャケットの可愛らしさも手伝って、リリックが素直に耳に入ってきます。
緑の煙を通じて、今を楽しめというメッセージが際立って感じられますね。
この曲がクリスマスに流れたら最高だろうな
と想像して思わずニヤリとしてしまいました。
「あのロックスターみたいにBoogie Woogie
誰がどう見たって俺たちはブリブリ」
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5|Normcore Boyz / HOW IS THE WEATHER???|
2020/09/26 公開
好きなものを並べ、その瞬間の楽しさを謳歌した曲「Call I」で2018年にデビューした、お台場を拠点に活動する幼馴染5人組のクルー Normcore Boyz 。
あれから2年のキャリアを重ね、少し大人になった5人の姿がここにあります。平坦ではない道のりを、天気の変化になぞらえ描いた曲。
「晴時々雨 」ではなく、「雨時々晴れ MY WAY」のリリックに代表されるように、曇り〜雨〜嵐など悪い天気が多いのが特徴。ギターの切ないアルペジオに乗せた切なげなメロディは、心にポッカリ穴が空いたように感じられます。
それでも、雷のあとは日本晴れで締めくくっており、しっかりと希望があるのが彼ららしいです。
雨時々晴れMY WAY 風も吹けば浴びるRAIN
たまに落ちる雷も きづきゃ綺麗な日本晴れ
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6|Cookie Plant / Bando|
2020/09/27 公開
お経を取り入れたフローが話題となった楽曲「Ninja Mode」が現在48万回再生され、注目を集めるクルー Cookie Plant 。
彼らのコンピレーションALBUM『CookieTape vol.2』に収録されている曲「Bando」。日本〜東南アジア系の軽快な笛の音が特徴で、フローの節回しも、伝統音楽特有の揺らぎを意図的を作っています。
Trapの新しさと、フローの土着的な懐かしさ。これらが合わさる事で、独特なオリジナリティを醸し出しています。
特にVerse4のMaddy Somaは、低音ボイスなのに重くならず、タ・タ・タ・タと軽やかに言葉を走らせていて不思議な感覚になります。
自分達にしか出せないオリジナリティーとは何か?
世界が求めるアジアのHIPHOPとは何か?
それを突きつめ、世界で戦っていこうとする志の高さを感じます。
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7|Red Eye / Nakid Fact|
2020/09/28 公開
「知りたかったんだろ?俺が何をしてきてここまで来たか」
「高校生ラップ選手権」のアーティスト紹介VTRで、コンプライアンスのピー音が止まらなかった Red Eye 。
中学生の時からありとあらゆる薬物試し、「ヨレれた」と回顧するだけあって生い立ちに集まる注目。それを見越したリリックに、思わずうなずいてしまいます。
オバードーズに陥ってた過去からラッパーとして成功するまでの軌跡を、コインを裏から表へひっくり返すように、ハスキーな声で力強く歌っています。
当事者にしかわからない用語を用いながら小節ごとに確実に踏む韻。MCバトル同様、LIVEで盛り上がるツボを心得おり、サービス精神に溢れています。
MVでは、CHEHONやMC漢、シンゴ西成などの強面な先輩MCをキャスティング。ラップすると思いきや一言も喋らないことで余計に凄味が出ています。
もしかしたら、彼らがラップするバージョンもあるのかもしれません。楽しみにして待ちましょう。
⬇︎オーバードーズになっていた時期を語るインタビュー動画
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8|Warbo / Far Way (prod.Michita) |
2020/09/24 公開
Pitch Odd Mansionに所属するラッパー Warbo が、2019年12月に発売したアルバム『Pt.White』より、満を持して公開したMV。
「これは諦めというのだろうか?」
という自分への問いかけが印象的。理想の自分を追い求めた結果、今の自分を見失う。
挫折を味わうことで自分らしさを取り戻していく。まだその過程の段階で、だからそこ葛藤や悲哀があり、ほっとけなくなってリピートしてしまう。そんな心に残る曲です。
そして、音楽の可能性を信じているから「もっと遠くに もっと遠くに」と繰り返す。
求めてないと出会わない だから出会った
このMVを通じて、私はこの曲と出会った。そしてこのレビューを通じて、この曲と出会う人がいるはず。
「もっと遠くに もっと遠くに
この声がもっともっと遠くに
届いたらいいけど なかなか無理
背伸びしたところで変わらない」
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さらにHIPHOPを知りたい人へ
最新HIPHOPを8曲紹介してきました。皆さんのお気に入りアーティストは見つかったでしょうか?コメントをお待ちしています。
『週刊DiGG』では、これからもHIPHOPを紹介していきます。毎週火曜に投稿と言っていたのですが、作業効率が上がり毎週日曜に投稿できそうです。でも週末にHIPHOPパーティに行った時は火曜日で。見逃さないようフォローをお願いします。
またYouTubeでもHIPHOPを紹介していますが、登録者数が伸び悩んでいるのでチェックしてもらえると、すこぶる喜びます。では次週お会いしましょう。またね!
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