骨髄不全症のPNH血球
骨髄不全症とは再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、赤芽球ろう、などをまとめた呼び方です。
再生不良性貧血や骨髄異形成症候群の中でPNH血球があると、免疫抑制療法が聞きやすいことが分かってきています。
そもそもPNHとは
PNHは発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria)という病気の頭文字です。
夜寝ている間に赤血球が壊れて、朝のおしっこがコーラ色になることがあるため、このような名前がついています。
ただPNHだからといって全員がおしっこがコーラ色になるわけではなく、むしろそのような症状を呈する人のほうが少ないようです。
他の症状として、血球が減ったり、血栓ができたり、腎障害やはい高血圧症を起こしたり、飲み込みにくくなったり、勃起不全になったりします。
PNH血球
健常な人では赤血球の表面にCD55、CD59と呼ばれるタンパク質があり、壊されないように守られているのですが、PNHの人はこのCD55やCD59が欠損していて、壊されやすくなっています。
このCD55やCD59が無いような血球がPNH血球です。
再生不良性貧血や骨髄異形成症候群におけるPNH血球
このPNH血球が再生不良性貧血や骨髄異形成症候群の患者さんの血中に流れていることがあります。
発作性夜間ヘモグロビン尿症の方は、このPNH血球がたくさんあるので比較的簡単な検査で調べられますが、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群の患者さんではあったとしてもごく少量あるだけのことが多く、高感度の特別な機械で検査をする必要があります。(この検査は現時点では保険適応がなく、3万円ほどかかります。)
ごくわずかというとどれくらいかというと、1%にも見たない少ない量なのです。なんなら0.00何%というくらい少ない量も検出します。
すごく少なくても、このPNH血球がある患者さんとない患者さんがいて、ある人では免疫抑制療法が効くことが分かってきています。
どれくらいの人でこのPNH血球があるかというと、再生不良性貧血で約60%です。
骨髄異形成症候群では約20%でPNH血球があると報告されていますが、芽球がふえているような場合はこのPNH血球はなく、免疫抑制療法も効きません。
芽球がないような骨髄異形成症候群の時にはPNH血球がある場合があり、PNH血球があれば、同種造血幹細胞移植を受けなくても、免疫抑制療法でよくなることがあります。
PNH血球とHLAの関係も言われており、PNH血球がある骨髄異形成症候群の方では、HLA DR 1501を持つ人が多いことが知られています。
またPNH血球がある患者さんではトロンボポエチンという値も高いことが分かってきています。(しかし、これも保険適応外…)
私たちは必ずしも再生不良性貧血や骨髄異形成症候群の患者さん全員にこの検査を行っているわけではありません。
検査により治療方針が変わるか、骨髄検査など他の検査所見からPNH血球を持っている可能性が考えられるかなどを検討し、検査をする意義を考えてから行います。
保険適応外でお金の事もあるので、検査が必要と考えられた場合は、主治医から話があるかと思います。
免疫抑制療法での治療
サイモグロブリンやネオーラルといった免疫抑制剤を使用して治療を行います。
治療がうまく効くと、少なかった血球が増えてくるのですが、増えてきた血球がPNH血球で、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群がよくなったけど、発作性夜間ヘモグロビン尿症になりこっちの治療を受けないといけなくなることもあります。
まとめ
まだ保険適応でない検査ですが、特に骨髄異形成症候群においては、治すために同種造血幹細胞移植が必要なのか、免疫抑制療法で治療できるのかを見極めるのにとても参考になる検査です。
現在もこのPNH血球について研究が行われています。もっとデータが集まることで、今後さらにわかることが増え、臨床に役立てられるかもしれません。