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新型コロナウイルス感染予防の注射 エバシェルド
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)が出現してから3年が経ちました。
この間にワクチン、治療薬が開発され、またウイルスの変異があり、COVID-19による死亡率は下がってきました。
2021年3月に致死率1.94%であったのが、今は0.2%にまで下がってきているようです。(https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221228-00329722)
死亡率の低下に合わせて、また感染対策の社会的な影響もあり、感染対策は徐々に緩められています。
血液疾患の治療中などで免疫低下にある方はワクチンを打っても十分な免疫がつかないことがあります。
免疫低下のある方は相対的にCOVID-19にかかりやすく、重症化しやすい状況にあります。
ワクチンを接種しても抗体ができにくい方用に、SARS-CoV-2感染予防のための注射があるのはご存知でしょうか。
エバシェルド®︎という名前の中和抗体薬です。一般名は、チキサゲビマブ/シルガビマブといいます。令和4年8月30日に特例承認されました。
これを筋肉注射することで、SARS-CoV-2に感染しにくくなります。
この注射はファイザーやモデルナのmRNAワクチンのように誰でもが対象となる注射薬ではなく、ワクチン接種で十分な免疫を得られない方のみが対象です。
血液疾患で対象となるのは以下の方です。
積極的な治療を受けている血液悪性腫瘍の患者
リツキサン®︎などのB細胞が減る治療を受けて1年以内の患者
イムブルビカ®︎などのブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬を投与されている患者
CAR-T細胞療法を受けられた患者
慢性GVHDを患っている患者
造血細胞移植を受けた後で免疫抑制薬を服用している患者
抗体産生不全あるいは複合免疫不全を呈する原発性免疫不全症の患者
その他血液疾患以外で対象となるのは以下の方です。
肺移植を受けた患者
肺以外の臓器移植を受けて1年以内の患者
急性拒絶反応でT細胞またはB細胞枯渇剤による治療を最近受けた固形臓器移植の患者
CD4 Tリンパ球が50/μL未満の未治療のHIV患者
効果
ではエバシェルドを打つとどれくらい予防してくれるのでしょうか。
下の図はエバシェルド(赤い線)とプラセボ(青い線)を注射した人が、注射の後どれくらいCOVID-19を発症したかを示しています。(PROVENT試験)
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196日の時点で、0.3%と1.8%で、有意にエバシェルドを打った人でCOVID-19の発症率が下がっています。
相対リスク減少率は87%と高い予防効果です。
注射は、お尻の両サイドの筋肉にチキサゲビマブとシルガビマブをそれぞれ注射します。一度注射すると半年は効果があります。
半年経っても免疫低下状態から抜け出せていない場合は、再度投与することができます。
ただ抗体薬というのはウイルスが変異すると効きが悪くなりやすいことが、この3年間の経験から分かってきています。
現在の第8波で主流のBA.5に対してはエバシェルドは効果を認めていますが、この次に流行る変異株に対しては効果が乏しくなっている可能性があります。
実際海外で増えてきているBA.5に変異が加わったBQ.1.1やXBBには効果が乏しいことが分かってきています。
半年後に再度打つかはその時に流行っている変異ウイルスの状況で決める必要がありますが、現時点ではエバシェルドを打つことでメリットがあると考えます。
エバシェルドに副作用はあるのでしょうか。
多くの方は注射部位反応程度で、大きな問題となるような副作用は出ませんが、中にはアナフィラキシーを含む重篤な過敏症が現れることがあります。
まだはっきり関連が分かっていない副作用として、心筋梗塞などの心血管疾患を少し起こしやすくなるのではないかと懸念されています。
mRNAワクチン同様に感染予防というメリットと副作用というデメリットがあります。
ワクチンでは十分な感染予防とならない方に対しては、大きなメリットとなる注射で、デメリットを上回ると考えられます。
特にBA.5が流行している今はメリットが大きいと考えられますので、対象となる方は接種をご検討ください。
接種できる病院は限られています。
各都道府県毎にエバシェルド投与可能医療機関がまとめられています。
東京都は以下になります。
他の都道府県の方は「エバシェルド」「〇〇県」と知れべていただければと思います。または、主治医にご相談ください。
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