CAR-T細胞療法
CAR-T細胞療法を聞いたことはありますか。
今日はこの新しい治療法について説明します。
まず読み方ですが、「カーティー」細胞療法と呼びます。
急性リンパ性白血病やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対して行われる治療です。
日本では2019年3月に承認された治療になります。商品名はキムリア®︎と言います。
商品名とは言っても、その様な商品があって取り寄せて使える薬ではないのです。
高度に個別化された治療で、患者さん自身のリンパ球の内のT細胞を使用した治療になります。
CAR-T細胞
まずT細胞についてですが、T細胞は細胞を殺傷する能力があります。感染だと細胞の中に隠れて他の白血球ではやっつけることのできない微生物をやっつけたり、がんの細胞をやっつけたりすることができるのです。
CAR-T細胞療法は患者さんから取り出したT細胞にウイルスを使ってCAR遺伝子を導入して作成します。
CAR遺伝子を導入することで、T細胞のがん細胞を見つけてやっつける能力が増強されます。その細胞を増やして、患者さんに点滴で戻ることでがんを殺傷するという治療法なのです。細胞レベルでがんをやっつける免疫力を上げるイメージです。
日本で承認されているキムリアですが、急性リンパ性白血病やDLBCLの細胞の表面に出ているCD19というものをCAR-T細胞が見つけてやっつけにいく様に改変して行う治療法です。
化学療法では寛解できなかった様な患者さんでもCAR-T両方で寛解に至る可能性があり、治療効果は目を見張るものがあります。
CARですから車をイメージして描いてみました。
治療効果
承認された背景となったELIANAという名前の臨床試験では、再発または難治性の急性リンパ性白血病の方(3-21歳)75例に対してCAR-T両方が行われ、81%が寛解に至っています。
再発難治性というのは、2回以上の再発の方、同種移植後再発の方、化学療法を2サイクル行ったが寛解に入らない方が含まれており、この81%というのはすごい値です。
ただ治療から1年での寛解維持率は59%ですので、寛解に至った後再発する例もそれなりにあります。CAR-T細胞が長期体に残って白血病を抑え続けてくれる必要があると考えられています。
悪性リンパ腫に対しての臨床試験では、40-50%で寛解を認められています。
他のがんに対してもCAR-T療法の開発が進んでおり、血液内科の分野では多発性骨髄腫に対してのCAR-T療法が最も進んでおり、次にCAR-T療法が承認される疾患になるのではないかと期待しています。
また血液腫瘍以外の癌に対しても研究は進んでいますが、血液腫瘍よりもうまく効くCAR-Tを作るのが難しく、まだ大規模な臨床試験が行われていない状況です。
副作用
CAR-T細胞が標的としているものが ”がん細胞” 以外にも出ていると、その細胞もやられます。
CD19だと正常なB細胞にも出ているため、正常B細胞(リンパ球の一種)も障害され低ガンマグロブリン血症というのが起きて、免疫が下がります。点滴で免疫グロブリンを補充することがあります。
その他、一般的な抗がん剤治療では認めない副作用があり、サイトカイン放出症候群、神経毒性というのが、代表的な副作用です。
CAR-T細胞が腫瘍を殺傷するときに、サイトカインという物質が出て、発熱、筋痛、全身倦怠感、低血圧、低酸素血症などを起こします。集中治療を必要とすることもあり、CAR-T細胞療法で医師が最も気にしている副作用の一つです。輸注後2週間以内に発症することが多く、腫瘍量が多いと重症化しやすいことが知られています。
サイトカイン放出症候群に対してはアクテムラという薬が効くことがわかっています。
神経毒性は、昏迷、せん妄、感覚鈍麻、失語、痙攣などを起こすことがあります。
治療を行える施設
この治療を行える病院はまだ少なく限られています。
治療できる施設はこのサイトを参照ください。
今後この治療ができる施設は増えてくると思います。
全く新しい細胞免疫療法であるCAR-T細胞療法についてでした。