赤血球輸血と鉄過剰
血液疾患では、病気による貧血または治療による貧血を認めます。貧血が強いと動悸、息切れの症状が出てきますし、心不全を起こしてしまいますので、ヘモグロビン(Hb)を7g/dLくらいは維持するように赤血球輸血を行います。
※ここでいう貧血とは赤血球の量であるヘモグロビンが少ないことを意味します。
赤血球には鉄が多く含まれており、赤血球の輸血を繰り返すと、体に鉄が溜まっていきます。
鉄が溜まりすぎると、臓器に障害が出るようになります。これを鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)と言います。
障害が来やすい臓器は、肝臓、心臓、膵臓、皮膚です。
それぞれの臓器の機能を落とします。肝臓は肝硬変→肝細胞癌に繋がりますし、心臓は心不全をきたします。膵臓が悪くなると糖尿病を招きます。皮膚は色素沈着を起こします。
CTを取るとそれらの臓器が白く見えて、鉄が溜まっていることが感じられます。
臓器障害だけでなく、体に鉄が溜まっていると感染も増やします。
溜まっている鉄の量はフェリチンという値を採血で見ることで分かります。
鉄を減らすには2通りのやり方があります。一つは内服薬(ジャドニュ)、もう一つは瀉血です。瀉血というのは血を抜くという治療法です。
再生不良性貧血や骨髄異形成症候群、骨髄線維症などでずっと赤血球輸血が必要な方には、ジャドニュを飲んでもらいながら輸血をしています。輸血量が多いとなかなかフェリチンを下げるところまではいきませんが、体に溜まるスピードを抑えることはできます。
急性白血病や同種造血幹細胞移植など、治療中はたくさん輸血をするけど、治療が終わった後は自分で赤血球を作れるようになっている方は、治療後に瀉血で対応することができます。
人の体は鉄を排除する機能が備わっていないため、放っておいてもなかなか鉄は減っていきません。
血管に針を刺して、200-400ml/回の量の血を抜きます。
ジャドニュでも良いのですが、副作用で腎障害があり、腎臓への悪影響を懸念する場合は瀉血を選択します。
私はフェリチンは1000未満を目標にしています。
一つ臨床研究の結果をお示しします。
ジャカビとジャドニュで治療されている輸血による鉄過剰の骨髄線維症の患者さんを後方視的に調べた研究です。(ASH 2019)
ジャドニュを使用してフェリチン1000未満にできている患者さんまたは元の値より50%以上減らせた患者さんでは、そうなっていない患者さんに比べて、予後も白血病への進展率も良かったということです。
これは後方視的な研究なので、前向き研究での検証が望まれますが、鉄過剰が予後や病気の進展にも影響する可能性があり、フェリチンをしっかり下げていくことが大事だと考えられます。
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