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J.M.Weston 598 1か月インプレ
ウエストンの598を買ってから、もうひと月過ぎたらしいので、インプレのような物を書こうと思う。
22歳限界フリーターがなけなしの10万で買った並行輸入品、サイズや状態の不安は杞憂に終わり、このひと月で十数回程度(それでも、一度の着用で5,6時間)履いてみた訳だが、これは良い買い物をしたものだと、先月の自分を撫でまわしてやりたい気分になる。
バスタンのソールが二枚で1200万パワー
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ウエストンと言えばソール、ソールが全て。バスタンのソールの為だけに態々ヒロカワに修理に出してオープンチャネルになって返される4万のマゾ体験をする人間がいる位な訳だから、ここに価値が無ければお前はただのブランド靴(笑)になってしまうだろうがよ。
バスタンのソールが二枚、返りは悪いかと思われたが、実際そこまで気にならない。返りは確かに悪い――手で屈曲させるなんて夢のまた夢ってくらいに――が、通常の歩行動作で足がエグい曲がり方するかってーと、そうでもないのだ。
実際、曲がらないなら曲げなければ良いと言う具合で、普段より歩幅を狭く、つま先を粘らせないような歩き方をしている気がする。
傍目にどう映るかはさておき、これは別に不快でも何でもない。多少の違和感はあるだろうが、ダブルソールのクッション性だとか、必要以上の屈曲によるバンプ部の圧迫からの解放なんかを勘定に入れてやれば、僅かな減点に過ぎなくなる。
また、屈曲性の悪さが復元力の高さに繋がるのか、蹴り出しのアシストが多少入ると言うのが良い。その為に無用に距離を歩いたりもしたもので、これはかなり魔性の靴だなと思うなど。
結論。バスタンのソールは、2枚重ねる事で1200万パワー〔N・m〕を発揮する。
俺は好きだぜ、お前のそういう顔(ツラ)。
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秀逸なバランス、その一言に尽きる。全体にはカジュアルなシルエットだと思うし、エプロンダービーなんだから勿論ドレスの出自ではない。だのに、ウエストンの造る端正な靴だからか、上品な美しさを纏っている。故に、着用シーンの幅がグンと広がる訳だ。
勿論、スーツに合わせて全く問題ないという訳では無い。足元にボリュームが出る時点でドレススタイルの埒外になってしまうのだから。
それでも、641をジャケパンに合わせるとか、ドーヴァーをデニムに合わせると言うスタイルに違和感を覚える人間への救いはこの一足に違わない。
神がドレスとカジュアルを名付けられたとき、そのあいだには598が在ったのだ。
まあ僕はお洒落な人間ではないので、何かスタイルを提案するような事は出来ないのだけれど、一つだけ。
今すっごく、Graphpaperのウールギャバのおぱんちゅに598を合わせたい。マジでありきたりな組み合わせだと思うけども、どうにも素晴らしいバランスで纏まってくれる気がしているので、このおぱんちゅが今滅茶苦茶に欲しい。
雑に履き、入念に手を入れる
手を入れる専門家は呼べない、ウチは貧乏だからね。
それでも靴は雑に履きたいものだ。高い靴を買ったからと言って、それがロブロンドンのビスポークとかでもない限り、靴に気をつかって歩みを止めるなんて事はあってはならない。
11月にもなって、北海道にはしばしば雨が降った。それも生易しい雨ではなく、秋の残り香を根こそぎ洗い流すような激しい雨が。
そんな中でも、僕は598を履いた。マジでびっしょびしょになったし、銀浮きなんかが出なかったのは本当にツイてたとしか言いようがない。
自慢のソールはふやけて馬鹿みてえに砂利を食うし、コバなんてぶつけまくって色が剥げている。
なんならつま先もぶつけてるし、若干キズになった。まあワックスのお陰で命拾いしたんだけど。
それでも、化粧を落としてやって、ドラクリ(令和の神器、今度話す)を塗って、適当なクリームで薄化粧してやれば、たちどころにこの美しさが蘇るのだ。
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履き皺は非常にきめ細かく入るし、全体にガッチリとした革なので、型崩れの心配もない。ひと月程度雑に履いてやったところで、いまだ新品のように小奇麗なままだ。
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ただ、雨の中を歩くのは本当におすすめしない。特に、砂利の転がる道をあるくのは。
結果はこうだ。無数のクレーターが出来ていて、ヒールなんかには随分奥まで入り込んだ小石が見られる。
まあ、靴底なんてめったに見ないものだし、多少荒れていようが問題ではない。
重要なのは、これ程に消耗する移動を、この靴と共にしたと言う事実だけなのだ。マジでありがとう598、お前しか愛せない。
さて、そろそろ風呂に入りたいのでこの辺りで切り上げよう。見返せば殆どソールの話をしている。俺がどれほど靴に無理解であるかというのを再認識させられた。
俺は靴を履かねばならないし、履く為には買わねばならない。靴箱の整理もしたいなと思った所で、改めて今日はここまでとする。