あえて倒さなかった?”井岡vs福永”戦にかつての”渡辺vs勝間”戦を思い出す
12月31日(2021年)、WBO 世界スーパーフライ級タイトルマッチ、王者 井岡一翔(32、志成)が同級6位の挑戦者 福永亮次(35、角海老宝石)を3-0の判定で下して4度目の防衛に成功した。
どうしても日本人同士の世界戦タイトルマッチは人生観から見てしまう。 例えば辰吉丈一郎と薬師寺の戦いもそうであった。
急遽決まったこの試合、 福永選手の心境はどうだったのであろうか? 大工仕事をやりながらの二足のわらじでボクシングの練習をしていた。 仕事とボクシングの両立、単なるボクシングの練習だけならこなしている人もたくさんいるが世界戦に挑むとなると二足のわらじもさぞ大変だったろうと思う。
こんなビックチャンス、またとない人生最大のチャンスに福永選手に頑張ってもらいたいし、また「家族や奥さんの気持ちはどうなんだろう?」と勝手な想像をしてしまう。 勝てば有名になり、ファイトマネーも入り、今後の世界活躍も広がる。 そんな天と地のようなイメージのする世界はスリリングでもあり残酷でもある。
さてこの試合、井岡は"倒せなかった?" のか"倒さなかった?"のか。 私は多分後者の方であろうと思う。手を出し続け、乱雑に攻めてKOすることもできたのかもしれない。しかしそのスタイルで戦ってしまうと自分の本来の”基本で忠実な隙のないボクシングスタイル”を狂わせてしまうことを本能的に知っていたのだと思う。
昔といってもさほど大昔ではないが、当時無敵の”長谷川穂積”選手がバンタム級からフェザー級に一階級あげたとき”打ち合うスタイル”に変化した時「あれっ?」と感じたものである。そして長谷川選手は一度2階級制覇した後負けが続いたような…。
長谷川選手の試合を見ていてなぜこんなに打ち合うのかなと。ややも言うと荒っぽくなった感じであり浜田剛史さんの解説も同様のような事を言っていたが、ボクシングは「スタイルを変える」ことは時によっては致命的な事になってしまうのである。
(かつて天才的カウンターパンチャー 村田英次郎選手がェフチャンドラーに挑戦した時、ボクサータイプに変えて負けた…)
勝手な憶測だが井岡選手は”スタイルを崩すことが危険”だと言うことを本能的に察知していたのだと思う。そして冷酷な言い方だが福永選手の少し上のレベルで戦い、次の戦いのための自分のスタミナや技術レベルを確認していたのだと思う。とてもクールでクレバーな戦いであったが、その予知能力には自分のボクサー年齢も分析されているのではなかろうかと思う。
この試合を見ていてまた古くからのボクシングのファンの方にはわかるかと思いますが、渡辺二郎選手が勝間和夫選手と戦った試合を思い出した。 当時は世界戦で日本人同士の対決はとても少なく注目を浴びたものであった。
根性の勝間選手は殴られても殴られても「まだまだこれから」 と試合中に自分に喝を入れてたそうである。勝利者インタビューで勝者、渡辺二郎が勝間選手の試合中のそんなエピソードを語っていたのがやけに記憶に残っています。人生とはこんなものなんだなと、、、
(終わり)