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星の王子さまに会ってきた
僕は今までこの話を誰にもしたことがない。
それでも今回話すのは、もし僕があの時の景色を忘れてしまった時、真っ先に思い出してほしいからだ。
星の王子さまとの出会い
2022年12月27日、高校二年生の冬。
クリスマスを少し過ぎたときに、私は箱根の「星の王子さまミュージアム」という場所にいました。
三月に閉館するという話を聞いて、家族に連れて行ってもらいました。
クリスマスを少し過ぎた日、まだ館内にはクリスマスツリーが飾られイルミネーションが光り輝いていて、カップル達が多かったことを覚えています。
サンテグジュペリの書いた名著で、世界中でも愛されている作品である「星の王子さま」の世界をこれでもかと再現し、サンテグジュペリの人生と共に解説をしてくれるミュージアム。フランスの街並みを再現したエリアと小説の世界に入り込んだ幻想的な雰囲気の館内がとても好きでした。
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そこから二年が経ち、演劇だけでなく役者として様々な舞台形式に挑戦してみようと意気こんでいた時にこんなお話をいただきました。
「12月に星の王子さまのドラマリーディング公演があるんですけど、出演してみませんか?」
稽古期間の話
足踏みと発見
1,2週間ほど悩みに悩み、最後は大切にしている人からの後押しもあってありがたいことに、プレイラボ2024 ドラマリーディング公演『星の王子さま』への参加が決まりました。
最初はやれんのか?とかそもそも朗読劇とはなんだ?って悩みながらの参加だったなぁって今でも思い出しますね。怖かった。
顔合わせはリモート。早速、初めましての顔ぶれがそこにはいました。緊張したねぇ・・・そのまま読み合わせも行いその場で役が決まっていき…私はその時に飛行士役頂きました。(地理学者は稽古中に決まった)
え…?ほぼ主役みたいなもんじゃね…?ってなりましたよね。
初稽古までに台本を読みまくって、飛行士役っていうものを掴むのに必死になって…それくらい不安だったんだろうなぁとも…今考えるとまぁまぁ忙しい月の公演だったので、その分焦っていたし、朗読劇という形態に慣れようとしていたのだと思います。
そんなこんなで、急に飛び込んだ世界は楽なんかではなく…。
毎回毎回、いつもやっている演劇とは違うもんだなと、今までの正解が不正解にもなりえる場であるし、いつもはない制約が当たり前のように蔓延る世界でした。
とりあえず、持てる全てを持ち寄って提出してみる。そして何度も砕かれ、その中から自分に合うものと物語に合うものとを擦り合わせていって良いものを作る。いつも通りの稽古ではあるんですけどいつも通りのような感じは無かったんです。
むしろ新鮮だったなぁって、色々学ばせてもらったなって思いました。
朗読劇に慣れてきたのは、三回目くらいの稽古でしょうかね?
台本が煩わしい枷から、表現を変える一つ”武器”になってきたんです。
この台本を持っているからこそ、セリフというものがより深く大事に聞こえる。
この台本を持っていなきゃできない表現がある。
そこに気づくまでには時間がかかりましたね。ずっと、キツネ役の方の演技を見続けてようやく気付くことができたんです。今回の舞台で本当に勉強をさせていただいた役者さんでした。感謝。
それが稽古期間での最大の気づきでしたね。演劇の可能性っていうものをより深く、より楽しく探れました。
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高校生たちの演技
そして、この公演の一番の特徴は同じ会場、同じ作品なのに大人組と子供組で違う人が演じる舞台を見れることだと思います。
私はありがたいことに大人組に入れてもらって、その中でも最年少として他の方々の演技を見て学んでいました。
なので先ほどは稽古場の話としながらも、大人組の話をしてきました。
ここからは、高校生たちのお話でもしようかと…。
高校生の演技っていうのは、久しぶりに見た気がします。
いや、見てはいたし一年前には僕も高校生だったんですけど、そうじゃないんですよね。
部活特有のキラキラが眩しい、まだまだ凝り固まった考えも持っていなく、驚くほどに柔軟な思考力と想像力。
表現力や基礎的なものはまだまだ発展途上なところが、また心を震わせる。
可能性が無限大に広がる、そんな演技を見たのは久しぶりだなと思ったのです。
いい意味で恐れ知らずというか、自己中だなとも思います。ほんとに良い意味でね。私を見てくださいを堂々とできるその傲慢さじゃないけど…彼女らの演技に対する自信というものは見ていて爽快だったし、忘れかけていた演劇においての大事なことを思い出させてくれたなぁって思います。
こんな楽しみ方もあったっけ?そんなに自由でもいいの?あぁ、でも演劇ってこうやっても楽しいし、そんなに笑ってよかったんだ。
そんな風に安心しましたね、というか救われましたね。
稽古場では中々話せませんでしたが、もっと話せばよかったと後悔もしています。
恥ずかしいのでこっそり感謝を伝えます。ありがとうございました。
皆のおかげで、最後の最後まで自分までフレッシュな気持ちを忘れずに、ずっとワクワクしながら演技ができました。
特に、同じ役を務めた二人には本当に助けられました。
本当に、本当にありがとうございました。ここからも、何事も恐れず演劇を楽しむみんなの姿を見るのが楽しみです。
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本番と役について
本番に見えた景色
2024年12月15日、大学一年生の頃の冬。
クリスマスの10日前に、私は本厚木のギャラリー喫茶「なよたけ」という場所にいました。
喫茶店が本番の会場であり、これまた初の飲食店内での公演に臨んでいました。
雰囲気の良い喫茶店と優しいオーナーさん、頼れる楽器隊のお二人に肩を借りるような気持ちで本番を迎えました。満員御礼でした。
本番は実はあんまり覚えてないんですよね。
というか、相手役と自分の役が見ているもの以外何も見えてなかったというのもありました。
だから印象が薄いんですよ。お客さんに見られていたんだなぁとかそういった印象も無かった。
終わった後に挨拶をして、その瞬間に初めて多くのお客様が見に来てくれていたことを実感しました。
そのくらい、集中できていたし、没頭していました。この「星の王子さま」という世界に。
終わりが近づき、星の王子とのお別れのシーンで私は遠ざかっていく王子を見ながら目の前が歪んでいました。
頭上の光が、星のように眩しかったことだけは覚えています。
あの時、目元が潤んだのは…あの時、目の前が歪んで見えなくなったのは。
飛行士が僕に語り掛けてくれたんだと思ったんですよね。
「大切なものは目では見えないんでしょ?」って。あぁ、きっとそうだ。
だから、見えないようにしてくれたんだ。
大切なものはなんだったの?っていうのは答えないでおくけどね。
それを言ったら、僕と飛行士の関係はちっぽけになってしまう。
だから心にとどめておきます。眩しくて何も見えなかったけどその景色が僕にとっての最高の景色でした。
終わった後に、多くの人の前で一人お辞儀をしたときの景色も全て大切な思い出です。
皆様のおかげです、本当にありがとうございました。
役たちへの感謝
地理学者は竹を割ったような性格で、僕の中にはいないような人間だった。
だからこそ新鮮で楽しい役だった。
いい意味で周りが見えていなくて、不思議なくらいにまっすぐで。
ここにいるのに、どこか別の空間にいるかのようなそんな役。
曇天すらも晴らすそのまっすぐな声を僕の体を媒介に声に出してくれて、王子にもお客様にも届いていたと思う。
皆がどれだけ受け取ってくれたか、それは僕にも分からないけれど…それでも貴方の生きた証はあなたの見たことのない、他の星の誰かに届いているはずだよ。
ありがとうね、まだ机の前で忙しくしている貴方へ、少しでもこの星の様子が届くように声を上げ続けてみるよ。
飛行士、君は最初プライドの高い貴族でしかなかった。
僕は君を演じることに少しだけ抵抗感があったんだ。プライドの高くていろんな知識を持っている君に少しの嫉妬があったんだろう。
それに加えて、君の心の清らかさというものは作中でも1,2を争うほどだと僕は思っている。
星の王子なんていう辺鄙な存在に出会って、疑問と疑念、訝しみを抱えながらもついてくる彼と相対する。
命の危機にさらされて、怒った君の心の中には…君以外の人間もいたんだろう?
自分の為だけじゃない、見ず知らずの坊ちゃんの為に叫んだんだろ?
目に見えない「大切」をたくさん抱えて、君はまだまだ見果てぬ空を飛んでいるのかな。また星の王子には出会えたか?
僕は君と同じ地球に生まれ育っている、環境は違えど同じ命を持っている。
君の生きている街とは、君のさまよった砂漠からは遠い日本なんてところにいるけど、君の生きた証はしがない僕が知っている。
そして、あの喫茶店にいたみんななら知っているさ。
そろそろ時間かもね、星の王子に君も会いに行くんだろ?
僕も遅かれ早かれ行くからさ、またその時に合おうね。
ありがとう、飛行士。僕に新しい「大切」をくれて本当にありがとう。
君と一緒にこれから歩めること、楽しみにしてるからね。
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長々と書きましたが2024年12月15日に行われました
プレイラボ2024 ドラマリーディング公演「星の王子さま」の感想を終わりにしようかなと思います。
名著を用いた、初めての朗読劇への挑戦。森海雫としてまた一つ成長させていただきました。
この場で改めて共演者の方々や制作の皆様、楽器隊のお二人、高校生組のみんな、ゲストステージで最高の舞台を観せてくださった劇団Rabbit clowNの皆様、そしてなんといっても見に来てくださったお客様方とこちらの企画に誘ってくださった井上さんに最大の感謝を申し上げます。
本当に、本当にありがとうございました!最高の舞台を経験できたこととてもうれしく思っております。
この舞台は私にとってまた一つ大切となった舞台です。
彼らのおかげで、私のこれからの人生が、どんなに変わるものか、お分かりになるでしょう…
そして、大人たちには、だれにも、それがどんなに大事なことか、けっしてわかりっこないでしょう。