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【ポケポケ】一口デッキ解説⑥「ピジョメタル」 問題児二人。ただし最強。
はじめに
一口デッキ解説第6弾。今回は、地味に環境中堅程度の活躍もある「ピジョメタル」を解説する。これの前進として「メルメタル」中心の「鋼タイプ」があったが、様々な事情から多くの使い手がピジョメタルに転向した。
このデッキは愛好家も一定数存在し、大型大会でも上位卓にこそ入らないが一定の勝率を出している。今回は、このデッキのギミック的噛み合いに着目し、「なぜメルメタルなのか」という部分にフィーチャーして紹介していく。
デッキ概要
鋼タイプ
まずは、前身となる鋼タイプのリストから。特に語るべきこともなく、普通の鋼タイプデッキだ。
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大前提、このリストは死ぬほど弱かった。「キリキザン」は「キュウコン」「サンドパン」などと並ぶ2エネ起動1進化だが、その中でも群を抜いて弱い。特別な能力も無ければ火力も「サカキ」込み80、耐久も90で「エレキサークル」のワンパン圏内。鋼タイプは弱点を突ける相手も少ないため、特定の相手に役割を持てるかと言えばそうでもない。逃げ1も本来なら偉いはずだが、性能比較では「マルマイン」の方が強い。
メルメタルとキリキザンで戦う非exグッドスタッフを目指したものの、キリキザンが弱すぎるあまりコンセプトが不十分だった。
また、比較的足が速い代わりに場持ちの悪いキリキザンに対し、「ためる」を使わなければ起動が遅れるメルメタルがアンチシナジーだった。前に出さないと活かせないカードが互いに殺し合う形になっており、キリキザンと「クチート」だけで戦った方がまだ強いんじゃないかとすら思ってしまった。
一度鋼タイプ固めを諦めて混色の道を探してみるものの、メルメタルが鋼3要求なので混色にはしづらすぎる。そうなると無タイプしか選択肢が無い……。そのような経過から、「キリキザンよりはマシ」程度の文脈で「ピジョット」ラインが注目された。
ピジョメタル
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ピジョットラインを採用したこの構築は、打点こそ鋼タイプと大差ないものの、総合力の面で大きく勝る。
ピジョットはキリキザンと同等の打点を持ちながら、耐久面ではキリキザンを大きく上回る。加えて特性「おいはらう」も強力であり、干渉力の面ではキリキザンと比較にもならない。2進化の重ささえ了承できるなら強力なカードだ。
このリストになったことで、デッキの動きは「メルメタルを通す」ことにより収束した。最速メルメタルをピジョットで援護するパターンや、序盤をピジョットで荒らしてメルメタルによる捲りを狙うパターン。2体の出し順に応じてメルメタルの通し方を変えていく。
このリストになったことで、短期戦にもある程度対応しつつ、中・長期戦へ引きずり込むだけの持久力と干渉力を手に入れた。
デッキの性質・強み
このデッキの強みは、対応レンジの広さだと言える。
特性「ハードコート」を持つメルメタルは、一定以下の打点との打ち合いには滅法強い。そのため、高速デッキ相手にはメルメタルを裏で育てて切り返しを狙う。
反面、耐久デッキには「メルタン」の「ためる」が強い。エネアド差をある程度つけた段階でメルメタルを重ね、ピジョットとメルメタルのコンビで布陣を崩していくのが理想の展開である。
相手のデッキや自身の引きによりプランの選択が伴うものの、その見極めができれば強力なデッキだ。
ピジョットラインの最適解になりうる
ピジョットラインは初期から一定の評価を得ているものの、実際にそれを運用しているデッキは少ない。
ポケポケのシステム上、2進化はデッキの3割をも圧迫する。ゆえに「ピジョットで荒らした後の動きを用意できない」という場合が多く、そのスペックを活かす方法が少なかった。「アーボック」と組んで対面を逃げ不可にする構築は存在するが、「キョウ」の評価向上で悪タイプの評価が上がるとそちらがアーボックの主流になった。
メルメタルは、そんなピジョットラインと綺麗に噛み合っている。1進化ラインのみで完結する動き、単体で試合を壊せる打点と耐久。メルメタル自身もピジョットの妨害・詰め性能を欲しており、互いが求める要素を提示できている。
デッキの弱み
ここまでは褒めのターンが続いたが、ここからは現実を見る時間である。
このデッキの弱みは、最高速の低さ。そして、ピジョットへの依存度の高さだと言える。
後1からメルタンがためるを打てたとしても、メルメタルの最速着地は後3。それまでにメルメタルを引けていなければ、相手の打点が十分に間に合う。なので、一度メルタンを下げて壁を立てる動きが要求されてしまうことも多く、最速はかなり通しにくい。
最速がワンテンポ遅い弊害はそれだけではない。遅さは対コンボにおいて致命的であり「ミュウツーex」「リザードンex」などのミッションデッキに後れをとりやすくなる。
「耐久デッキに間に合う最速」と「高速デッキに切り返せる耐久」を持ってはいるが、リザやミュウツーはその土俵に立たない。コンボ完成 = 勝ちというデッキに対して弱く、勝ち続けたいなら対コンボが障壁になってしまう。これらを倒すにはピジョットの削りと対面操作が必須になってくる。
このような背景もあり、ピジョットへの依存度は非常に高い。メルメタルの120ラインは十分なワンパン範囲だが、それ以外とメルメタルで打ち合うのは基本不利だ。そのため、先にピジョットで削っておく場面が多く、ピジョットありきの試合運びになりやすい。ゆえにピジョット欠損が重く、「カイリュー」ほどではないが出力ムラが出やすい。
総括
総じて強力なデッキではあるものの、ピジョットが強いだけ感は否めない。
メルメタルの枠が「ウインディex」のような他の120アタッカーでも大差ない試合は多く、強さの9割をピジョットが担っていると感じる。ゆえにピジョットを潰しにかかられると弱く、その点がこのデッキを中堅止まりにしている。
……もうあの人1人でよくないですか?
以上