【ポケポケ】単騎構築は強いのか?
はじめに
題名の通り。
10/30、遂にリリースされた「Pokémon Trading Card Game Pocket」(通称「ポケポケ」)。本作はコレクション要素に比重が置かれてはいるものの、本家ポケカ同様対戦も可能となっている。
その対戦環境でメタの一角を担うのが、「フリーザーex」と「カスミ」を軸に成立する「フリーザー単騎」である。このデッキはカスミという最大値の高いサポートに加え、カスミ成功時に高い制圧力を発揮するフリーザー。この2匹に構築を寄せた、ある種の特化構築である。この構築はコンボ成立時のゲームスピードが非常に高く、一部デッキに対して何もさせずに勝つことができる。これを参考にした「ナッシー単騎」なども派生構築としてあり、「単騎構築」はポケポケ独自の構築論として研究が進んでいくものと思われる。
しかし、この構築は本当に強いのだろうか? 理由は様々あるが、自分は単騎構築の強さを疑わしく思っている(というか、この手のnoteを読む熱心なプレイヤーの大半は懐疑的なのではないか)。
今回は、単騎構築の性質・強みを整理しつつ、フリ単を例にその弱みを考察混じりで解説していく。
単騎構築とは
単騎構築の概要を知らない方向け。
単騎構築とは、その名の通りたねポケモンを1種に縛る構築のことである。フリーザー単騎にはフリーザー、ナッシー単騎にはタマタマ以外のたねポケモンを一切採用せず、残りのカードをそのバックアップに使う。
ポケポケは、初手に必ず1枚以上たねポケモンが入るという仕様になっている。本家ポケカではたねポケモンがない場合は相手に1ドローさせて引き直すルールなのだが(厳密にはちょっと違うけど大体そんな感じ)、これはDCGならではの面白いシステムだと感じる。
つまり、ポケポケは本家ポケカと比べ、たねポケモンを一定数積んでおく合理的根拠が薄い。もっと言えば、たねポケモンの種類を絞った方が強力な組み合わせを初手から引き込みやすい。そこに着目し、強いたねポケモンを確実に繰り出して勝ってやろうというのが単騎構築である。
参考リストも載せておく。
フリ単の場合はフリーザーとカスミに加え、妨害と押し込みを兼ねる「ナツメ」やシンプルに強力な「博士の研究」、後続供給の「モンスターボール」辺りが固定になってくる。
「スピーダー」「キズぐすり」辺りも現行プールでは基本抜けないが、それでもなお6枠ほど選択の余地がある。この枠にナツメケアの「ひみつのコハク」(化石なら何でもいい)、妨害札の「レッドカード」などの小回り札を投入していく。トップ確認の「ポケモン図鑑」も人気が高く、トップが悪ければモンボで山を混ぜてリセットする。
単騎構築の強み
単騎構築の強み、それは自由枠の多さと再現性の高さにある。
どんな仕組みでたねポケモンが入っているのか分からないし自分が数弱すぎて諦めたので具体的な数値の言及は難しいが、どんな抽選方法を取っているにしろ再現性は有意に向上する。
加えてトレーナーズの枠が非常に多いため、他のデッキでは採用枚数を削らざるを得ないグッズやサポートも投入することができる。
強力なコンボを、豊富なトレーナーズで押し付けきる。このストロングスタイルこそが単騎構築の強みである。
単騎構築は強いのか?
ここまで挙げてきた強みや先攻ワンキルのキャッチ―さが目を引き、SNS上では「フリーザー最強」という認識を持つ未プレイ・カジュアルプレイ層すら散見される状態になっている。自分もフリ単の持つ魔力に惹かれて、スターミー入りの構築から一瞬だけフリ単にコンバートしていた。だが、誤解を恐れずに言うと、この「フリーザー最強論」は非常に胡散臭い。
ここからは気持ちを切り替えて、単騎構築の現状・弱みなどを語っていく。個人的に感じているのは以下の四点。
言うほど結果が出てない
再現性が怪しい
ゲームプランが脆い
ゲームレンジが狭い
言うほど結果が出てない
まずは現状の話だが、この類型は大した結果が出ていない。
ポケポケはすでに有志開催の大会が複数開かれているものの、そこにフリーザー単騎の姿は少ない(さすがに知名度が高いため、一定数の分布はある状態)。実際に結果を出しているのは「ピカチュウex」や「ミュウツーex」といったデザイナーズ寄りの構築で、水タイプ構築の場合も大抵はスターミーやゲッコウガが採用されている。初期から一貫して評価の高いピカチュウデッキに対し、フリ単が大幅に増加している様子はない。
そして、配信などログが残る形でフリ単が10連勝以上していたという情報もない(もしあったら連絡ください!)。SNS上での連勝報告は現状完全な自己申告ばかりで、その信憑性が怪しい。
再現性が怪しい
先ほど単騎構築の強みはその再現性であると嘯いた。しかし、それはあくまで相対的なもので、絶対的には決して高いとは言えない。
たとえばフリ単。フリーザーと一緒に初手+ トップでカスミを引ける確率はおおよそ5割程度と思われる。この時点で決して高い確率ではないが、カスミはただ引けばいいというものでもない。コイントスを当てなければ手札を1枚切っただけなので、最低でも1エネは拾ってもらわなければ困る。
コインの表裏が5:5だと考えると、初手でフリーザーを加速できる確率は3割にも満たない。初手ふぶきに至っては後攻ですら2割に及ばず、先攻では1割を切ると目される。
これに構築全体を寄せる意味があると言えるのか? たしかに他のたねポケモンを入れるより「パーツを揃える」点においては優秀だ。しかし、結局はトスという無情な運命に抗う術はない。
これはナッシーに対しても同じことが言える。トスを当てないことにはただのデケえカモネギ。中耐久相手にトスが下振れて2ターン稼がれ、裏のexからゆっくり切り返されたりした経験が誰しもあるはず。
このゲームの速攻戦術は、多くの場合トスをしっかり当てなければ成立しないようにデザインされている。フリ単もナッシー単もその例外でなく、速攻寄り特化構築の域を出ない。「ガラガラex」や「カツラ炎」などと最終的な再現性では大差がない。
ゲームプランが脆い
加えて、単騎の平均的なムーヴは対策が容易である。
重要札を引けなかった / 外した単騎は、「ポケモン図鑑」などでトップを確認してゲームプランを練り直すのが定石となる。トップが弱ければモンボで山を混ぜて、シャッフル後のトップで博士や重要札の引き込みを期待する。
この動きは対面している側にとってあまりにも分かりやすい。図鑑 → 博士と動くのは、博士 + トップの上3に有効牌がありましたと申告しているようなもの。典型的な「レッドカード」の打ちどころであり、手札1枚と貴重な博士まで使って相手のグッズ1枚とトレードされている。モンボで山を混ぜたなら、次ターンのトップ以外裏目が少ないと悟られてしまう。
これに加え、ナツミやマタドガスといった汎用性の高い荒らし札も単騎の定着を妨害する。これらをぶち抜いて単騎を定着させるのは非常に要求が高く、構造的にはケアしきれていないと言わざるを得ない。
ゲームレンジが狭い
最後に、これはおそらく、今後現れるほぼ全ての単騎構築で表出する問題である。
単騎構築は、そのゲームレンジが非常に狭い。デッキの総合耐久に限界があるため、長期戦への対応が不可能なのだ。たとえばフリ単の場合、デッキ全体のHP合計はたったの280である。他の環境デッキはexか進化ポケモンを2種以上採用するのが基本のため、HP合計は500近くを維持できている場合が多い。
HP合計は高いほど有利だ。終盤で大技の打ち合いを重ねる際、一旦中耐久のモンスターで受けて切り返しを狙うパターンは多い。現環境ではピカチュウや水タイプなどがこの動きを頻繁に使う。このような立ち回りを行える回数が単騎は絶望的に少なく、比較的低耐久なミュウツーなどと比較しても動きが狭い。
今はまだピカチュウなどとの速さ比べが多い環境だが、現在進行形で「ドガスバナ」などの受けデッキも分布を伸ばしつつある。単騎はこのようなデッキへの対抗策が少なく、速度比べに付き合ってくれないデッキが増えるほど立ち位置が厳しくなると感じる。
総括
上記のような理由で、単騎構築はこれから減少していくと思う。
初心者が簡単に使える速攻という意味では需要があると思うが、ポケポケは比較的少ない課金額でもデッキが複数組める。ミュウツーやピカチュウなど、他の中速~高速を使っていくのが最初は無難なのかな、と個人的には思う。
ポケポケは本家ポケカとゲーム構造やテンポ感が大きく異なるため、今後もそれを利用したアーキタイプが登場していくと思われる。それぞれのデッキの性質をよく把握し、適切なデッキ選択をしていきたい。
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