4,000時間の飛行に裏づけされたWingcopterの構成部品表が完成。第一種型式認証へ大きく前進(ドイツ)
伊藤忠商事も出資するドイツの自律飛行型ドローン配送のスタートアップ、Wingcopter社は、自社開発機体Wingcopter 198の構成部品表(BOM)の完成を発表しました。
https://www.suasnews.com/2024/08/over-4000-flight-hours-lead-to-bom-finalization-for-wingcopter-198/
【ニュースの要点】
Wingcopter社が開発するWingcopter 198モデルの構成部品表(BOM: Bill of Materials)の完成を発表。
BOMは1,150個の部品から構成されている。
Wingcopter 198は4,000時間を超える飛行テストを実施し、これらの部品が量産に遜色ないものであることを証明した
Wingcopter 198のBOM完成は数ヶ月にわたる設計、開発、テストの集大成。
BOMの完成はFAA型式証明取得への重要なステップとなる。
【元しゃちょーのインサイト】
Wingcopterの構成部品表の完成は、技術的な進展であると同時にドローン配送業界全体にとって重要なターニングポイントです。アメリカや日本などでも、有人地帯上空における目視外飛行を実施する場合、量産機体は型式認証を受ける必要があります。簡単に言うと、製品の安全性や耐久性に問題がないか、技術基準に適合するかなど、パーツレベルで国が確認する制度となっています。BOMの完成は、この技術基準に合致した品質を担保した状態の製品の最終形が確定したことを意味します。ここから本格的に諸外国の型式認証などの手続きをクリアしながら、量産体制を加速させることが予想されます。
伊藤忠商事がプレスリリースも出していますが、日本市場においては、2024年3月に海外メーカーかつ固定翼式のドローンとして初めて第一種型式認証の申請を実施し、国土交通省航空局により受理されました。現在審査中ですが、BOMの完成を受けて審査プロセスが加速することが期待されます。
開発フェーズのドローンについては、一機一機をオーダーメイドで作り上げ、実証に挑むことが多く、トライアンドエラーを繰り返しながらパーツも都度改良を重ねるのが一般的です。BOMが完成したことで、機体には大幅な修正が不要となるため、今後の量産機のサプライチェーンが確固たるものになると予想され、メーカーは調達コストの合理化やメンテナンス体制の強化などに注力することが可能になります。今後は、機体性能以上に、販売価格や保守サービスなどで他社との差別化を図ることが重要になるでしょう。
【会社情報】
Wingcopter GmbH(ウイングコプター):
設立年:2017年
本社所在地:ドイツ、ヴァイターシュタット
CEO:Tom Plümmer
2017年にドイツで設立された自律型ドローン配送のスタートアップで、特に医療物資や緊急物資の配送において革新的な技術で高く評価されています。同社はこれまでに累積で約4,400万ドルの資金調達を行っており、日本からも伊藤忠が2022年に100万ユーロ(当時のレートで約1.3億円)を出資しています。日本では伊藤忠商事やANAと提携して、血液製剤の輸送や医療機器輸送の実証実験を行なっています。
Wingcopter 198の特徴:
最大積載量: 4.5kg
耐風性: 平均15m/s、突風時20m/s
巡行速度: 90km/h
最大飛行距離: 110km
本体サイズ: 167cm x 198cm x 66cm
本体重量: 24.9kg
【参考資料】
ANA公式YouTube「ANAとWingcopter ドローン配送事業化に向けた業務提携を締結」(21/4/19)
テレ東Biz 「ドローンで医薬品搬送実験 2026年 実用化目指す」(23/5/25)
HTB北海道ニュースYouTube「ドローンで噴火湾をひとっ飛び 室蘭~森町で医療機器を輸送する実証実験 陸路約2時間が最短30分に」(24/6/20)