ドローン物流の潮目が変わるか?DroneUpが事業縮小とリストラ開始(アメリカ)
ドローン配送スタートアップの雄として名を轟かせていたDroneUpが、3つの都市での運用を停止し、18の配送ハブを閉鎖するなど、事業を大幅に縮小するため、人員削減を含むリストラを断行しています。
https://www.axios.com/2024/08/16/walmart-drone-delivery-dallas-texas#
【ニュースの要点】
DroneUpはフェニックス、ソルトレイクシティ、タンパの3つの都市でのドローン配送事業を終了し、18の配送ハブを閉鎖。
サービスを終了するこれらの都市では、消費者需要の把握には役立ったものの、経済的に持続可能なものとはならなかったと説明
事業縮小により、従業員の約17%にあたる70人が解雇される見込み。
ウォルマートとの提携範囲が縮小され、ダラス・フォートワース地域の15店舗に限定されることになる(ダラス・フォートワースに11カ所、ウォルマート本社近くのベントンビルに3カ所、バージニアビーチに1カ所)
DroneUpのCEOは、よりスケーラブルなモデルと、より高いペイロードを持つドローンに集中する計画を発表。
現在のドローン配送コストは約30ドルだが、同社は配送コストを7ドル以下に削減することを目標としている。
元従業員は、同社は資金調達やドローンハードウェアのアクセスに問題を抱えていると証言。
ウォルマートは他のパートナーと提携して、ドローン配送戦略を再調整中。
【元しゃちょーのインサイト】
2016年創業のDroneUpは独自の物流専用機体を設計し、物流ドローン事業でマネタイズを開始している、ドローンスタートアップ業界においても稀有な存在です。
同社は2023年5月にもリストラを実施しており、当時は物流ドローン以外のサービス部門は閉鎖するとのことで、主に法人向けサービスであった、工事現場や不動産、マーケティング目的の空撮業務を停止しました。当時は選択と集中のための攻めのリストラだったように感じましたが、現在同社は新規採用も止めているようで、事業が純粋に後退している印象を受けます。
DroneUpの事業縮小は、ドローン配送ビジネスの難しさを象徴するイベントです。同社が発表している配送コストは30ドルですが、実際にサービスとして提供しているのは5ドル以下でした。配送ごとに25ドル(約4000円弱)の赤字を出しながら、他社に先駆けて市場を獲得し、将来的なコスト削減を目指していくという戦略です。(あくまで私の私見ですが、同社のオペレーションは運航管理システムを前提としておらず、パイロットに依存したオペレーションなので、実際の配送原価はもっと大きくなっていたのではないかと考えます。)
ウォルマートはDroneUpとの提携を縮小したものの、現在実証を行っているテキサス州ダラス地域の180万人にドローン配達を拡大する計画を持っています。ウォルマートがドローン企業との提携先を多様化していることからもわかるように、スタートアップ側はより柔軟な戦略を採用する必要があります。
しばらくの間はドローン配送事業単体では黒字化の見通しは立たないため、同社が今後も研究開発を継続しながら市場で生き残るためには、更なるアグレッシブな資金調達は必須となります。頼みの綱のWalmartから見放され始めている以上、別のパートナー戦略の構築が急務となります。
日本でも千葉県勝浦市が2022年度から3カ年で予定していたドローン配送事業を、計画半ばにして打ち切りを発表しました。配送は「NEXT DELIVERY」(山梨県小菅村)が担っていましたが、試験飛行や体験会を除いて、地域住民から一度も注文が入らなかったため、市は収益が見込めず、実用化が困難と判断しての中止に至ったそうです。
日本にもドローン物流サービスを標榜する会社は他にも多く存在していますが、現状ではデジタル田園都市関係の補助金や、二酸化炭素排出抑制対策事業の補助金など、補助金に依存した体質で実施されていることがほとんどです。 DJI社の大型ドローン『Fly Cart』の登場により、ドローンで物を運ぶというサービスがコモディティ化してきており、ドローン物流事業者(実態として配送や運搬が混ざっている)が乱立してきています。
今後、ドローン物流業界は統合や戦略的な方向転換が急ピッチに進むと考えています。
【会社情報】
DroneUp(ドローンアップ):
設立年:2016年
本社所在地:アメリカ、バージニア州バージニアビーチ
CEO:Tom Walker
アメリカ全土でのドローン配送サービスの展開を進めており、ウォルマートと提携して大規模なドローン配送プロジェクトを展開中。
Walmartとの資本業務提携や、かつて楽天がパートナーにしたAirMap社を吸収合併したりと、ドローン業界の中でも順調なように見えていましたが、
【参考資料】
2023年5月のリストラを報じたニュース(ソース:CNBC)
2023年5月、ドローン配送実験を中止した記事(ソース:朝日新聞)
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