中国から花開く「低空経済」。ドローン物流が日常風景になっている深圳市の実情。
中国の習政権が目指す「交通強国」の政策の中で、ドローンや「空飛ぶクルマ」を活用した「低空経済」の概念を打ち出し、各地方がその実現を競い始めています。
【ニュースの要点】
中国の習近平政権は「低空経済」構想を推進。
「低空経済」はドローンや空飛ぶ車両を活用した新たな経済領域。
2030年には経済規模が昨年の4倍となる約41兆円に達する見込み。
広東省深セン市では、ドローン配送が積極的に行われている。
深セン市では、ドローンの離着陸場が約250か所設置されており、2025年までに1000か所に増やす計画。
出前アプリ「美団」は、2021年からドローンを使った出前を本格展開し、既に30万件の注文を受けています。また、物流企業「豊翼科技」は、今年6月までに400万件を超える荷物を配送した。
ドローン製造世界最大手のDJIが拠点を置く広東省は低空経済の中心。
深圳に本社を構えるAAM企業(日本だと空飛ぶクルマ)のEhangは、エアモビリティの量産許可を世界で初めて取得。
昨年12月の中央経済工作会議で「低空経済」が戦略的新興産業に位置づけられ、拡大に向けたゴーサインが出され、続け様に今年1月にはドローン運航に関する暫定条例も施行され、運航管理や飛行空域の原則が示されている。
中国に31ある省・自治区・直轄市の全てが、低空経済に関する計画や政策を発表済みで、地方政府間の競争が激化している
広東匯天航空航天科技の趙徳力総裁は、安全確保が最優先である一方、離着陸場の不足や飛行空域の拡大が必要であると指摘していおり、普及に向けた課題感も依然として残っている
【元しゃちょーのインサイト】
ドローンのイノベーションのハブである深圳市を有する広東省には、低空経済に関連した企業が既に1万1000社以上存在するという。昨年5月の時点では、深セン市の65%以上のエリアがドローン飛行に活用でき、既に市内には83本もの空の道が開設されている。ドローンが確実にコモディティ化している、世界でも最先端のドローン都市と呼んでも遜色ないだろう。
記事内に出てくる美団は、2023年3月には中国民用航空局の「特定類ドローン試験運航認可状」及び、「一般航空(ゼネラルアビエーション)企業営業許可証」を取得し、人口密集エリアの上空120メートル以下の空域でドローンの目視外飛行を可能としている。オフィス街のビル群や高層マンションと大型スーパーなどを結ぶ空路を設置し、日本の制度で言うところのレベル4(有人地帯上空における目視外飛行)を当たり前のように毎日やってのけている。
日本がドローン物流を自国テクノロジーで完結するにしても、世界のイノベーションのスピードが早すぎて、結果としてグローバル市場に打って出れるようなサービスにならない可能性が高い。サービスがガラパゴス化してしまうと、サプライチェーン全体も脆弱になる。今日の日本のドローン展示会には既にその状態が現れはじめている様に感じて、とても危機感を覚える。
【会社情報】
美団(メイトゥアン):
設立年:2010年
本社所在地:中国北京市
CEO:王興(Wang Xing)
中国でアリババ、テンセントに次ぐ巨大なテクノロジー企業。O2O(オンライン・トゥ・オフライン)プラットフォーム企業として、デリバリーサービスや旅行予約、飲食店の口コミ情報などを提供してい。特にフードデリバリーでは中国国内で大きなシェアを持ち、同社は2017年から独自にドローンの開発を始め、2020年にはドローン物流事業を開始。2022年末からはビル群が立ち並ぶ深圳の中心地でも、ドローンによるフードデリバリーを本格化させている。
【参考資料】
AFP通信「ドローンで出前配達 深センで「低空産業」が急成長」(23/5/27)
https://www.afpbb.com/articles/-/3464928
美団の技術紹介HP
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