「酒は百薬の長」の嘘
外来で患者さんによく伝える言葉があるんですけど、何かと言うと、「お酒は一滴でも体に害をする」という事実です。
1900年代後半から2000年代初頭にかけて出た論文で、少しぐらいの飲酒はむしろ体に良いという結果が出たという発表がありました。当時の酒飲みの方がみんな喜んだわけです。酒は飲んだ方が体に良いことが科学的に立証されたと。酒造会社や広告代理店、お酒の小売店主の方々も大喜びしたことでしょうね。飲んだ方が体に良いんだから、飲みなさいと言えるわけです。科学的に飲んだ方がいいって証明されたんだから、もっと適度な酒を飲みましょうとなったわけです。
ですが、2018年のランセットの論文で、飲酒は一滴でも良くないことがわかりました。で、現在厚生労働省の見解では、1日あたりの飲酒量は純アルコールに直して、男性では40グラムまで、女性では20グラムまでと定めております。このくらいまでの量ならば、病気になるリスクとリスクは相殺しあって、死亡率が変わらないという結論なわけです。ですが、飲酒をする人がそんな細かいルールを守れると思いますか?守れるわけがありません。なのでやはり僕は、飲酒は行ったとしても体によくないという説を主張したいと思っています。ですし、外来では患者さんに伝えております。
少なくとも以前言われていた、ちょっとぐらい飲んだ方が寿命が長くなるという事や理論は、とっくの昔に否定されているわけで、今の外来でもし「ちょっとぐらい飲んでいいよ」と言う医者がいるなら、それはただのヤブ医者です。ちゃんと説明する必要があると思っています。「少しぐらいの飲酒で死亡率は変わらないけど、酒は一滴でも体に悪いということはわかっています」と。実際、僕は外来では「飲酒も喫煙も同じぐらい体に悪いし、今後続けると言うなら、医者から許可が下りると思わないで欲しい」と言うふうに伝えております。
おそらく今後もマスメディアはこのことをちゃんと報道する事はありません。彼らはスポンサー企業の顔色を見る必要があるからです。
それでは。