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協生農法YAJINスタジアム@米子レポno.1

8月18日発売の拙著『腸と森の「土」を育てる---微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)は、お陰さまで、多くの方に共感・共鳴頂いております。
これから、そうした皆様との共創・共奏とても楽しみにしています。

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光文社新書のnoteでは、はじめにと目次を全文公開して下さっています。
詳しくはこちら

協生農法™️(シネコカルチャー)とは?

さて、書籍の4章にも詳しく概要を説明しております、sonyCSLの研究・論理体系化・実践している協生農法™️(シネコカルチャー)
(※協生農法™️は、この農法をもともと開発された伊勢の桜自然塾の野人さんこと大塚隆さんによる名称。sonyさんはシネコカルチャーと呼び、「拡張生態系」と表現しています。通称として、便宜上「協生農法」と呼ばせて頂きます)。

協生農法は、「農業」の枠組みで考えると全く理解ができません。差し迫った環境問題は自然に任せていては回復不可能な臨界点を突破している現状ですが、元凶の1つともなっているのが農業や畜産の問題です。協生農法は、農業を超えた活動であり、人為により自然を上回る生物多様性を実現し、地球の回復にとって必須の表土の再生を実現する「拡張生態系」です

書籍より、協生農法の説明を抜粋しますと、

自然界の「共生」は、単にwin-winなユートピアでないことを1章でお伝えしましたが、弱肉強食の捕食関係も含め、多種多様な種が全体で協力し合いながら生態系を構築することを踏まえて「協生」と名付けているそうです。
農業は、砂漠化の要因となっていますが、協生農法では、たった1年で砂漠化状態を回復させた例もあります。砂漠化が深刻なアフリカの貧困国・ブルキナファソの事例では、雑草すら生えない枯れた土壌に協生農法を導入することにより、1年で生態系を回復させ、慣行農法と比較して40〜150倍の生産高を上げた上、コスト効率は10倍とされています。500m2の区画から国民所得の20倍に当たるほどの生産量を達成したという実績があります。7000ヘクタールの農場を作ることで、国民全体の食料を賄い、貧困を解決できると試算されています。
(npj Science of Food( 2) 16 :21,Sep,2018 )
全くゼロベースの土地から、地球の歴史上、陸地に生態系が出来上がったプロセスに習いつつ、多様な動植物が共生する生態系を構築していきます。全ての種に役割ができるため、収穫する野菜や果樹を育てるためには、収穫しない植物を植えることも有用です。自然に生える草、昆虫、鳥、野生動物も加わり、全てが渾然一体となり、多様な生物種が密に、かつ賑やかに息づくダイバーシティになります。最終的には原生林以上に多様な生物種が息づく森林のような状態を作り出すことにまで活用ができると言います。土壌の微生物多様性とその活性のレベルも極めて高くなり、病原性微生物が増えづらく、健康で適正な栄養を持つ土と作物が育ちます。
 ある程度生物多様性が回復すると、様々な生態系の機能が向上することで、さらにより豊かな多様性を養うことができるようになります。生物多様性と生態系機能は相乗的に自律的に高まっていく為、協生農法を行えば行うほど、より環境が豊かになっていきます。地球の血液である水を通して、河川や海の環境を回復することにも繋がります。

協生農法は、書籍に詳しく、9項目分、かなりの熱量でご紹介しておりますので、ぜひご高覧ください。

Jリーグ・ガイナーレ米子圃場オープン

さて、我々、鳥取県米子市に第二の拠点を持つに至りました。
理由は、書籍にも書いたのですが、地元に愛されるJリーグチーム・ガイナーレ鳥取のチュウブYAJINスタジアムの横の敷地内にsonyCSL指導の下に、拡張生態系の圃場を開いたからです。
YAJIN=サッカーの野人=岡野さんがGMをつとめるサッカーチームで、協生農法界隈は、協生農法の開祖である野人・大塚さんとのシンクロに、にわかにざわついているようです。コロナに阻まれて、まだ双方の対面は叶っておりませんが。

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100平米ほどの草ボーボーであった敷地を、草刈りがストレス解消と仰るガイナーレ鳥取の塚野真樹社長が、自ら草刈りをされているご様子。

Jリーグというのは、元々出発の理念から「地域貢献」であり、地元にあるJリーグチームは色々と地元を元気にするために貢献しておられるのですが、ガイナーレ鳥取は、元々、ホームグラウンドの芝生を完全無農薬で芝生作っており、その技術を応用して、地元の耕作放棄地を有効活用して芝生を生産する「しばふる(Shibafull)」という事業を立ち上げています。
その中で、地元の耕作放棄地を完全無農薬の芝生で緑化して、家に引きこもりがちである最近の子供たちを、何とサッカーのプロ選手たちが年間300日も遊びに連れ出すという「子供の外遊びプロジェクト」を実施して、Jリーグから2年連続で表彰もされています。

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子供達を見守る塚野さん。

農業担当の野口さんは、元小学校教員でありサッカー選手でもあり、今は芝生の生産・管理をやっておられます。身体性もずば抜けている上、小学校の頃は、子供たちを面白い遊びにどんどん巻き込む天才だったそうです。
小学校の先生って、マルチに何でも知っておられますし、野口さんは特に動植物への愛が深い。

そんな条件が揃っているため、協生農法を、sonyCSL指導の下でやってみませんか!?というときに、すぐに快諾し、場を提供して下さった懐の深いガイナーレ鳥取。この地での実践は初めてですから、まず、この圃場を開き、耕作放棄地の面積が多いこの地域に展開していけたらと思っています。
ちなみに、ここは、全国で一番人口の少ない県です。県全体の人口が50万人、お隣の岡山”市”の人口70万人に圧倒的に負けている!
うちは実家が岡山ですが、実家の母がよく「岡山は都会だ!」という発言に、「まさか!そんなわけないだろう!」と反発してきた過去ですが、鳥取から岡山に入ると「あ〜ら、あんた、ここは都会じゃが!」と感じたのでした。
しかし、懐の深い山から平野、そして日本海へと流れるこの地は、この時代にこそ、価値ある土地だと改めて感じます。サーフィンも日本海側では珍しく通年できるらしいですし、境港は、環日本海文化圏では最も栄えた漁港ですし、皆生温泉は、目の前がビーチで、ナトリウム・ケイ素・マグネシウムが豊富なとても良い泉質の良い温泉ですし。

ただし、弓ヶ浜半島の土地の条件は非常に悪い!

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そして、鳥取砂丘があるだけに、米子市のある弓ヶ浜半島は、砂州、つまり砂の堆積であり、土ですらない痩せた土地なのです。
CSLの指導担当者・南さんによると、この地に生える雑草を観察しても、ビーチのような植生だとのこと。
協生農法は、生物が海から陸に上がり、だんだんと生態系を獲得してきたプロセスを再現していくような方法ですので、その完全なる初期段階なのです。

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この地を守る霊山であり、かつては修験の場であった大山の麓は、縄文の頃から人が住んでいた土地で、弥生の遺跡も残る、とても土が豊かな場所。

しかし、米子市がある弓ヶ浜半島は、山の方にもののけ姫の舞台にもなった中国山脈のタタラ場があり、その砂鉄をとった残りの砂が川の上流から流れ、下流に砂が堆積するなどしてできた砂州なのです。
豊かな日本の国土でも、これほど砂だらけの土地は珍しく、「う〜ん、土にすらなっていない」とややショッキングではありますが、まさに表土を回復することができ、アフリカの砂漠地帯でも画期的な生態系の回復を実現させた協生農法が日本で一番真価を発揮する場所ではないかと期待しています。

さて、4月の初旬からの経過は、

2021年4月8日:開墾の日

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手前は、雑草すら映えていなかった、完全なるビーチからのスタート(Aエリア)
奥は、セイタカアワダチソウやオオアレチノギクなどの荒れ地のパイオニアである強い草が生えていたのを根を残して草刈りをした土地(Bエリア)
大丈夫か?というくらい、砂です。

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種・苗、合わせて100種類弱を撒いて植えました。
種は、こんなふうに全部、混ぜてしまいます。
この背徳的行為が、とても楽しい!
ちなみに、種は、在来種を撒きたいのですが、この時は間に合わず。
地元の種バンカーがまだ見つかっていないのです。

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プロの種まきの技は、こちら。

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そして、水をぶっ放す!とにかく、大人も子供も楽しいのです。

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ちなみに、ぶっ放しておられるのは、「窓」というテレプレゼンス・システムの開発者である阪井さん。
窓は、コロナ禍に面会ができない病院のNICUや施設などでも、時空間をつなぎ、気配や雰囲気まで伝え、人と人の心を繋ぐデバイスとして引く手数多な状況です。
CSLの事務所とガイナーレ を繋ぎ、なかなか心が通わないコロナ禍に、チームを繋いでくれています。

4月30日

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タネを巻いたところからちょぼちょぼと芽吹いてきましたが、Aエリアは協生感はまだなく、点在しています。
奥の雑草が元気だったエリアは、草が生えてきています。

6月21日

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奥は、雑草が元気になり、表面は露出しなくなってきました。
手前は、窒素固定のために植えた豆類が大きくなり、種も芽吹いてはきているものの、砂が露出しています。
なるべく早く表面を植物で覆うこと、そしてなるべく協生関係を作ることが大切なので、Aエリアの方が乏しい。
一般的には、Bエリアは、「草ボーボーじゃないの、刈りなさいよ」となるわけですが、中長期的に表土を回復するという観点では、こちらの方がまだマシなのですね。

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マザーツリーとしての栗の木もしっかり生着しました。小さな毬がみえます。
樹木は20本弱植えましたが、どこかに消えてしまった山椒以外は、全て生着しています。山椒は、跡形もないため、風で飛んで行った説(涙)。

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ブルーベリーやトマトもとれます。

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アブラナ科の菜葉や大根はかなり大きく元気です。

何より、特にAエリアは、草もなく、虫もいない状況だったのですが、クモや蝶の幼虫、てんとう虫、バッタにコオロギなどたくさんの虫が集まってきています。
果樹の葉っぱは美味しいらしく、コガネムシに食い散らかされているものの、新しい葉っぱも芽吹いています。
通常の農業では、歓迎されない虫ですら、拡張生態系という全体性の中では、ホメオスターシスを維持する役割をそれぞれが担っています。

と言っても、Jリーグの公式スタジアムの芝生の方に飛んで行ったら、それはそれで困るわけですが、でも、スタジアムも無農薬なので、キノコが生えたり、もぐらが穴を開けたり、そのモグラを食べに狐が出たり。まぁ、賑やかなわけです。

8月20日

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表面が露出していたエリアは、真夏の日照りで随分と砂が焼けてしまい、色々枯れて土の肥やしになったわけですが、長雨で伸びすぎた草が日陰になりすぎても、また芽吹いた植物が負けてしまいますので、適度に草を刈って、露出したAエリアの表面をカバーしています。
そうすると、表面温度は下がり、保水力が高まり、守られます。

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長雨のおかげで、草との協生がすすみ保水力も上がっているBエリアでは、大きなナスもできました。協生農法的には、かなり立派なナスであるとのこと。

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葉物はかなり大きく、立派に育ちます。ほうれん草など、窒素を与えすぎるとシュウ酸が増えすぎて、食べると危険なものが多いですが、こちら、まめで窒素分を与えているため、過剰な施肥での過剰な窒素でもなく、えぐみもありません。
土づくりのために重要な窒素分はマメ科を初期にたくさん撒いて、頑張ってもらいます。
ここに、鳥が来てくれたら、フンがリンを補充してくれます。

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ズッキーニが随分と立派になって、もう少しで収穫できそうに。

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毒キノコ・オオシロカラカサダケも立派に生えていますが、地下で菌糸のネットワークができてきている証拠、とのことで、毒キノコの存在もありがたい…。
もちろん、食べませんよ。
少量で下痢、大量では死ねるそうですから!

さて、今日は、秋の種まきです。
これから経過報告していきますね。
ちなみに、ブルキナファソの大成功例を紹介しましたが、あちらは、通年暖かいのです。こちら、冬は雪も降ります。同じ砂地でも、その違いをどう超えられるのか?
がんばれ、種たちよ!

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