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近年の小児科専攻医数の動向[2024年度版]
日本では少子化や疾病構造の変化に伴い、小児科医の需要が変化してきています。少子化が進む中、特に地方では小児科医の不足が深刻化していると伝え聞いており、おそらく小児科専攻医数に関しても影響を受けていることが予想されます。
今回は、日本専門医機構のデータを利用して、近年の小児科専攻医数の動向を考察してみようと思います。
全専攻医の採用数に占める小児科の割合
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このグラフは、日本における小児科専攻医の採用数と全体の専攻医数の割合を示しています。具体的には、以下のポイントが読み取れます。
全専攻医の採用数(灰色のバー)は、年ごとに増加している傾向があります。2018年には8,410名だったのが、2024年には9,454名に増えています。
小児科専攻医の採用数(オレンジ色のバー)は、573名(2018年)から532名(2024年)に減少しています。
小児科専攻医が全専攻医に占める割合(濃青の折れ線)は、2018年の6.8%から減少し、2024年には5.6%まで減少しています。
このデータから、小児科専攻医の絶対数は徐々に減少傾向にあり、全専攻医数に占める割合も全体的に減少しています。
少子化や医学生のキャリア選択における変化が影響している可能性があります。緩やかに減少する小児科専攻医数の状況は、将来的に小児科医の不足、特に地域での格差がさらに深刻化する懸念があります。
2024年度における都道府県別の小児科専攻医採用
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この地図は、2024年における都道府県別の小児科専攻医採用数を示しています。色の濃淡で各都道府県の小児科専攻医の採用数が示されており、以下のようなパターンが見て取れます。
東京や大阪などの大都市圏では、小児科専攻医の採用数が特に多く、特に東京では100名以上の専攻医が採用されています(濃い赤色の地域)。
東京・大阪周辺の一部の地域では、採用数が10〜49名の範囲にあり、都市部に次いで多い採用数が見られます(オレンジ色の地域)。
地方部では、特に東北や北陸、四国地方などで小児科専攻医の採用数が少なく、0〜9名の県が多く存在しています(薄い黄色から黄色の地域)。
採用ゼロの県も存在しており(白い地域)、地域による医師不足が顕著であることがうかがえます。
このデータからは、都市部に小児科専攻医が集中し、地方では少数しか採用されていないという現状が示されています。少子化が進む中、地方における小児科医の確保がますます困難となっていることが推察されます。
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この地図は、2024年度における都道府県別の小児科専攻医が全診療科の専攻医に占める割合を色分けして表示しています。
この地図から、小児科専攻医の採用割合には地域差があり、一部地域では高い割合を示しています。
一方で、多くの地方や人口が少ない地域では、相対的に小児科専攻医の採用割合が低いことがわかります。
東京や大阪のような都市部では、全体の専攻医の採用数が多いため、小児科専攻医の絶対数も多い傾向にあります。しかし、割合で見ると、必ずしも都市部が小児科専攻医に偏っているわけではありません。むしろ、都市部では他の診療科の専攻医も多く採用されているため、小児科専攻医が占める割合は必ずしも高くはないのでしょう。
2018年から2024年までの各都道府県における小児科専攻医の採用数
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このグラフは、2018年から2024年までの各都道府県における小児科専攻医の採用数を年別に示しています。地域による採用数の変動や傾向が見られますが、以下のようなポイントが解釈できます。
1. 都市部の小児科専攻医採用数
東京、大阪などの大都市では、毎年安定した数の小児科専攻医が採用されており、大都市圏は小児科専攻医の集中度が高いです。
変動はあるものの、埼玉県、群馬県、神奈川県、兵庫県では、2010年代後半から2020年代前半にかけて特に採用数が増加しているようにみえます。前者3県に関しては、東京都の採用数がやや減少気味なので、近隣の県で増加したのかもしれません。
2. 地方の小児科専攻医採用数
地方では、小児科専攻医の採用数が少ない地域も見られます。例えば、年によって0〜3名程度の採用数にとどまっています。
3. 採用数の減少傾向
一部の県では、2018年以降、採用数の減少傾向が顕著です。例えば、宮城県では2018年に比べて2024年には採用数が減少しています。
このデータは、全国的に小児科専攻医の採用数には地域差があることを示しており、大都市圏に小児科医が集中しやすい一方で、地方では採用数が少なくなる傾向が続いていることがわかります。
2018年から2024年までの各都道府県における小児科専攻医の採用割合
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このグラフは、2018年から2024年までの各都道府県における小児科専攻医が全専攻医に占める割合(%)を年度別に示したものです。以下は主なポイントです。
1. 大都市圏の傾向
大都市圏(東京、神奈川、大阪)では、小児科専攻医の数が多いにもかかわらず、他の診療科の専攻医も多いため、小児科専攻医の割合は比それほど高くはありません(通常10%未満)。
2. 地方の傾向
地方部では、小児科医が全体の専攻医に占める割合が高い年もありますが、これは全専攻医数が少ないため、変動が大きくみえるのでしょう。
一部の地域(東北や北信越)では小児科専攻医の割合が非常に低い年が続いている県もあり、特定の地域での小児科医不足が懸念されます。こ
3. 長期的な傾向
全国的に見て、全体として小児科専攻医が全診療科の中で占める割合は年ごとに変動が見られますが、大きな変化は一部地域に限られているようです。多くの都道府県では、5%程度の範囲内で推移しており、急激な増加や減少は見られません。
まとめ
日本における全体の専攻医数が増加する中、小児科専攻医の絶対数は減少傾向にあり、全体に占める割合も減少してきています。少子化に伴い小児科医のなり手が減ることは、ある程度避けられない現象かもしれません。
しかし、どの程度の減少が許容されるかについては慎重な検討が必要です。小児科医の減少が進むと、特に地方では医療体制が脆弱化し、子どもたちへの医療提供が不十分になるリスクがあります。
適切な小児科医の数と配置を維持するためには、地域ごとの需要と供給を慎重に見極めながら議論していく必要があるでしょう。
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