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7. 科学的根拠からみた小児の胃腸炎と下痢止め
• 「下痢止めをください」
• 「下痢が続いていて、なんとかしてください」
と保護者から外来でお願いされることがあります。
もう少し言い換えると、これは「下痢止め(止瀉薬)を処方してほしい」という意味にも受け取れます。
急性胃腸炎をはじめとした消化管感染症は小児では非常に多いです。下痢が続くとお尻の皮膚が荒れたり、食欲が落ちたり、腹痛を訴えたりと様々な症状も合併するため、「下痢をなんとかしてほしい」と外来でおっしゃる保護者の気持ちの表れなのでしょう。
前回(第6章)では、プロバイオティクス(整腸剤)やヨーグルトの有効性に関して解説してきました。プロバイオティクスは下痢の期間を1日ほど、ヨーグルトは半日ほど短縮させる効果がありました。過去の研究でプロバイオティクスによる有効性が示唆される一方で、古い文献も多く、ロタウイルスワクチン導入後にも同じ効果があるか疑問視もされています。
このため、プロバイオティクスでは有効性の実感が乏しいと感じてしまう保護者もなかにはいて、止瀉薬を希望される場合もあります。小児で処方される止瀉薬では、
• ロペラミド(ロペミン®︎など)
• 天然ケイ酸アルミニウム(アドソルビン®︎)
• タンニン酸アルブミン(タンナルビン®︎)
• ベルベリン
などが該当します。
実際、過去の国内の研究では、小児の急性胃腸炎の初回受診患者においてプロバイオティクスが46.7%、五苓散が4.7%、タンニン酸アルブミンが2.8%、天然ケイ酸アルミニウムが1.9%、ロペラミドが1.1%、ガラクトシダーゼが0.4%で処方されていたと報告されています [1]。
今回は、ロペラミド(ロペミン®︎)、天然ケイ酸アルミニウム(アドソルビン®︎)、タンニン酸アルブミン(タンナルビン®︎)、ビスマス化合物、ベルベリン(キョウベリン®︎)などの科学的根拠を解説していきます。
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