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9. 科学的根拠からみた小児の風邪と鼻洗い・鼻吸い
一般小児科外来の受診利用で多いのが「咳・鼻水」でしょうが、過去の研究結果を1〜8章で解説してきましたが、あまり有効な薬は基本的にはありません。
例えば、咳を止めようにも、コデインは小児では使用禁忌であり、デキストロメトルファン は副作用のため少なくとも5歳未満には使用すべきでなく、アスベリンは国内のRCTでは有効性を証明することができませんでした。
ハチミツは1〜2歳以上の小児で有効性が示唆された論文が複数ありますが、国内での報告はまだありません
また、鼻水止めとして抗ヒスタミン薬が処方されることがありますが、長期間投与してようやく効果が実感できるのと、第1世代の抗ヒスタミン薬は眠気・傾眠・易刺激性や熱性けいれんの持続時間上昇といった副作用の懸念があり、こちらも乳幼児に使用することは基本的に推奨できません。
一方で、「鼻水をなんとかして欲しい」「咳止めが欲しい」など、咳・鼻水の症状を軽快させて欲しいという保護者に、「薬が効かない」という説明をしても納得してもらえる可能性は低いでしょうし、希望する薬を処方してもらおうと他院に受診される可能性すらあります。
例えば、第3章で説明した1991年にアメリカで行われたRCTでは[1]、薬を処方されなかったグループの親の3割はドラッグストアや他院に受診して風邪薬を手に入れる行動に出ています。このため、小児科外来で薬を必要以上に処方しない場合、安全に行える代替案や、薬を処方しない理由をきちんと説明しておき、ドクターショッピングなどを避ける配慮が必要であるかもしれません。
今回は、薬による風邪の治療ではなく、自宅でできる対処法として昔ながらの「鼻洗い」「鼻吸い」について科学的根拠を持って解説していこうと思います。
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