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雑記という場所がただ欲しかった

ドクター・キッドを読んでくれている皆様、Twitterをフォローしてくださっている皆様、いつもありがとうございます。

おかげさまで、気づけば2018年11月時点でフォロワーが13000人を超えました。昨年のこの時期は、フォロワーが1000人もいない状況でした。

もっというと、実はTwitterもブログ(最初はライブドアブログでした)も2016年9月くらいからやっていたのですが、全く流行らず、Twitterもフォロワーは増えずで1年ほど極寒状態でした(冗談ですが割と本当です)。

はてなブログに引っ越したのが2017年の6月くらいで、半年ほどはライブドアブログ時代の記事を書き直して投稿する作業をしました(おそよ130記事くらい)。移行作業が終わったのが2018年1月くらいで、この時期は週に1度アップするくらいでした。

他の先生方(特にほむほむ先生(@ped_allergy))はお忙しいなか、毎日記事を更新しているのが、かなり刺激になって2018年3月から隔日に、4月からは毎日記事を更新しています。これがよかったのか、自分ではよくわからないのですが、フォロワーが一気に増えてくれて、より書くモチベーションが上がって、と好循環になりました。

毎日更新というと「小児科医って暇なの?疫学者って暇人?」と言われてしまいそうですが、正直なところ、全然暇じゃないです。というか、分身の術を使いたいくらいです。ですが、移動時間やちょっとした時間を使うことで、スピーディーに記事を書けるようになってきました。おそらく30〜45分くらいで1記事(大体1500〜2500字)を書いています。また発信を続けることで、学べることが本当に多いです。

1つは新しい知見に触れられたり、気がつかない間に脳に刷り込まれた思い込みに気づけることです。私も人間ですので、エビデンスとか科学的根拠とか関係なしに、小児科の研修医時代の指導医に教わったこととが色濃く頭に残っています。一方で、疫学者としても研究をしているので、様々な疫学研究の論文を読んでいます。すると、研修医時代に受けた教育と真逆の研究結果を多数見ることがあります。つまり、知らないうちに、ある種の知識が刷り込まれていた自分に気づくきっかけになります。
例えば、私が駆け出しの頃、当時の部長は「熱性けいれんに解熱薬は(痙攣を誘発するから)けしからん!」という方でしたし、熱性けいれんは全例にけいれん止めの坐薬(ダイアップ®︎)を使用していました。当時、疫学知識のない私は、本気でこの方針が正しいと信じて疑いませんでした。ですが、やがて疫学者としての勉学を始め、数々の論文に触れるうちに、この通説は正しくないことを知りました。そして気づいたら、ガイドラインも改訂され、今の若手の先生方は痙攣の誘発のことは(そもそも科学的に証明されていないので)割と気にせず処方しています。
川崎病とステロイドもそうです。原因と結果の違いを理解せず、「ステロイドを投与すると川崎病に冠動脈瘤ができやすくなる(だから川崎病にステロイドなんてあり得ない、禁忌だ)」と言われていました。無垢だった私は、本気でこの通説を信じていました。ステロイド派の人達を横目に「この人達、気が狂っているのでは?」とすら思っていました(すみませんでした)。ですが、RCTで蓋を開けてみると、ステロイドを投与した方が、総じて冠動脈瘤の発症率は低かったのです。その後のメタ解析でも同様の結果です。つまり、ステロイドを投与したから冠動脈瘤になったのではなく、冠動脈瘤ができるような重症型の川崎病ではIVIG(免疫グロブリン)だけでは治療が不十分でステロイドが追加されていただけなのです。つまり、「ステロイド→冠動脈瘤」ではなく、「冠動脈瘤ができるような重症疾患→ステロイド」だったわけです。単なる因果の逆転(reverse causation)の要素が強かっただけなのです。疫学用語の一言で解決ですね。ああ、悲し。
時に自分の考えを変えるのは苦痛を伴うかもしれませんが、長い目で見て自分の考えだけに固執せず、様々な角度から自分を疑う作業をするのも大事だと気づくようになりました。何歳になっても、ある種の柔軟性を持ち続けたいと思っていますし、自己主張だけして我が身を振り返れない人には、ある種の危険性や弱さ、胡散臭さを感じます。
実は、ブログの過去記事もこっそりとコツコツと書き直しています。他の先生のツイートを見て、自分の考えが間違っていると思ったら、書き直すようにしていますし、自ら読んだ論文で考えが変われば書き直しまています。恥ずかしいので、わざわざ大体的に宣伝することはしません。軟派ですみません。

2つ目に良かったことは、他の医療職の方々や非医療者の方々とつながりを持てたことです。自分の記事が「役に立った」「わかりやすかった」と言われれば嬉しいです。書いててよかったと思える瞬間はそこそこあります。逆にクソリプされたときは、何かまずいこと書いたかな?と自分に疑問を持っています。本当に単なるクソリプのこともありますけどね。
他者の考えを推察することは大事な視点で、医学的な知識としては正しくても、その「正しさ」を正義と勘違いして誰かを攻撃して良いことにはならないと思います。
例えば、「完全母乳栄養至上主義」など最たる例です。近年、母乳のメリットが大々的に言われるようになり、多くの産院で完全母乳栄養を推奨しています。間違っているとは思いません。むしろ正しいです。ありがとうございますと感謝すべきです。ですが、母乳が出るかどうかは、母の体によって異なります。これも正しいのですし、仕方のないことです。ここで患者さんに共感のできない医療者、辛く苦しんでいる保護者の気持ちを推察できず、「完全母乳栄養」を正義として新米ママに振りかざすと、悲劇が起こります。当たり前ですが、新米ママは精神的に滅入ったり、新生児は脱水になり、新生児黄疸になり、と散々です。
現に、私が知っている(とある)産院では、かなりスパルタ教育をしていて、結果的に新生児黄疸の数が極端に多かったり(30〜40%)、生後2〜4週目に新生児の体重が全然増えずに入院になるケースもあります。入院した新米ママは「自分はダメな母親です」と大号泣されたこともあります。新米パパもなすすべなく、完全にお手上げ状態でした。もとはといえば、母乳は新米ママさんに頑張れるだけやってもらい、足りない分は人工乳を足してあげれば良いのです。新米ママさんが抑うつ傾向になったり、新生児が脱水、黄疸、体重増加不良になるより遥かにマシです。
医療知識は正しく使うことが大事ですが、人はロボットじゃないのですから、柔軟に知識を利用して、健康でいることが最優先なのです。
私の書いた記事も、いくつか正義を振りかざしたものがあると判断したことがありました。実は、少し書き直して投稿し直しています。

初期の頃はフォロワーの方々が少なかったのもあり、割と気ままな記事を書いたり、気ままなつぶやきをしていたのですが、どうしてもフォロワーが増えてしまうと、気ままに記事が書けず、割と当たり障りのない落とし所にしています。とはいえ、最初は気ままに始めたブログやTwitterに少し息苦しさを感じているので、この雑記マガジンでは、好き勝手なことを書いていこうと思います。

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ブログの記事もかなり溜まってきたので、そろそろまとめる作業を開始しようと思っています。こちらは別のマガジンにゆっくりと書いていきます。記事の執筆中は無料公開をしますが、完成したら有料にしようと思います。有料といっても1記事100円、マガジンは300-500円くらいを予定しています。

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Dr.KID
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