ごらん、世界は美しい@天山湯治郷

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たしか、手塚治虫「ブッダ」の帯にあったコピーで、私はキマったときにこの言葉が頭によぎる。

キマるとは、いわゆるマインドフルネス的な境地で、心身がクリアになり、五感の解像度が高まった状態。すると、観念ではなく、言葉ではなく(言葉だが)、体感として、森羅万象が美しく愛おしいと思える。

ごらん、世界は美しい

”ごらん”という呼びかけ感も、気に入っている。
誰かにこの世界の秘密を伝えたくて仕方がない感じ。

さて、そんな「ごらん」が今最も出る時はもっぱら温浴施設でのこと。なかでも、ごらん率が高いのは、箱根の天山湯治郷だ。

温泉に関する博覧強記ぶりと温泉文化への造詣で知られる湯守が手掛けている天山。温泉好きには有名だが、なによりも私が感銘を受けるのは、自然と一体となった設計である。

サウナから出てベンチに寝転がり、外気浴。
空を見上げると、陽光にきらめく緑が視界にはいる。
それらが意志をもっているようにゆらゆらとうごめく。
木々のざわめき、鳥のさえずり、ときたま近くの寺院の鐘が耳にはいる。
風はほどよく身体を撫でるように山から流れてくる。

ただでさえ、いいお湯と熱に浮かされているのに、こんな五感のサービスを受けると、アタマが開いてくる。
ささくれだった心の襞が柔らかくなるのがわかる。
気持ちが自然と穏やかになり、笑えてくる。
足元を通るゲジゲジさえ、輝いてみえる。
あの言葉がついて出る。

ごらん、世界は美しい


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なお、キマったあとは要注意。
天山での至福のひとときを経て
アタマと肉体の連携がバカになり
ブレーキとアクセルを踏み間違えて
壁に激突
フロント部分が瀕死
目が覚める。
いかにもヤンキー上がりのようなレッカーの運転手から、365日いつ呼び出されるかわからない働き方をしており心がすり減っている旨を聞かされ、脱出方法をリアルに考え伝えるも「そっすねー♪」と軽くいなされる。
かかる費用は車体金額とほぼ同じ。

みろよ、世の中クソだわ…


という天国から地獄、マインドフルネスからマインドイルネスな経験がありました。

中郡二宮町、持続的快楽生活。