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「世界でいちばん透きとおった物語」(2023/12/11の日記)

■ 2023/12/11の日記

・久々に小説を読んだ。友人がおすすめしてくれたので。

・今日の日記はそのレビューです。



・表紙の感じからもわかる通り、最後が肝心な話だ。つまりネタバレは厳禁。しかし、この小説はネタバレを避けて面白さを伝えるのは非常に難しい。でも本当に良い本だったので、皆にも読んで欲しくて、そうなるとネタバレは絶対に避けるべきで…。

・だから、久々の読書体験の話をしようと思う。とにかくフワッとした話になります。でもこれは日記を呼んでくれている皆の為だから、感謝してね。そして日記の内容には関わらずこの本を読んでね。面白かったので。それだけは確かなので。



・よく通話する友人が、この間家に遊びに来た時に、この本を置いていってくれた「日記のネタにでも」と言っていた。

・本を人に薦めてもらうというのは、それだけで嬉しい。しかも薦めてくれたのが読書家、いや普段から本を読み漁っている読書オタクならば、語りたさゆえに薦める事も頻繁にあろうと大したイベントではないのだが、今回はそういうわけではない。明らかに普段本を読まない人間からの推薦だ。

・貸してくれる時に多くは語られなかったけど、逆にそれが何か意味を持っていた。伝えたい事はあるけどうまく言葉を尽くせないから、直接感じ取って欲しいとか。良い本を読んだから感想を語り合いたいけどその相手がいないとか。とにかく、何かしらの感動があったんだろうなと感じるわけだ。

・でも実際に読み始めるのには時間がかかった。それは勿論、みんなが普段ゲームや、漫画や、映画やアニメやプラモデルを積み上げるのと同様の感情が理由でもあったし、久々の読書でちゃんと読めるか不安だったからでもある。

・読書すらまともにできない程に集中力が失われてたらどうしようとか思っていた。


・とにかく、先方は通話の度に何も言ってこないけど、そろそろ何かしらの反応を返さないとなって思い、意を決して本をめくって著者紹介を見る。どうやら「神様のメモ帳」の原作者らしい。もしかしてかつてのライトノベル作家って、昨今のラノベの状況を見てみんな普通の小説家に鞍替えしていっているのだろうか?などと根拠のない思案。

・私は本を読む時に、あらすじとか、ジャンルとか、そういう何かしらの前情報が結構必要なタイプだ。そういう指針、どういう気持ちで読むべきかのコンパスが無いと中々集中できず、文字に滑る事が多い。

・でも、逆に全くの情報を入れずに「おもしろい」本を読む機会って、中々貴重なもので、そういう意味では殆ど何も言わずに貸してくれた友人に感謝する。今気づいたけど、裏表紙にあらすじとか書いてあったんだな。全く気付いてなかった。



・新しい小説を読み始めた時、キャラクター像が自分の中で固まるまでの間って本当に大変だ。ここで集中できないと、場面を頭の中で構築する際に一々時間がかかって、この先もずっと集中できなくなる。そういう点で言えば、ラノベの表紙だとか、最初のカラーページの存在って本当に重要なんだなってことを思い出した。

・今回の本はその辺がかなり簡単で、特に細かい描写はないし、登場人物は少ないし、とても読みやすかった。本を読んだ今思い返してみると、作中の描写から、それも全て作者が理解していたものであったであろうことが推測できる。

・すんなりと読み始める事ができた。ここまでくれば後は内容が面白いかどうかが全てだ。内容については触れない。文章は特に癖も無く、のめり込むほどでもなく、でも決して先が気にならないわけでもない、それくらいの牽引力で引っ張られていった。全13章だったので、3日間かけて読んだ。

・読んでる間はずっと不安だった。それは帯に書いてある「予測不能の衝撃のラスト」という文言に関してだ。


・裏表紙ではなんと、帯と合わせて二回も言っていた!いったいなんなんだ、こんなに搔き立てて、もし私の予想した中に同じラストがあったら許さないからな。それとも何か、予想できる人にはこの本を楽しむ資格はないのだろうか?頼むから予想と外れた最後であってくれ。そうやってずっと焦燥感や不安感に駆られながら読んだ。新たな情報が出る度、話が展開する度に想像は豊かになり、その都度にそう思った。

・そして、読み終わってから知った。この本は「そう」紹介するしか、「そう」書くしかないということを。たぶん、この話の結末を知っていたり気づいていたとしても、この本をこういう風に紹介、というか表現する事には意味がある。そんな感じの終わり方だった。

・「世界でいちばん透き通った物語」は凄く特別な本だ。久しぶりに読書をして、こんな特別な本を読んで、楽しかったけど、これから先に本を読むのが少し怖くなった。面白いけど「特別」ではない本の読書体験に響かないだろうかと思う。



・「特別」と言ったのにはこの本の純粋な評価以外に、私個人の事も少し影響している。この物語は、母子家庭に育った主人公が、母を事故で亡くした2年後から始まる。物語中の描写で主人公は何度か、母親の死後の時間の経過が曖昧である事を語っていた。ここのところの表現が凄く私に刺さった。

・この日記でも何度か、私の中で時間の経過が曖昧になっている話をしたと思う。「関東以前」「関東到来後」それでしか時間を区切れる基準が無いのだ。今なんか3年目の冬なんて感覚は全然実感を持てなくて、到来後46ヶ月って言った方が全然ピンとくる。

・しかし、「関東到来後」はもう3年と半分以上は経過しているのだ。3年半前に出たカード、たぶんエルドリッチとか。全然最近のカードの様に感じる。いや、最近のカードってのは語弊があるな。「昔のカードじゃない」が正しい。最近の事はわかる。昔が昔じゃないのだ。過去がどんどん圧縮されているというか、曖昧になっている。その実感をもてないのは人間生活を営む者としてまずいのではと感じてしまう。

・物語を通して勿論、きっかけを経て主人公の時間は動き始める。私の時間に区切りをつけるのにも、何かきっかけが必要なんだと感じた。きっと昔は周りの人の変化や、自身の立場の変化が年刻みだったからそれが簡単だった。待っていればそれをやってくれるシステムが社会にはある。でも今私は、社会に属していない。それをやるのは自分である必要があるのだ。


・2023年の目標、忘れた。2024年の目標は、何か区切りを実感できる年にする事に決めました。何ができるかはわからないけど頑張ろう。まずは忘れないようにするところからだな。



・「世界でいちばん透き通った物語」面白かったです。純粋に面白かったし、この本でしかできない体験は貴重なものだった。物語にはただ純粋な終わりがある事もある。それを劇的でもなく冷淡でもなく、ただ少し寂しさを感じる清らかな文体で纏められた一冊。たぶんずっと覚えていると思う。皆もぜひ読んでみて下さい。


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