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「そういう体質」(2024/06/22の日記)

■ 2024/06/22の日記

・何をするにしても夜の方が、集中という面から捗ると言う事ができる。日中は明るいから視野も広がるし、匂いとか、音とか、活発な世間からの情報量が多く、ただモニターに向かっているだけでも色々な事に気が回ってしまい、中々没頭できない。

・極端な事を言うと暗闇の方が集中力が上がる。家で作業をしていても、夕方頃から速度が上がってきて、19時くらいからどんどん捗っていく、というか外が暗くなって来ている事にもあまり気づかず、真っ暗な部屋で怪しげにモニターに向かっている状態。っていう事がよくある。


・暗闇でこういうことしていると目が悪くなるってのはよく言うけど、私は小学生の頃からずっとこんな感じの生態であるにも関わらず、幼少期からずっと視力が高いので、その言質は全く信じていない。私が暗闇で作業をしても目が悪くならないように、目が悪くなってしまうのもまた、体質なのだろう。ズルい、等と言わないでいただきたい。一方私は歯磨きが大好きなのにも関わらず、虫歯が一生尽きないのだから。これもまた体質。


・体質ってのは如何ともし難いものだ。人間二人が並び立った時にその二人違いはどれ程のものだろうか、性格や考え方や知性といった中身の部分を抜きにして、身体だけでも全く違う生物かのごとく違う。種族による法則が同じというだけで作られた括りは、人間の手による分類で、もしそうやって分けないのだとしたら、人は皆別の生物だと言えるかもしれない。体質って、それくらい大きな違い。今日は、めちゃくちゃ運がなかった体質の友人の話。



・先日五月末、関西から友人が遊びに来た。ツイッターのDMで連絡が来て、会えませんか?と言われた。彼は大学の後輩だったのだが、同じ部署で活動していた少し特別な縁の友人でもあった。

・私は動画活動をやっているという事を遊戯王の知り合い以外にはほぼ教えずに関西を出てきたので、突然のDMに驚いた。しかし、彼は私が今まででほぼ唯一遊戯王を1から教えたリア友であったので、その彼からDMが来たという事は(教えてる途中で疎遠になっちゃったけど)何らかの形で遊戯王に携わっている事を意味していた。少し悩んだが、そのことが嬉しかったし、わざわざ関西からこっちに来てくれるという事で、大学時代の友人の話も聞けるかなと考えて、会ってみる事にした。

・秋葉原のカドショを見て回りたいという事だったので、アキバで待ち合わせをした。久しぶりに会った友人は太っていて(以前は寧ろやせ型だった)肌色も悪く、髪も前はストレートだったのにかなりパーマがかっていて大分変化していた。そもそもストレスを抱えやすい人で、私も彼には色んな事を相談される機会が多かったし、以前は特殊な病気で入院してた事もあったらしいから、そういう体質の人だったもんで、仕事のストレスでこうなっちゃったんだろうな~ってなんとなく思った。

・こんなに変わってるんだったら改札前にいます!じゃわからんて!などとツッコミつつ、久しぶりとか今何してるとか、アキバの美味い店どこです?アキバの飯は結局どこがいいかわかんねーよ。みたいな世間話をしながらカドショを回った。

・話を聞くと、遊戯王は今はマスターデュエルと、会社の後輩と少しやるくらいらしい。遊戯王動画を見漁ってたら、私が画面に出てきて驚いたとか。カードは、英語版のレアリティ高いカードを法則性なくコレクションしていて、気に入ったカードをファイリングして愛でるのが楽しいらしい。ビー本舗や福福など、アキバの英語版ラインナップに感動して少し心配になるくらい買いまくってた。


・平日に来たから気になっていたが、仕事は今は休職中らしい。病気にかかったとかで、聞くと、血液がん、何もしなければ余命一年。



・さて、目の前の人間に「僕はあと一年で死にます」と宣言された時、人はどう反応するのが正しいのだろうか。私は、一瞬でたくさんの感情が渦巻いたような、全く何も感じなかったような、全く何も感じなかったような感じがした自分にショックを受けたような、そんな事どうでもよくってもっと言うべきことがあるような。今、私は混乱しているからこんな事を考えているのか?とか考えて、至って冷静であった気はするのだが、意識が完全に俯瞰してる方の自分に飛んじゃって、受け答えとして頓珍漢な事ばかり言ってたような気もする。

・でも最後に勝った感情は罪悪感だった。

・私の事をよく観察しているみんなは知っている事だと思うけども、私は「良いところで死ぬ」って言うのを人生の最大目標(=夢)に定めている。この考えは、いわばその友人が置かれている状況とは全くの対極で、もし同じ立場であれば全うするのはとても難しい話だ。私は自身の夢を、必要な努力こそあれど、そこまでは難しい話だとは考えていないが、彼にとってはかなり難しく、しかも「死ぬ」なんて、生きるのが平常である事の先にある、とても贅沢な行動だと言えるだろう。

・よく、人の世を良く説きたい人は「あなたが無為生きている、または死にたいと望んでいる今日は、昨日死んだ誰かが望んでいた明日ですよ」みたいな事を言って、絶望してる人の奮起を促したりする。私は今までずっとそれを、人が何にどれくらい絶望するかは人それぞれだろ。と考えて受け流してきたわけだが、今、人生で初めて、寿命ではなくしてこれから長く生きられないかもしれない人間を目の前にして、普段から堂々とそのような事を口走っている事に対して、多分の罪悪感が芽生えた。

・でも、やはりその状況にあって尚、自分の考えに偽りはなかった。私は適切に死にたいと考えていた。その状況でなお考えが変わらなかったことで、芽生えた罪悪感は更に育ったし、例の動画を彼は見ただろうか、という心配などもしていた。


・その後、がんになる前になった病気とか、その闘病生活の話と現在の状況について話を聞いた。最終的に成功率の低い手術を行うらしいが、現在はその入院前最後の自由期間らしく、世話になった人に会って回ってるのだとか。がんが発症したのにも色々理由があるらしくて、めちゃ昔の病気の時に使った薬とかが関係しているとか。複雑で、詳しいことは私には覚えきらなかったんだけど、話を聞いててとりあえず理解できたのは、とにかく彼には運がなかったという事。世界的にみてもかなり前例が少ない不運の重ねがけで、それこそ宝くじに当たるより低い確率を引き当ててその状況に至るらしい。

・彼はそれらの話をする時も努めて明るかった。「いきなり会いに来てそんな話をされて暗い気分になるの絶対嫌でしょ。そんな風に印象に残ってほしくないので。」って言う彼の心中を察するのは、私にはとても難しかったが、正に力説する彼には少し笑ってしまった。実際のところ、助かる見込みも0ではなくて3割くらいって言ってたかな。医者には辛い手術、入院になると言われているが、マジで死ぬつもりはない、というか死ぬ気が全然しない。との事らしい。

・その後は、少しだけデュエルして、ヌメロドスを見学して、錦糸町で飯食って解散した。一日悩みまくったけど、最後にご飯食べてる時に、私の夢の話をした。それは、罪悪感から許されたい気持ちと、これから、この日話さなかった後悔をずっと引っ張って生きていく可能性があるというのも嫌だったっていうエゴからだった。

・彼には今までの付き合いから、この話が理解される確信はあったが、実際の胸中が分からない以上、どんなに罵倒されても受け入れる覚悟もあった。彼は至って平常運転で「それはひとそれぞれですよ」と言った。


・最後まで乱れることはなく、彼はずっと同じ感じだった。一年後にまだ生きてたら連絡します。といわれて別れた後、私はたくさんの事を考えた。


・私は自分の夢の事を今まで「逆になんでみんなそうしないんだろう?」と考えていた。なぜ安楽死は認められていないのか、辛く生き永らえるくらいなら、やり残した事がなくなった時に終わらせられる選択肢がある方が、人生に張りがあるんじゃないかと考えていた。だから私はわざわざ「夢」って言ってたけど、これは、みんなが言う「金持ちになりたい」くらいある種普遍的で、普通のことなんじゃないかなって思ってる節があった。

・でも今回、若いのにこれから長く生きられない可能性がある人間が、私の人生で初めて知り合いの中で、しかもそれなりにつながりがあった人物の中に現れて知った。人生の美味い部分だけ啜って、好きな時にやめれるよ、やめたいよ。適切なタイミングで死にたいっていう考え方は、とても甘えていて、贅沢な夢だったのだ。全然普遍的などではない。そういう考えは、今までたいした大けがや病気に悩まされた事がない体質から持つことができるもの。

・それによって今、自分の夢が変わったり、挫折したり、必要以上に悩むことが、これから増えるとは限らないんだけど、自分の夢が持つ真の属性を正しく理解できた、貴重な体験であった。


・彼とまた、一年後にまたデュエルをするのを楽しみにしています。



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