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ハロッズの社交ドレス

#みんなの文藝春秋

#佐藤優

#キャビンアテンダント


 Tuesdays party

それで私は2013年に長く続けた在宅ワークだけではなく、なにがどうなっているのかは外に出ないことにはわからないと思った。

25年前に関東に出てきたばかりの頃に登録した派遣会社は今でも存在するかと思い電話をしてみると私の履歴は残っていた!

1年ぐらい就職をするまでつなぎで仕事をした頃の給与の振り込み先の口座もそのままでまるで25年前の自分の亡霊にあったような気分になった。そのぐらいもうずっと忘れていたしその頃の担当だった人もとっくに退職していたし。

新たに担当してくれたのは若いコーディネーターだったので軽い感じで「派遣とマネキンの違いはわかりますか?」みたいな話や私が派遣先に気に入られるとすごく喜んでくれた。

長期の契約で横浜そごうで婦人服のハロッズはどうかと案件を持ってきた。横浜そごうは通勤も近いしデパート内も好きだからいいんだけど、あのコンサバイメージが好きになれない、あれじゃあもうレリアンで私にはムリ、みたいな事をいうと「でも横浜で1万円以上出して交通費別途支給だから絶対いいよ」と言われると通勤のラクさを考えるとまぁいいかという気分になった。

社交ドレスはコンサバブランド

実際に行ってみるとなかなかよかった。

そごう内でもすごく売れていたし、コンサバでもレリアンほどではなかった。オバサンブランドだと思っていたけどそうでもなくてキチンと感のある正統派お嬢様スタイルで使い勝手のいいブランドだった。

客層は主に外商客や横浜から向こう(逗子など)に住んでいる富裕層が多くカンタンに売れるのでこれはラクチンだと思った。

用途の多くはお受験スーツからフォーマル、婚カツ、お金持ち有閑マダムのショッピングで売るのがホントにカンタンでやってるうちに少し欲しくなった。ラグジュアリーブランドばかり載せる雑誌25anにも毎月特集で載るほどだからマーケットはじゅうぶんあった。

私がアパレルでずっとやってきた理由は社購(社員購入)で半額以下で洋服を買うことが目的だったからそうでなければやらない。そういう意味でラグジュアリー雑誌の25anは私にとって長年指南書で「社交ドレス」の特集で載ったドレスももちろん安くでゲット。

どうしても必要でこれから先を思わせる偶然の重なりはいつだって神意がまるで働いているように感じる。社交ドレスだけではなくてホントにそうだった。

キャビンアテンダントの顧客

客層は顧客になると富裕層がほとんどでコンサバティブな奥様やお嬢様が多かった。デパートの外商付きの得意客にもとキャビンアテンダントのお嬢様がいた。長年のブランドの顧客でキャビンアテンダント時代は相当羽振りよくお買い物をされていた。担当者は時々違うけど5年ぐらい相手をしている販売員がそのお嬢様についていろいろ教えてくれた。住んでいたマンションの部屋の近所から執拗に騒音ではないけど神経に障るような物音をずっと嫌がらせをされてガラスを手で殴ってしまった事をその販売員に言う。その後自殺未遂をされたりそれをキャビンアテンダントの先輩にそういう事はしてはいけない、と言われたり精神科医に通っていることなどをその販売員に詳しく話すのであまり買わなくなったそのもとキャビンアテンダントのお客様を私が相手することになった。とても品がよくてキャビンアテンダント時代のお金の使い方が抜けないのか?カードが限度額を超えていてよく使えない事が多かった。ほとんどの販売員は「あの人ホントにおかしいんじゃないッ!」って怒っていたけどカードの限度額が通らない客なんていくらでもいるし、何枚もカードを出してはすべて限度額がいっぱいで通らず、もしかしたらこのお客様は販売員の態度が豹変するのを見たいのではないかと思った。買い物好きなら今、限度額どのぐらいかなんてわかるはずだし何枚もカードを出してくるところがそう思わせた。お互い化かしあいで丁寧にいつも「こちらは(店)いつでも構いませんよ、お好きな時にお支払いください」というとなにか気が抜けたような感じで帰っていかれた。

私にはとても印象がよくて精神科に通っている事や自殺未遂の事なんて言わないけれどキャビンアテンダントを辞めて郵便局のコールセンターでお勤めがお休みの、この夏はどう過ごされましたか?と聞くと「父の仕事を手伝っていました」と満面の笑みで答えられた。その事を担当の販売員にいうと「あの人すごいお嬢様でお父様はたしか会計士とかで結構なお金持ちのお嬢様なんだよ、いまあんな感じだけど」と教えてくれる。

お父様の仕事をお手伝いできるのはもとキャビンアテンダントのお嬢様は外貨や通訳に関係することではないかな、とふと思った。

ジャニオタ顧客の奥様と再会

インポートではなく国産のライセンスブランドのハロッズは現在英国のハロッズからものすごいライセンス料をふっかけられてブランド名を手放した事を他の場所で再会したジャニーズオタクの顧客の奥様から詳しく聞くことができた。私が横浜そごうのハロッズにいたのは1年ぐらいだけどたくさんのクセの強い顧客の相手を毎日した産物だと思っている。

ハロッズのライセンスブランドをやっていたのは社名もナイツブリッジ!

私はずっとハロッズにいてもいいと思っていたからいきなり辞めさせられたのは納得いかない、(神意のヤバさに気づいたか?)でもあのもとキャビンアテンダントの精神科通いのお嬢様は今でもどうしているのかすごく気になる。もっと知りたかったけれど。

closet freak/dress a dress