I Do
トリックスター
水槽の水を全部入れ換えたように人間関係が変わる時がある。
90年代のちょうどバブルが下火になった頃だけどまだまだ景気が良かった。20代前半の若い女の子たちが平気で毎回10万以上ポンとカンタンに服を買う時代だった。
いまのようなファストファッションなんてない時代、バッグはシャネルやグッチの本物を持ってそのハデなお水のような服が流行りだった。クラウディアシファーのようなスーパーモデルが流行っていた。
転職した私はそのハデなお水っぽい洋服の会社でスゴく浮いていた。販促会議で「みため暗い」と言われて怒られた事もある。社風には私は全然あわないけど周りはみんな同世代の20~30代前半で仲良くしてくれた。仲良くなった職場の友人はいままで知らない事を教えてくれた気がする。話をきいた後に気持ちがどーんと落ち込むけどスゴく用心深くなる、そんな感じ。
「更正」という意味で毎日規則的なルーティンワークはとても重要だと思う。
集団の心理では人は管理されているほうが確かにラクかもしれない。そして社会生活でそのルーティンを毎日おんなじ事を繰り返し、繰り返し、繰り返す事で陽の下に出られるのかもしれない。
私的に抵抗がある倫理的にできない大罪を挙げるとまず「殺人」、そして「売春」になるけど殺人はともかく売春に抵抗がない人に出会う。
知り合った3人のうち2人はそうだった。もうひとりは気の毒なぐらいホントの「お水」の世界から20代ずっと抜けられない人だったけど苦労人。自由ヶ丘駅前のダロワイヨの2階で2人で食事しながら話をしたことがあってその話の内容から彼女が実家を離れてキツい会社の社員寮に入る気持ちがわかる。だけどそれを少しも苦労だと思っていない。その時は集団や組織の中で同世代の私たちといることが幸せそうで会社を辞めるまではその人の陽のあたる経歴は作られたのだから。
売春に抵抗がないのはとても貧しい人なのかというとそうではなくとてもいい家庭に育っている人が多い。片親でもなく家族の話を聞くとなごむ反面そのギャップにとても驚く。
男の話になる。純粋に好きな同世代のカレシもいて実家通勤で稼いだお金は全部使える環境でなぜ?と思う。そこに少しの罪悪感もない。貧しい、食うために体を売るという世代の話ではない。今の日本ならそれをしなくてもいい時代なのに時々生きるためにしかたなくという話をきくとホントに?と思う。もしそうならすべて行政が悪い。
「yes I Do」
会社を辞めて結婚が決まっているのに20代前半から付き合いのある「パパ」と別れない。パパに会うと毎回3万ぐらい貰うのでそれを貯めているのかと聞くと全部アブク銭で使ってしまうという。車の中でパパが熱海で買ってきたお土産の魚の干物を「オマエ、これ好きだろう?」ってくれるんだよ、帰りに道端に捨てて帰った、そういう話を聞くと気持ちがホントに暗くなる。結婚するのに?すぐ別れるべきだというと上の空で「うん、わかってる」。
そのパパとはいつから?
その出会いはもしかしたらあるいは被害者なのかもしれない。
「その店の客って一流企業なンだけどまるでお風呂のセンみたいなチ〇コ!」爆笑するけどなんかかなしい。
客は5万払って客を斡旋するスナックのママが3万取って2万もらうという。それ、ちょっとおかしくない?フツー逆でしょ?でもそんなもんだと思っていてその時の客なのだという。プライベートで会えばママの3万が自分の取り分になるからだろうけど5万じゃないのがまたヘン。その安売りなんとかならない?いうときっと怒るだろう。
そして結婚式によんでくれて新郎を間近でみるととてもやさしそうないい人で恩師のスピーチでさらにカレシが気の毒になる。式の間中ずっとこれはなにか、頭のヒューズが飛んでいるのではないかと考えた。
「お母さんがさ、嫁入り道具にいい座布団がいるっていうけどいると思う?」引き出物を見に行ってそういう話をきくといい家庭の典型で私の育った2回離婚してる母子家庭育ちの話をすると「おばさん(母のこと)きっと色々あったんだね」そう言ってくれる。
いきなり泣きながら電話がかかってきて結婚式にきていた同級生のキャバ嬢が店がハネた後ヤクザに事務所に連れていかれて薬でラリっているヤクザの目の前でオナニーショーをさせられて泣きながら帰ってきた話をきかされた。そのコは大丈夫なの?ときくともう平気みたい、さっきは笑ってたっていうけど私の5つ下だから当時25才ぐらいで自分が25才の時を思い出したらこれはなんの被害者なのかを考えてしまう。
たしか結婚式のブーケトスを受け取った女の子だった。
最後の電話になってしまったのはクラブでしりあった男の話だった。妊婦の奥さんがいる男と関係を持ってその男が腹ボテの奥さんよりオマエがいいっていうんだよ、という電話。ダンナがいてバレた時それはかなりマズイと言った。だけどその浮気の話は頭でわかっていても急には別れられないような感じで彼女はその話をしてそれが最後になるとわかっていたのかもしれない。
私は時が解決してくれることはあると思う主義でどうにもならないことは時間が経つにつれて薄れていくことは多くあると思う。今すぐどうするかよりも少し気の遠くなるような時の流れにそれを任せてみるのがいい。
どうしているだろう、と時々は思うけど。
2021/5/27/bloody moon
さんどりあん/saloonfreak