#9 炭×農業の地球温暖化対策~CO2を土に閉じ込める~
こんにちは、GTです。
今回は炭×農業による地球温暖化対策の話です。
炭と農業、どちらの言葉もご存じだと思いますが、その2つがどう繋がるって地球温暖化対策になるのか、そして私たちがそこにどう関われるのかについて書いていきたいと思います。
地球温暖化対策としての炭
CO2を減らす方法
地球温暖化対策として代表的なのはCO2を減らすことです。
そもそもCO2を減らすためにどのような方法があるのかをざっくり紹介していきます。
大きく分類すると次の3つになります。
使っているエネルギーの量を減らす
使っているエネルギーを再生可能なものに変える
CO2を吸収して固定する
まず1について、いわゆる省エネと言われている方法です。こまめに電気を消す、エアコンの設定温度を見直す、燃費が良い車に乗り換える、など具体的にはそんな方法が挙げられます。
次に2について、身近なもので言えば電気の契約を再エネプランと呼ばれるような再生可能エネルギー由来の電力に切り替えるとか、ソーラーパネルを設置して太陽光発電の電気を使う方法があります。
最後に3について、これは森林を保全することで大気中のCO2を文字通り吸収することなどを言います。木がCO2を吸収した後は光合成により木の一部となり固定されるので、大気中のCO2が減ることになります。
今回のテーマである炭は3に該当するものですが、CO2の吸収よりもさらに一歩進んだ地球温暖化対策になるので、この後もう少し詳しく書いていきます。
カーボンニュートラルとカーボンネガティブ
読んでいただいている方の中には「カーボンニュートラル」という言葉を聞かれた方も多いかもしれません。それが意味するところはCO2が増える量と減る量が同等で、大気中のCO2が増えないということです。
木がCO2を吸収した後、その木を燃やすとCO2が出ます。ただし、そこで出るCO2は元はと言えば木が成長する過程で吸収したCO2なので、トータルで考えるとCO2は増えていない、つまりカーボンニュートラルということになります。
「カーボンニュートラル」とは別に「カーボンネガティブ」という言葉があります。これは大気中のCO2を減らすことで、カーボンニュートラルよりも効果的な地球温暖化対策になります。ネガティブという言葉が付いてますが、地球温暖化の文脈で言えばポジティブな意味合いです。
そして、今回の炭はまさに「カーボンネガティブ」に当たります。
そもそも炭とは何なのかというと、酸素がない条件下で加熱することで木から水分などが抜けたもので、炭素が凝縮されたものと言えます。木から炭になる過程で木の成分はほとんどCO2になりません。
なので、木を燃やせばカーボンニュートラルで、炭にすればカーボンネガティブです。
ちなみに、炭にしてもそれを燃やせばカーボンネガティブではなくカーボンニュートラルになります。
バーベキューでは炭を燃やして肉を焼いたりすると思いますが、炭を燃やすことで凝縮した炭素がCO2になっています。(炭を燃やした後に残るものは灰で、炭素はCO2として大気中に出ています)
なので、炭にする=カーボンネガティブではなく、炭にすることでカーボンネガティブにすることもできる、と理解しておくのがよいでしょう。
農業での炭の利用
炭にすることでカーボンネガティブにもできると書きましたが、カーボンネガティブにする方法の一つが農業です。
炭には保水性があったり、ミネラルを含んでいるので、炭を土壌改良剤として農業に利用することが可能なのです。
炭を農地に撒くことで、炭に凝縮した炭素がCO2になって大気中に出ることなく、土の中に留めることになります。これによりカーボンネガティブを実現することができるわけです。
ちなみに、炭を農業に利用することでどのくらいのCO2を減らす効果があるのかを定量化する方法が定められていて、CO2が減った分をお金に換える仕組みがあります。(その仕組みをJ-クレジット制度といいます。)
炭を農業に利用することでカーボンネガティブになるのであれば、切った木をどんどん炭にして農地に撒けばいいのでは、と考える人もいらっしゃると思います。
ただし、そこには課題がいくつかあって、その1つが炭を農地に撒きすぎることで農作物の生育に関わるリスクがあるということです。
炭は土壌改良剤としての機能があり、具体的な機能の1つに土壌のpH(酸性度)を調節するものがあります。
炭はアルカリ性の性質がありますが、炭を蒔きすぎることによって土壌のpHがアルカリ性に寄りすぎてしまって、農作物に適さない土壌になってしまうこともあり得るわけです。
どのくらいの量を使えばよいのかは、詰まるところ農地ごとに試行錯誤しながら見極めていく必要があるということになります。
炭を使う農家の応援
このように、炭を使うことはメリットだけでなくデメリットもあります。当然、炭はタダではないので使うことでコストも発生します。
炭を農業利用することは地球温暖化対策として有効な手段であるのですが、実際の使い手である農家の方々にとってはリスクを背負うこともなるというジレンマがあるわけです。
このジレンマを乗り越えるには、農家の方々に炭を使って農作物を作れば売れると思ってもらうことが大事で、そのためには私たち消費者の行動がカギとなります。
要するに、炭を使って作られた農作物を積極的に買う、という行動です。
ここで、炭を使った農作物をどこで買えるのか、という問題が出てきますが、そういう農作物を「クルベジ」としてブランド化する動きが行われています。
ブランド名の由来は、炭を使って農作物を育てることで地球温暖化対策になるので、地球を冷やす野菜=cool vegetable、略してクルベジというわけです。
地球温暖化対策を兼ねた炭の農業利用はまだ広く浸透しているわけではないので、クルベジが買えるところは限られていますが、関西や千葉県北部では炭の利用が比較的進んでいて、クルベジのPRをしている団体があります。
いつでもどこでも買えるというわけではありませんが、近くにお住まいの方は取組をしている農家の方々の応援として一度買ってもらえると嬉しいです。
そして、近くにお住まい出ない方もスーパーや八百屋、道の駅などで売っている野菜に「クルベジ」の言葉が載っていないかなど関心を持って見てもらえば、炭の農業利用を多少でも進められる方向に行くんじゃないかと思います。
ではでは、また次回お会いしましょう。