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【高専建築学科って具体的に何を学ぶの?】各科目を使用する教科書や写真付きで現役学生が解説!!


みなさんこんにちは!現在高専の3年を休学しベルギーに留学中のけんけんです。以前高専建築学科のメリット、デメリットについて書きましたが、今回は高専建築学科の具体的な授業内容、何を学べるのかについて詳しく紹介しようと思います。僕も受験前や入学前にシラバスや時間割を調べて見ていたのですが、いまいち何を学べるのかわかりませんよね!?高専の建築学科は大学の建築学科と専門の内容はほぼ同じなので、大学の建築学科志望の方にも参考にしていただけると思います。

↓以前の記事はこちら


専門科目一覧

高専では1年から5年へと学年が上がるにつれて、専門科目の占める割合が上がっていきます。ここでは僕の在籍する高専の建築に関連する授業を書きます。

1年:造形、建築一般構造、建築設計演習、建築史
2年:建築意匠、建築構造力学、建築設計演習
3年:建築情報デザイン、建築構造力学、建築材料、建築計画、建築設計演習、図学
4年:建築構造力学、建築工学実験、鉄筋コンクリート構造、鋼構造、建築計画、建築設計演習、建築環境工学
5年:土質基礎工学、都市地域計画、建築設備、建築生産、建築法規
その他(選択科目)

このように、基本的には建築士試験の必修科目に基づいてカリキュラムが組まれています。

専門科目のジャンル分け

建築〇〇と堅苦しい科目名が並んでいてわかりにくいので、これらの専門科目を簡単に分類するとこんな感じです。

設計系:造形、建築設計演習、建築情報デザイン、図学
計画系:建築意匠、建築計画、都市地域計画、建築史
構造系:建築一般構造、建築構造力学、建築工学実験、鉄筋コンクリート構造、鋼構造、建築材料
環境系:建築環境工学、建築設備
その他:建築工学実験、建築生産、建築法規、土質基礎工学

少しだけわかりやすくなりました。
それではこの分類を一つずつ簡単に紹介します。

設計関連科目

設計関連科目と書きましたが、簡単に言えば「建築家になりたい!デザインをしたい!」というみなさんがイメージする図面を描いたり模型を作ったりすることに関連した科目がここに含まれます。

造形

1年の初めにある造形という授業は、中学校の図工に近い科目です。座学は少なく、手を動かしながら形を作ったり、人形を作ったりした記憶があります。建築の設計を始める前に柔軟な発想を鍛えたり、ものづくりを楽しく始めようという意図があるように思います。ほぼ図工です。

建築設計演習

1年〜4年まで続くこの科目は学校によって呼ばれ方は異なりますが、いわゆる建築デザインの授業です。演習とついている通り座学ではなく、出された課題に基づいて建物を設計し、図面や模型を制作してプレゼンテーションを行うのがこの授業です。1年次は既存の建物の図面をトレースして図面のルールや描き方を知り、2年次以降は小規模の事務所や図書館、住宅や学校など段々と設計する建物の規模が大きくなっていくのが特徴です。みなさんが建築と聞いて一番に想像するのはおそらくこの科目ではないでしょうか。建築学科の華型とも言える反面、学年が上がるにつれて作業量がどんどん増えるので、建築学科がブラックと呼ばれるのも多くはこの科目が原因でしょう。しかし僕はこの授業が建築学科で一番楽しくて好きです!

↓設計の授業で作った僕の作品の一部を紹介します。

模型を作ったり、
図面を描いたり、
スケッチで表現したり、


建築情報デザイン

建築情報デザインは三年の科目で、Photoshopやcadなどといった、建築で使われるコンピュータソフトの基礎を学びます。工業高校や他の高専、大学などでは1年の最初の設計の授業からコンピュータで図面を描いたりするところも多いようですが、僕の通う高専では三年が終わるまでは手描きという決まりがあります。ソフトを使えるとできるようになった気がするのは確かですが、手描きを大切にする僕の学校の建築教育の方針は正しいと思います。(色々なメリットがあります)高専の授業ではcadやphotoshopは本当に基本的な部分しか触れないので、先輩の多くはほぼ独学で使いこなしている印象です。ソフトは人に教わるよりも自分で触って覚えた方が早いのでしょう。


計画系科目

計画と聞くといまいちパッとしないかもしれませんが、建物の機能、場所や敷地の条件、寸法、歴史との関連、気候条件など、建物や街を設計するにあたっての必要な考え方や知識、常識について学ぶのがこの計画系の科目です。多くの建築家が作った建築の事例をもとに建築の計画方法について学んでいきます。

建築意匠

意匠とは美しい形態を意味する言葉で、建築家の作品について触れながら、材料や特徴について学びます。建築計画の前準備的な科目です。

建築計画

僕の高専では実際に建築の事務所をされている建築家の先生が来られて、世界の有名建築を紹介してもらったり、実際にその人が設計した建物の図面などを見せてもらいながら建築の計画について実体的に学びました。めちゃくちゃ奥が深くて面白い授業です。

建築史

建築史はその名の通り、建築の歴史について学ぶ学問です。歴史に沿ってその時代の建築様式を学びます。僕の高専では1年次に日本建築史の授業があります。西洋建築史は4年で選択できます。聞いた話によると建築史についてきちんと学ぶ大学は減っているらしいです。僕は今ベルギーに留学中ですが、こちらの学校では週2コマも建築芸術史の授業があります。


構造系科目

続いては構造系の科目を紹介します。構造系の科目とは、初めは柱や梁といった建物がどう構成されているかを学び、学年が上がるにつれて力学的な計算、またコンクリートや鉄骨など構造別の計算などを学びます。

建築一般構造

1年のこの科目は建物の構成を学びます。鉄筋コンクリートや鉄骨といった構造の違いやや、壁構造やラーメン構造のような構造の種類などを主に座学を通して学びます。ほとんど暗記科目とも言えてしまいますが、この授業を受けたら建物を見た時にそれが木造なのか、鉄骨造なのか、それとも鉄筋コンクリートなのか、はたまた鉄骨鉄筋コンクリートなのか、などなど、簡単な違いがわかるようになります。

↓使う教科書はこんな感じのすごく古いものですが、読んでみるとなかなか面白いです。

建築構造力学

2~4年生と三年間学ぶ建築構造力学は主に計算です。すごく簡単にいうと柱や梁にかかる力の求め方を勉強します。物理や数学と密接に関わっているので、僕のように理系科目が苦手な建築学生は苦労します(笑)三年ぐらいになるとこの科目が天才的に得意な友達が現れたりもします。僕は壊滅的に苦手な部類に入りかけましたが。

↓使う教科書

鋼構造、鉄筋コンクリート造

名前の通り、各構造別の構成や構造計算を学びます。

建築材料

建築材料ではその名の通り建築に使われる材料(例えば鉄、コンクリート、木材など)の特性や用途などを学びます。座学が基本ですが、先生が材料のサンプルを時々持ってきてくれて、手に触れることができます。ただし、暗記の量はなかなか多いです。材料をよく勉強していると、設計をする際の引き出しにもなります。

環境系科目

環境系科目は建築を取り巻く音や空気、光、熱、エネルギーなどについて学ぶ分野です。建物に不可欠な水道や電気といった設備も環境系の科目に含まれます。基本的には座学が中心です。

建築環境工学

建築環境工学は建築の採光や通風、排気、排煙、冷暖房や断熱に関することを学びます。僕の高専に専門的な研究室はありませんが、コンサートホールの設計に関わるような建築音響工学も環境工学に含まれると言えます。

建築設備

建築設備とは建築環境工学のより実体的な部分で、簡単に言うと建築の電気や機械の設備に関することを学びます。設備設計を専門にする建築家や事務所もたくさんあります。

まとめ

このように建築学科は建物の意匠デザインのような芸術的なものだけでなく、工学的、歴史的な側面、社会や政治、法的な側面など、非常に多様な側面を持った学科です。おそらく多くの建築学科志望の中高生や建築学科でない人は図面を描いて模型を作ってと言う部分をイメージされるかと思いますが、実際はもっともっと幅が広く広大な分野です。また学校や研究室によって建築のどの分野に強いかなどは全く異なるので、建築学科を志望される方は偏差値やランキングなんかではなくどんな専門の先生がいるのか、どんな分野に強いのかをよく調べてから志望校を決めてみてくださいね!(例えば「デザインがしたい!」と思っても実際に建築家の先生が多数教えているような大学もあれば、設計の先生が少なく構造系に特化していると言うような建築学科もあります。)
高専の建築学科は興味さえあれば本当に奥が深く楽しい学科です。みなさんも建築学科に入ってみませんか?

長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。いいね、コメントお待ちしています!

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