キラキラジュース
私は誰もが憧れる国民的アイドルを目指し、日々特訓をしている。そんなアイドルになるために、練習を怠った日はないし誰よりも努力をしてきた。来月にあるオーディションこそは絶対に合格し、デビューする、と心に決め、どんなに辛くても挫けず前に進むことだけを考え頑張っているのだ。
ついにオーディション当日。待合室で待機していると、あきらかにオーラの違う人が1人いた。見た目が特別可愛いわけでもない。でも、なにかをもっている、そう感じた。今まで数多くのオーディションを受けてきて惜しくも敗退を繰り返し、その分たくさんの人を見てきた。この人には勝てない、でもいつか絶対勝ってやる。と、今まで以上にやる気がみなぎったのと同時に、悔しさでいっぱいな気持ちになり、無我夢中に会場から走り出した。
そうして目的地も何も考えずに走っていると、謎の家にたどり着いた。ドアを開けてみると妖精がいた。見てはいけないものを見てしまったと思い、すぐにドアを閉めようとしたが、その妖精に「国民的アイドルになるために必要なことってなんだと思う?」と聞かれ、思わずドアを閉めようとした手を止めた。しかし、妖精からのその質問に答えることができなかった。今まで誰よりも努力をしてきたつもりだし、我武者羅にたくさん練習を重ねてきた。すると、妖精は「君にはオーラがない」と言い、謎の液体を渡してきた。
それは、「キラキラジュース」というものだそうだ。このキラキラジュースを飲めば、私がなりたい国民的アイドルになれる、そう思った。しかし現実はそう上手くなく、飲んだだけではあのオーラのある子のような特別な何かを持てている気がしない。
すると、妖精は「どんな売れているアイドルもみんな、私があげたこのキラキラジュースを飲んでいるの。でも、ただ飲むだけじゃ何も変わらない。このキラキラジュースは今はただの無色透明でしょ?この無色透明の液体に、あなたがなりたい自分を映し出すことが出来れば、あなただけのキラキラジュースができあがるの。その頃には国民的アイドルになっているはずよ。」
私はまだこの謎の液体に不信感を抱きつつも、今の自分にとってのアイドルは何なのか考えてみた。すると、液体の色が変わったのだ。しかしそれはとても不気味な色で、アイドルになるにはきっと程遠い、何かが足りないと感じた。
アイドルになるためにたくさん練習してきて歌も踊りも完璧。じゃあ、私がアイドルになるには何が足りないのか。今までのことを思い返していると、妖精に言われたことを思い出した。それは私には「オーラがない」ということだ。すると、さっきまで不気味な色だった液体が明るい色に変わった。私のキラキラジュースに近づいてきたような気がする。私には、きっと個性がない。歌も踊りも完璧だけど、自分だけのオーラがないから、自分自身をアピールすることができていなかったのだと気づいた。私がなりたいアイドルとは何なのか。どんなアイドルになりたいのか。アイドルになりたいと思ったきっかけ。アイドルになってどうしたいのか。自分のなりたいアイドルへの熱意を考えていると、だんだんとアイドルになったあとの自分が思い浮かんできた。その姿はとてもキラキラしていて、輝いていた。すると、最初は無色透明だったただの液体が、目を見張る程のキラキラした綺麗な液体に変化していたのだ。
これが私を映し出したキラキラジュースだと確信した。そして、私は憧れていた国民的アイドルになる、そう決心しキラキラジュースを飲んだ。
自分自身、鏡でみてもなにか変わった気はしない。でも、なにか違う。今の自分なら、唯一無二のオーラを出してアピールできる、そんなアイドルになれる気がした。
改めて受けに行ったオーディションでは今までとは遥かに違う新しい自分を見せることができ、ついに合格を勝ち取り、誰もが知る国民的アイドルになった。
悔しさから逃げ出したが、妖精に出会いアイドルになる夢を諦めず、キラキラジュースを通して自分自身を見つめ直し、大きく成長することができた。きっとこれから売れるアイドルもキラキラジュースを飲み、輝くのだろう。私は今日の妖精との出会いから得られたことを忘れず、これからも自分にしかないものを生み出していこうと思う。
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