拝啓、過去の僕
これが君に届くのは、きっと遠い未来のことだろう。
だから、君より少しだけ先を生きた僕からの手紙だ。
時間の流れというのは、本当に不思議だ。
僕たちはいつ生まれ、いつ死ぬのかさえわからないまま、ただこの瞬間を生きている。
それでも、こうして言葉を残すことで、僕らは「今」という枠を超えられるんだ。
この言葉が君に届くまで、僕の想いは時間の中で漂い続ける。
それは過去でも未来でもなく、ただ永遠という広がりの中にある。
君がこれを読むとき、僕たちはきっと同じ「今」を生きているのだろうね。
時間という線を越えて、この手紙が君の心に響くことを願って。
さて、僕は今、旅に出たいと考えている。時空を超える冒険ではなく、
本当にこの足で歩き、この肌で感じられるリアルな世界を巡りたい。
たくさんの人とふれあい、一緒に仕事をしたり、日常のことや夢を語り合ったりして、
その時間を共有しながら、その人がどんな形で生きているのか、ありのままに深く知りたいんだ。
もちろん、奇麗な景色を眺めたり、一緒においしいものを食べたりすることだって楽しみたい。
今日見たYouTubeで、ある配信者が日本一周の旅をした人たちに向けてこんなことを言っていた。
「日本一周なんて、ぜんぜんすごいことじゃない。
バイクの後ろに『日本一周しています』って張り紙するのはやめてくれ。
そんなのは自慢でも何でもないし、ただの自己満足だ」
その配信者はさらにこう続けた。
「重要なのは、旅の中で何を経験し、何を得たのかってこと。
ただどこかを観光して帰ってくるだけじゃ、中身がないんだよ」と。
それを聞いて、なるほどなと思った。確かに、その通りだとも感じた。
でもね、それでも僕は、日本一周や世界一周に憧れるんだ。
単に距離や範囲を超えることがすごいと思うんじゃない。
その旅の中で、大きな線を描いて一周することが、僕にとっては特別な意味を持つからだ。
その意味とは、その先で出会う「自分自身」と向き合うことなんだ。
旅の終わりに、僕は過去の自分や未来の自分にこう言いたい。
「ただいま、帰ってきたよ。お土産も持ってきたよ」と。
道中、帰りたくてつらい時もあった。嫌な人に出会ったり、トラブルに巻き込まれたり、試練の日々だった。
それでも、乗り越えた先で僕は新しい自分に出会えたんだって、話したいんだ。
「苦労している人は背中を見ればわかる」と言われるけど、本当に苦労している人の背中には、
逆にその痕跡は見えないのかもしれない。
だからこそ、僕は応援したい。背中に『一周しています』って張り紙をしている人たちを。
あれは単なる旅の宣言じゃない。彼らが自分自身と向き合おうとする証だと思うから。