30.準優勝の裏側で
愛媛の坊ちゃんスタジアムで開催された、西日本クラブカップ野球大会。
これ、実は鹿児島ホワイトウェーブにとっては初の九州以遠への遠征だった。
愛媛まで…バス
九州外進出、しかも代表として!
気分は高揚するが、なにせまだ発足3年のこのチームには、お金がない!
なので、バス移動。
大分からはフェリーを使って、海路四国入りしたとか。
調べてみたが、単純計算でも10時間はかかる。
試合前にこれだけバスに揺られるのは…私だったら「ゴメンなさい」するな、きっと。
九州を代表するのも、なかなか骨が折れる。
雰囲気づくり
前年末にキャプテンを引き継いだ磯辺一樹さんとエース竹山徹さんは、試合前夜にはご当地の居酒屋を訪れることが常だったとか。ホテルの食事もいいけれど、その土地の美味しいものを食べに行くのもまた、遠征の楽しみ。
このときも、松山の居酒屋で野球談議に花を咲かせた。
「たぶん他の選手も一緒だったと思いますよ」
はっきり誰とは覚えていないそうだが、磯辺さんがそう語ってくださった。
そうやって練習以外の場所で話すのって、チームの雰囲気づくりにもすごくいいんだろうな。もちろん自分たちがお酒飲みたい、というのもあるのだろうけれど、それも”場”づくりの一つだったんだろうと、チームを牽引するお二人の人柄からそう感じた。
キャプテン救急搬送
そして開幕。
波に乗って勝ち進んだものだから、2日間で3試合を戦うことに。
岐路に着いたバスで、なんとキャプテン磯辺さんぶっ倒れた!!
「そういえば、試合中バックホームしたときもコケてましたね。足つってた」磯辺さん、今はあっけらかんとそう語る。
8月の暑い最中。
当時はまだ熱中症が今ほど危険視されていなかったが、間違いなくそれだろう。
現地に同行していたかおりマネによると、「とにかく海を超えないと」とヒヤヒヤしながらフェリーに乗せ、大分の港に救急車を呼んだそうだ。
幸い、大分では少し休んだだけで済んだ。
磯辺キャプテンと同級生の大岩本泰司さんが付き添って鹿児島まで帰り、こちらで数日入院したという。
「なんでヤロウを置いていったのかなぁ。男二人でJRで帰りましたよ」
なんて笑えるからほんとよかった。
前年末に、偉大な(怖い⁉)宮田さんからキャプテンを引き継いで最初の年。その重責と長時間の乗り継ぎ移動、2日で3試合ほぼフル出場。そりゃーきつい。
病院では「もういい歳なんですから。前日に飲むのもほどほどにしたほうがいいですよ」なんて言われたそうだ。
西日本クラブカップ準優勝という戦績の裏側には、立ち上がったばかりの貧乏球団ならではのドタバタがあった。