鹿児島ドリームウェーブNews!2023.6.29号 第47回全日本クラブ野球選手権大会一次予選③総括
ギリギリのチーム状況
第47回全日本クラブ野球選手権大会一次(南九州地区)
予選は、ドリームウェーブにとって正念場となった。
なにせ投手陣が二人も不参加。一人はおそらく先発を予定していたであろう選手だ。
不参加ほどでなくとも、体調が回復しきれない選手もいたという。
さらに言うと、ノックの名手である冨重コーチも負傷のため歩くのがやっとだというではないか。大会前にあのノックがないのは心もとない。
当初の予定では、初日に2勝してさっさと第一代表を勝ち取り、2日目の日曜日はオフにするつもりだったろう。
その気合いが所属先企業の皆さまにも届いたのか、初日の三塁側スタンドは多くの観客で埋め尽くされた。所属先企業ののぼりがはためき、とても賑やかだった。
しかし実際は、「ヤバいっす」という声が聞こえてくるほどギリギリの状態。誰か怪我でもしたら…と思うと私まで不安がよぎった。
でも、ドリームウェーブには強い船頭がいる。
誰よりも選手たちの底力を信じ、お前ら勝てるよ!というメッセージを全身で発している戸嶋博 監督。
この人は”置きに行く”ような試合はしない。
どんな状況であれ、全力で勝ちに行く。
選手もそれに応えようとするはずだ。
そう思うと、「そうか、大丈夫だ」と不安はすぐに消え去った。
勝手に殊勲賞
今大会の殊勲を私が勝手に決めていいのならば、村上月斗 投手[(株)ゼンケイ]を推したい。
ただでさえ少ないピッチャーが、さらに二人も少ないという窮地において、村上投手は今大会3試合すべてにリリーフ登板。
初日の第一代表決定戦は2試合連続の疲れからかピリッとしなかったが、あわや一日2勝?と期待してしまう嬉しさがあった。
ロングリリーフでも、打者数はさほど多くない。
テンポよく3人で打ち取るシーンが目立った。
彼はマウンドに立つと大きく見える。
顔立ちのせいもあろうが、まだ十代とは思えない落ち着きを感じる。
きっとまだまだ伸びる選手のはずだ。
クリーンナップの活躍
今大会の3試合、オーダーはほとんど変えずに来た戸嶋監督。
不動の3、4番 榎並虹太 選手[(株)昴]と 上村大希 選手[ユー三―コーポレーション(株)]に加え、とうとうクリーンナップに再定着した5番 吉田賢太 選手[城山ホテル鹿児島]。
大きな放物線を描くことが多かった吉田選手の打球は、最近まっすぐ外野に届く速い打球が多くなった。
すごくシュアなバッティングをするようになった気がする。
さらにスリーランも放ったので、持ち前のパワフルなスイングも健在。
この大会はクリーンナップが3人とも一本ずつホームランを放った。なんて頼れるクリーンナップだろう。
願わくは、4番上村選手の復調かな。チャンスで一本が本来の主軸の役割だから。
打順が打線になるために
そして私が今大会面白いと思ったのは、9番に定着したショート 馬庭龍也 選手[(株)ゼンケイ]。
以前は1、2番を打つことが多かったことからもわかる通り、足が速く器用なバッター。だから9番だと打順の回ってくる回数が必然的に減るわけで、それは残念な気持ちもある。
でも彼が9番にいることで、打順が打線になるなと感じることがとても多いのだ。左打者でセフティバントもあり、どうにかして塁に出ようという姿勢が見て取れる。そしてトップバッターに繋がる。
ほんとに不気味。
こんな9番バッター、相手チームはイヤだろうなぁと思ってしまう。
手元に彼が高校時代のスコアがあった。私が場内アナウンスを担当したときに書いたものだ。
やはりほぼ2番を打っている。
きっと今も、本人は上位に戻りたいと思ってるんじゃないか。
でも、キミが9番にいるって、チームにとってはすごく強みだと思うんだよ。そう伝えたい。
7番セカンド 下池敦士 主将[ユー三―コーポレーション(株)]も打撃好調。長打もある。
下位打線がぜんぜん下位じゃない!
積極的な攻め
走塁も目立った。
四死球だろうとなんだろうと、塁に出るとさらに次の塁を狙ってくる。
ダブルスチールもある。
それは打順がどこであっても変わらない。
とにかく、攻撃が積極的だ。
そして試合を重ねるごとに、一人一人の選手がチーム全体を想い、どうしたらチームの為になるかということを考えている場面が増えていっている。
動いてくるから、試合が面白い!
以前見られた冗長で退屈な試合は、最近はない。
ピッチクロックの影響もあるのか、コンパクトな試合が増えた。
時間的には長くなっても、長さを感じない面白い試合が増えた。
戸嶋イズム
非常に少ない人数、そして主軸となる投手が不在のなか、このチームはよくやっているなと感じる。
それには確固たる船頭である戸嶋監督と、脇を固める名ノッカー冨重コーチ、グラウンド内はもちろんそれ以外のサポートを一手に引き受ける小園選手権マネージャーが、常に気持ちを強く持ち心を砕いてくださっていることに大きく依存している。
その背景を、選手たちも感じ始めていると思う。
だから、点だった選手たちがだんだん線となり面となって戦う集団へと昇華しつつある。
戸嶋イズム、と誰かが言っていた。
戸嶋イズムが浸透してきて、自分に何ができるのかを選手たちがしっかり考え始めている。
地元開催の九州二次予選
第一代表こそ逃したものの、辛くも第二代表を勝ち取った。
九州二次予選は、8月5日から鹿児島市の平和リース球場他で行われる。
予選を勝ち抜いた8チームが、たった1枠の全国への切符を賭けて戦う。
地元開催だし、ぜひとも球場に足を運んで声援をお願い致します。
あくまでも、ドリームウェーブの目標はクラブ日本一だ。
それには九州二次予選も勝ち抜かねば。
今年最後の全国への道は、まだ続いている。