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球団ヒストリー67.初の試み、自治体との協定締結
2013年、当時の本拠地ともいうべき伊集院球場を持つ鹿児島県日置市と、ある協定を結んだ。
『スポーツによる元気で健康なまちづくりの推進に関する協定』だ。
このことについては、さきの記事で少しだけ触れた。
背景
社会人野球クラブチームと自治体が、協定?
正直なところ、スポーツをただ好きで見ているだけだった私には、なぜそんな必要があるのか理由が分からなかった。
実は、その背景にあるのは練習場の確保という積年の課題。
鹿児島ドリームウェーブは、専用の練習グラウンドを持っていない。
たぶんドリームウェーブだけではなく、全国のほとんどのクラブチームも同様だと思われる。
つまり、球場を運営している団体(鹿児島ではほぼ自治体)に申し込みをして、グラウンドを借りる必要がある。
球場はたくさんあるし、いつも大会やってるわけじゃないし、申し込めば使えるんじゃないの?
これもまた私が素人考えでそう思っていたことなのだが、ことはそう簡単ではない。
少年野球から高校野球、草野球まで、球場を利用したい団体は山ほどある。申し込んだとしても、“大会”であればそちらが優先されるため、練習だと後回し。
申し込んでもキャンセル待ちだったり、予約できても車で2時間弱もかかるところになったりする。
常に練習場所の確保に苦心しているのが実情。これは発足当初から現在でもまったく変わらない。
きっかけ
そういった球場利用に関する課題を抱えていたさなか、おそらくホワイトウェーブ時代から『相談役』として尽力いただいたのが、現在の長田康秀県議会議員。
元高校球児で大の野球好きである長田県議には、今も変わらず大変お世話になっているそうだ。
長田県議の提案から、本拠地日置市の市長、宮路高光氏(当時)とのご縁ができて表敬訪問。
そのときに、やはり野球好きであった宮路市長から協定の話が持ち上がったらしい。
そうして締結されたのが、冒頭の『スポーツによる元気で健康なまちづくりの推進に関する協定』。
鹿児島ドリームウェーブとしても、自治体とのこういった協力体制は初のことであったし、おそらく県内のスポーツチームとしても珍しい試みだったのだろう、当時はマスコミにも取り上げられた。
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社会人野球クラブチームの鹿児島ドリームウェーブ(DW)と日置市は29日、『スポーツによる元気で健康なまちづくりの推進に関する協定』を締結した。同チームが自治体と協定を結ぶのは初。野球を通じて市のPRやまちおこしに協力する。
鹿児島DWは2005年の発足当初から、ほぼ毎週末の練習を日置市の伊集院球場で実施。選手たちが本拠地のように感じていることが縁になった。
協定により今後、チームの市公式行事への参加、少年野球教室開催の他、社会人の大会やキャンプ誘致などを検討する。
市役所であった調印式に、鹿児島DWの國本正樹球団代表や末廣昭博監督らが出席した。宮路高光市長は「日置市はスポーツが盛んな地。いっしょに斉唱音肉声ができるのは喜ばしい」と歓迎。國本代表は「市民に誇りと親しみを持ってもらえるようなチームになりたい」と語った。
チームは8月3日から大分県で開催される全日本クラブ野球選手権九州地区予選に連覇を懸けて出場する。國本代表は「まずは大会に全力投球し、昨年できなかった全国大会一勝を目指す」と、好成績を挙げて協定に弾みをつけたい考えだ。
この締結と前後して、数人の日置市議と酒を酌み交わす機会もあったそうだ。
初めてすぎて「お互いにノーアイディアでした」と笑うのは國本球団代表。
何をしたらいいか分からない中で、「チームと地域住民の接点を作りたいですね」という話だけは持ち上がった。
協定の目的
國本代表の想いとしては、まずなにより練習場所としての球場の確保ができればという本願があった。
そしてあわよくば経済的な支援を受けられたらという気持ちもほんの少し…いや少なからずあったはずだ。
お返しとしての地域貢献はもちろん多分に念頭にあった。
そんな想いを知ってか知らずか、協定には球場の優先使用枠や少年野球教室の開催、地域との交流が盛り込まれた。
取り決めはされたものの、なかなか実行に至らないこともあると思うのだが、こと宮路市長に関しては全く違い、非常に迅速に形にしてくださったそうだ!
締結後すぐに決まった全日本クラブ選手権予選の誘致に助成金(※注)を出してくださったり、日置市からの業務委託事業として少年野球教室もすぐに企画してくださったり。
※注)日置市で開催される全日本クラブ予選実施への支援はドリームウェーブではなく主催である鹿児島県野球連盟。それでも日置市に誘致できたことは社会人野球普及という視点からも、遠征費がかからないことや支援企業の方々に試合を見ていただけるという面からも、チームにとって有益であり嬉しいことだった。
また、年5回の日置市主催野球教室の委託料収入は、全国を目指す当時のドリームウェーブにとって非常にありがたいものでもあった。
さらに、日置市のイベントに参加し地域の方々と交流。
市の運動会では、リレーでそれまで常勝だった消防団をかわし圧勝したそうで、その瞬間はかなり盛り上がったとか!
『日置市梅マラソン』はマネージャー含む全員参加を促されたそうだから、かなりの力の入れようだった。
こうして日置市議の方々と話していた“地域住民との関わり”も実現。
少しずつ少しずつ、“日置市の球団”としての歩みを進めていた。
「すぐに実現したのは、当時の宮路市長と議会との関係の良さなんでしょうね」
なるほど、政治とスポーツも、見えないところで密接に関わっているのか…
ただの野球ファンとしても、新しい発見だった。
現実
しかし実際にやってみると、なかなか難しい面も。
たとえば野球教室。
場所の確保やスケジュール調整などを考えると、年に約3,4回がやっとというところ。当時から年に数回は開催していた上にプラス5回となると、かなり練習時間が削られる。
委託事業としての収入はありがたいが、これでは本末転倒になってしまう。
マラソン大会や運動会は温かく迎えられ盛り上がったが、その後の広がりは大きくはなくその場での交流に留まった。
地域住民から“日置市の球団”と認知されるには至らなかったと言っていい。
もっと長く続けられたら変わったのかもしれないが、2年目以降は役所も球団も目の前の雑務に追われ、スケジュール調整や目的のすり合わせまではなかなか時間を割けなかった。
現在も年間を通じて球場利用をさせてもらっているが、この協定が有効利用されているとは言えない。
2022年には同様の協定を指宿市と結んでいる。
これが実現したのは、日置市での経験があったからだ。
うまく機能させられているとは言えないが、現在も協定は続いている。
この経験が活かされる場がこの先にうまれるかもしれない。
おまけ:公式・応援キャラクターたち
球団代表國本さんは広告代理店の経営者。
この日置市との協定や迅速な対応がありがたく、お礼の意味を込めて日置市と絡めた球団のキャラクターを作った。
地域活性化に役立ててほしいと、当時の市役所の担当者へ提案したそうだ。
「企画としては悪くなかったと思うんですが」、役所としてどう活用したらいいか分からず、またそのうちに担当者も変わり…残念ながら日の目を見ないまま現在に至っている。
しかしデザイナーさんが細かい設定まで作り込んでくださったという、地域ごとの18ものキャラクターたち。
せっかくなのでここでお披露目させて頂こうと思います。
最初の二人、吹上童夢くんと江口美波ちゃんは公式キャラクター。ときどき広報誌にもご登場いただいている。
ほかの16人(16体?)は、応援キャラクターだ。
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吹上町出身。東京ドームに憧れる野球少年。
しっかり者でガンコで厳しいチームのリーダー。
夢にかける意志は、誰よりも強い!
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東市来出身。海と野球が大好き!
ぽやっとしていてマイペースだが、チーム衝突の際にはみんなを丸くおさめる。
チームのマドンナであり優しきマネージャー。
日置市
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DW の大ファン!いつか自分もチームに入りたいと憧れている。
好きな選手は「トクさん」同じ中学の先輩なのだ!
● 「 丸に十の字」島津家の家紋をあしらった形が印象的な
伊集院名物のお菓子「伊集院まんじゅう」をモチーフに。
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大太鼓を打ち鳴らして、敵を威嚇、仲間を鼓舞する。
チームのムードメーカーであり、頼りがいのあるみんなの兄貴だ!
でも良い子のみんなはバットで太鼓を叩いちゃいけないゾ!
● 徳重大バラ太鼓踊り・妙円寺詣りにちなんで。
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緑の小鳥、チャッピー。頭のトサカは茶葉でできている。
みんなが練習で疲れたり、チーム内でピリピリしている時に、
美味しいお茶を淹れてくれる癒しキャラ。
● 伊集院、とくに飯牟礼は台地上にあり、
霧が多く出るなど茶の栽培に適しており多く鹿児島茶が生産されている。
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DW の大ファン!平和と愛、そしてチームの勝利をいつも祈ってマース!
● 伊集院町一宇治城には、ザビエルと島津第十五代貴久との会見記念碑があります。
貴久は日本で初めて「キリスト教」の布教を許可しました。
吹上地区
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チーム最年長(樹齢800 年以上)メンバー!巨木ゆえ、どんな高い打球も捕球できちゃうゾ!
● 大汝牟遅(オオナムチ)神社の参道東側に10 数本の巨楠の森があります。
1965年に、旧吹上町の文化財に指定。
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弓矢を使って投球するピッチャー(それってアリ!?) ただし馬とのコンビネーションが必須…!
● 大汝牟遅(オオナムチ)神社の流鏑馬。祈願をかけ戦勝職責を果たすことが叶えられたときは、毎年流鏑馬を奉納するようになったと伝えられています。昭和56年・県文化財指定。
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有能なキャッチャーだが、たまに焦って自分の産んだ卵をボールと間違えることも..
落ち着いてこうぜー!
● 吹上浜には、毎年6 月~ 7月にかけて50 頭近くのアカウミガメが産卵のために上陸します。
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砂で出来ているサンドマン。砂がある場所ならば、どこにでも現れてボールをキャッチするぞ!
しかし、瞬間移動するたびユニフォームが脱げてしまうのを気にしている…。
●「 日本三大砂丘」のひとつに数えられる吹上浜にちなんで。
日吉地区
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4位一体!喜怒哀楽ゆたかな4兄弟。かわりばんごで打つため戦績バラバラ…
だが力を合わせてナイスプレーも!
● 深固院跡は、鹿児島で有名なしんこ団子発祥の地として知られています。
毎年11月下旬の深固院祭りを始めとする町内各地のイベントなどでしんこ団子が販売されます。
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スライディングが得意!いつも泥だらけ。むしろ泥だらけになるのを楽しんでいるかのよう…
● 400年以上続く、日吉町の田植え祭りです。水の張ってある田んぼで
円陣を組み歌いながら飛び跳ね泥だらけになって一年の豊作を祈願します。
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ちっちゃいけれど向上心は人一倍なルーキー!
● 日吉で栽培されている「緑竹(りょくちく)」柔らかな食感で甘みも強く、栄養価も高い。
たけのこの王様と呼ばれる高級食材。
地域おこしの一環として、遊休農地の活用を目的に平成10年から栽培が始まりました。
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瓦で出来た丈夫な体。守備力バッチリ!
● いぶし銀の輝きと光沢、高級感と耐久性をもった「100 年瓦」として
日置瓦は広く県内外に知られています。日吉町での生産がさかん。
明治初期、日置の明信寺、吉利の清浄寺の建立した時に日置に窯を築き、
瓦を焼いたのが始まりと言われています。
東市来地区
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豪“鼻” ピッチャー!?( ゾウじゃないよ急須だよ!)陶器で出来ているため捕球はちょとニガテ。
● 美山は陶芸がさかん。25年以上もの歴史を持つ美山窯元祭りは有名。
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練習後の温泉とビールが大好きな馬さん。風呂とビールのためなら本気だす!
● 湯之元温泉に春の訪れを告げる湯之元温泉馬頭観音馬踊りにちなんで。
色鮮やかに着飾った鈴かけ馬と踊り連が太鼓・三味線・おはやしにのり、
湯之元の温泉街を練り歩きます。
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DW の大ファン!チームの勝利をいつも願っている。
● 東市来( と伊集院) ではイチゴづくりがさかん。
イチゴは畑でハウス栽培しているため、水分調整がうまく行なわれ糖度・品質ともに優れ、
市場でも高い評価を受けています。※伊集院との共有キャラクターになります。
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さわやかなナイスガイ。風にのって波にのって、とれない球はないゾ!
● 江口浜は, サーフポイント・ウィンドサーフポイントとして、
鹿児島で最も有名なポイントです。多くの若者が風と波を求めて江口浜を訪れる。
毎年2月には全国大会も開催されます。
いいなと思ったら応援しよう!
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