見出し画像

球団ヒストリー84.行き違いを丁寧に解くこと

横取り⁉

ところで、日本経済大学から美山良太投手が入団する際に、ひと悶着あったという。

美山投手の入団の流れは、前回の記事に。↓

好投手であった美山良太選手。
大学としては企業チームである九州三菱自動車に進ませられたらと考えていたらしい。

けれども思惑が外れ、地元鹿児島に帰りほぼ無名のクラブチームである鹿児島ドリームウェーブに入団すると言うではないか。

当時の日本経済大学の行澤監督にとって”横取り”とも感じられたようで、たいそう憤っていたという。

そのことを、親しくしている第一工科大学(当時は第一工業大学)の岡留監督から伝え聞いた國本代表。
美山投手の件に関しては、前回の記事でもあったようにチームとして直接声を掛けたわけではなく、コーチからの紹介だった。つまり横取りなど全くの誤解。
そのことを知る岡留監督が事情をお伝えくださったそうだが、それでも不快感を与えたまま遺恨が残るのも本意ではない。
國本代表は福岡まで足を運んだ。

わざわざ球団代表が謝罪と説明に訪れたことに監督は理解を示し、さらにその誠意ある行動に好印象を持ってくださったという。
もともととても面倒見のいい行澤監督は、その後は食事に行ったり、日本経済大学に挨拶に行くと練習中でも駅まで送ってくださったりと、とてもよくしてくださった。

こうして、ひと悶着あったがそれがむしろいい方向に転び、日本経済大学とはしっかりと絆が結ばれることになった。

球団を運営していくうえで大切なこと

このエピソード自体は大きなことではないかもしれない。
代表がこのことをお話しくださったのも、ふと思い出したから、なのかもしれない。

ただ、ながく國本代表のお話を聞き続けてきて、きっとこういった問題は日々生まれているのだろうと感じたのだ。
大学側としては、手塩にかけた選手の将来を預けるのだから、簡単に決められるわけもない。
チームとしてもその思いは重々承知の上なのだが、やはり人と人とのこと、誤解や認識の違いが生じることはある。

誰が悪いわけでもないが、大学との協力体制はチーム運営を続けていくうえでとてもとても大切なこと。

大学ばかりではなくスポンサーや取引先との、小さな行き違いを丁寧にほどくこと。それをきっと何年も何十件もやり続けているのだと思う。

今回の美山投手の件は覚えていたけれど、きっと記憶の隅に押しやられてしまったことも山ほどあるだろう。

チームを続けていくための、そんな代表の行動が胸に響いて、これは書き留めておかねばと感じた次第。

追伸

本筋からは少し離れるが、企業チームに進むはずだった選手がなぜドリームウェーブにつながったのか。
大学では監督と選手が常々進路を相談し合っているものではないのか。

行澤監督はとても面倒見のいい方だとお聞きしていたため、このときすでに大学4年になっていた美山投手の進路についての行き違いを、少々不思議に感じた。

美山選手にお話を聞いてみたら、ちょうど監督コーチが交代したタイミングだったらしい。
美山選手としても、監督が自分を企業チームにと考えていたことを、はっきり知らなかったという。
きっとまだ、細かい情報共有ができる前だったのだろう。

そんな、タイミングが生んだ行き違いをただ不本意な出来事で終わらせることなく、そのさらに先のご縁につなげることができたエピソード。
球団としての丁寧な対応が功を奏した、象徴的な出来事だった。

いいなと思ったら応援しよう!

加納かおり
よろしければサポートお願いいたします。 いただいた資金は、取材などの活動費に使わせていただきます♪