
人間中心設計専門家までの道のり
私はこの度、2024年度「HCD-Net認定人間中心設計専門家」として認定されました。
今回は受験と認定までの道のりについて私の経験を共有し、受験の動機から合格と認定に至るまでのプロセスと受験のコツをお伝えしたいと思います。
受験までの道のり
略歴
まず、私の簡単なキャリアを紹介します。2014年にフロントエンドエンジニアになり、Webデザイナーを経て2016年頃からUIデザインに携わるようになりました。これまで業務システムやtoCサービス、官公庁案件など幅広く50件以上のプロジェクトに参画しています。
受験のきっかけ
HCD-Net認定の資格にはかねてから興味はありましたが、いろいろな理由でしばらく受験することに躊躇していました。
理由としては、まず、HCD認定試験はテストではなく審査書類を提出する形式のため、試験に向けた勉強がなく、新しく学べることがないと感じていました。つぎに、資格を持っていなくともHCD-Net会員になれるため、資格を取得する必要性も感じていませんでした。さらに、受験費用や資格の維持に関わる費用と労力がかなりのものであり、負担に感じていました。
しかし、年々、周囲から「HCD専門家資格を持っていないのは意外だ」と言われることが多くなってきました。また、会社が受験や認定にかかる費用を負担してくれることが決め手になって受験を決意しました。また、これを機に自分の知識や技能を公式に認定してもらうことで、さらに専門性を深めていくことへの期待もありました。
応募前からはじめる
2023年の4月頃に今年度受験しようと思い立ち、まずHCD専門資格コンピタンスマップをチェックしました。そして受験応募が開始する11月までに、これまでの経験では足りないと思われるコンピタンスを補完することにしました。特に私はC群の導入推進コンピタンスが不足していると感じ、HCDの考え方や手法を組織に導入する活動を行いました。
ここまで準備できれば、あとは審査書類を書くだけです。しかし、審査書類の記述がなによりも大変でした。そこで、私が審査書類を書くときに役立ったことを紹介します。
審査書類を記述する5つのコツ
1. 読み手の気持ちを考えて書く
「資格更新手続きガイド」を読むと、専門家およびスペシャリストが審査を行うことになっています。なので、審査書類の読み手(審査員)にとって読みやすいよう意識して全体を構成し、文章を書くようにしました。
2. 確実にクリアする項目を絞る
具体的なコツとしては、まずは記述する項目を集中させました。記述する項目を絞ることで、その項目に関する経験が充実していることを伝えたかったからです。
たとえば、私は「A10.デザイン仕様作成能力」の項目が一番アピールできるところで、ここは確実にクリアしたかったので、A10については4件のプロジェクトで記述しました。
同じようにして、絞り込んだ一つの項目に対して2~4件のプロジェクトで記述するようにしました。また、いずれかの項目で経験が不足していると思われたときのために、8項目以上書いたと思います。
3. 一文一義にする
また、文章そのものの読みやすさも意識しました。具体的には「求められる記述内容」に対して一文一義にすることで、簡潔かつ情報伝達の漏れがないような文章にしました。
たとえば、A10の「求められる記入内容」はつぎのようなものです。
(1)目的とプロトタイピングの対象
・プロトタイピングの実施が必要とされた背景や目的を記述してください
・プロトタイピングを実施したシステム、画面、フローなどの範囲やバリエーションを記述してください
これに対して、つぎのように記述します。
今までにない新規なサービスであることから、PoCを実施する必要があった。そこで、次フェーズのユーザーニーズ検証を行う目的でプロトタイピングを行った。
本サービスの主要な画面であるトップページと、ユーザーが新規登録からコンテンツを投稿するフローのプロトタイプを作成した。コンテンツの登録、編集、削除、共有といったバリエーションがあった。
このように一文一義を心がけることで、簡潔に読みやすく意味の取りやすい文章になるよう心がけました。
4. 書籍を参考にする
さらに、自社やチームで普段使用している言葉が独自な用語でなかにも注意しました。審査員に伝わるようなある程度一般的な用語で表現するため、書籍で確認することにしました。
私は手元にあったつぎの書籍を参考にしました。
これらの書籍を参考にすることで、たとえば、ユーザビリティ、利用時の品質、累積的UXのような用語を的確に使い分けることに役立ちました。
5. 仲間と励まし合う
なにを書くか定まっても、記述すべき量が多く、しんどいことには変わりありません。もし近くに受験者がいたら、励まし合って乗り越えましょう。
私は、同じく2023年度に受験する同僚と夜な夜なハドルしながら記述をがんばりました。文章の書き方を相談したり、提出したらなにをしたいかをおしゃべりすることで最後までモチベーションを保てました。また、同僚も専門家に合格し、喜びも倍増でした。
これから受験される方はぜひご参考にしてください。私もあなたを応援している仲間のひとりです。
認定までの道のり
合否発表から認定まで
さて、来る2024年3月29日に2023年度HCD-Net認定HCD専門家・スペシャリスト試験の合格発表がありました。合格者受験番号一覧に自分の番号を発見したときのうれしさは言葉にできません。
そして、後日メールで案内される費用(合計30,000円)を振り込み、手続きを終えたら認定者になります。
もしも今後維持するつもりがない場合は、認定にかかる費用を支払わずに、合格した実績だけ得るのもありだと思います。
しくじり先生
最後に、受験の過程で、ちょっとしたしくじりをしたため教訓として共有したいと思います。
審査書類の提出方法は、ExcelファイルかHCD-Net認定センターが用意したGoogleスプレッドシートを選べます。私は最初、Excelで記述を進めていましたが、あまりに頻繁にフリーズするため途中からスプレッドシートに切り替えました。
このスプレッドシートは認定センターが用意したもので、提出期限を過ぎるとアクセスできなくなるのですが、私はこのスプレッドシートをダウンロードせずに提出してしまいました。そしてもう二度と自分がなにを書いたのかを確認できなくなってしまいました。
そういうわけで、スプレッドシートで記述する場合は提出前にダウンロードしておくことを強く推奨しておきます。
認定されてからがはじまり
認定を受けたことは喜ばしいことですが、つぎの更新に向けて必要なポイントを積み重ねるため、引き続きHCD関連の実務に励まねばなりません。また、今後、審査員として審査に参加する機会もあるかもしれません。
今回の認定は、私にとって専門家としての新しいステージの幕開けであると実感しています。
まずはこの記事が、これから受験するあなたの役に立ったらうれしいです。