話し合う
夜、恋人と話し合った。
電話に出た途端、彼の沈んだ声が聞こえた。
自分で気づいてなさそうな気がするが、メンタルが強くない人だと思った。
自分はちゃんとしている、自分は弱くない人間だと思ってると思う。
昨日私が毎日かける電話をかけなかったこと、その誘いも断ったことをかなり不安に思っていたらしい。
自分が口うるさく言い過ぎることで私に辛い思いさせるなら、いっそ別れた方がいいのかとも考えたと、彼は言った。
そう考えて涙が出たと。
私も実は昨日同じことを考えていた。
そんなに彼の口うるささがストレスになるなら、別れた方がいいのだろうかと。
何もかも壊せば楽になるのかな、と。
一人で考えれば考えるほど深みにハマり、マイナスの結果しか頭に浮かばなかった。
今日彼と話していても、その話になると暗い気持ちになった。結論が暗い。
彼は言った。
自分は焦り過ぎていたのかもしれないと。
今のままでは関係が破綻してしまわないか不安で仕方がなく、結果に急いでしまったと。
彼は前からこの手の焦りと不安を感じている。
その度に私に強く「結果」や「努力」を求めてくる。
彼は早く私と同棲したいのだ。
しかし彼の自営業の収入は低く、私は無職だ。
遠距離恋愛をするだけでも経済状況は苦しかった。
このままお互い遠距離のままでは冷めて別れてしまうのではないかと彼は懸念していた。そして早く自分の力で充分に稼げるようになりたいと。
(私からすればその程度で冷めるなら同棲しても覚めると思う)
自分の力不足で稼げていない自責の念を、私に努力を強いることに向けられるのはたまったものじゃない。
そんな話を二時間ほどして、これといって解決策も結論もなかったが、ただ話しているうちは彼は自分が焦り過ぎていたのかもと何度も口にし、気づけば険悪さは消えていた。
私が初めての恋愛の年下彼氏。
女の私の方が年を取ってるなんてあまり理想の恋愛ではないけど、そうすぐに焦ったり不安に飲み込まれないのは、恋愛経験豊富で年上の私の余裕なのかもしれない。
若さは本当に羨ましい。
だけど若い頃のとてつもない苦しさを覚えているので、戻りたいとは全く思えない。
彼は昨日一昨日と全然眠れなかったらしく、自営業の仕事も手につかなかったようで寝不足らしかったが、少し遅くまで私と話した。
もう話し合いも終わって話すことがなくなっても。
時々彼は恋を初めて知った少年のように見える。
実際はアラサーでも。
私の十数年にわたる苦しい苦しい恋愛遍歴も無駄ではなかったんだと、彼を見ていて思う。
チェリーでオタク。
純粋で素敵だ。
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