とおくのまち 4 きれいなお姉さん

   ファッション雑誌を時々、購入しては、かわいい服や靴がほしくてため息をついた。お金もなかったし、デパートはなんだか煌びやかで敷居が高いというのかとても近寄れなかった。

   街を歩くOLのきれいなお姉さんやファッション雑誌に登場する女子大生たちの姿に憧れた。

    当時は自分のほうがまだ年下だったので、いつかは自分も成長したらあんな風になりたいなぁと夢見ていた。現実は、成長してもオニイサンやオッサンになるだけで、時が来てもオネエサンにはなれないのだけれど。きれいなお姉さんは、憧れの的だった。

    その頃のお姉さんたちの象徴的なアイテムといえば、プラダのチェーンバッグとフェラガモのリボンパンプスだった。そのふたつの神器をそろえれば、夢は叶うとでもおもったのだろうか、社会人になった自分は、さっそく、それらのゲットをこころみた。

    社会に出たばかりの新入社員にそんな高級ブランド品は、分相応でなかったのか、すぐに赤字になってしまった。給料はすぐに底をつき、クレジットカードは火の車、ついにはキャッシングまでしてしまって、赤字を埋め合わせようとすれば、さらに赤字になって、怒られながらも何度か父親にたすけてもらった。ただ、何にその金をつぎ込んだのかと問われても、自分が身に着けるための婦人服や高級鞄であるとは言えるはずはなかった。

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