書店でふと手に取った小説。あとがきを読んで気になっていた作品だ。
嵐の二宮君が主演で映画化ということで、テレビコマーシャルでも宣伝されていたので知っている人も多いだろう。
写真家の浅田政志さんと、その家族の半生を追った作品だ。
父(平田満)、母(風吹ジュン)、兄(妻夫木聡)と彼(二宮和也)の四人家族。
看護師の母は働き者で、父親は主夫。
お兄さんは、長男らしく真面目。
そして、主人公は次男坊を地で行く、自由人という家族構成だ。
「両親を喜ばせるのは、いつも政志(弟)だ」と兄が語るシーンもあるが、心配もかけるが、とにかく愛らしいという存在が、二宮君にハマって、物語に惹き込まれていく。
幼い頃から写真を撮ることが好きだった政志少年が、カメラマンになるために、一人家を出て写真の専門学校へ。
だが、授業には出ない、パチンコ三昧、そして、両腕にタトゥーと、絵に書いたような堕落ぶり。
このままでは、卒業もままならないなか、学校の先生から卒業を賭けて作品の提出を求められる。
『あと一度しかシャッターを押せないとしたら、お前は何を撮る?』
撮りたいものがなく、撮ることに情熱を失っていた政志は、その昔、父、兄、自分の三人が同じ日に怪我をして、母の勤める病院で治療を受けた日を再現した写真を撮ることを思いつく。
母に怒られながらも、家族が揃い、何やってるんだと笑った日の光景を写真におさめることで、学長賞を受賞する。
家族写真という、誰にとっても身近な題材が
彼にとって撮りたいものになっていく。
そして、家族もまた、写真に撮られることで
強い絆で結びついていく。
そして、写真界の芥川賞・木村伊兵衛写真賞を受賞した彼は。
全国各地で、家族写真を撮る仕事をはじめる。その家族の最高の瞬間を写真におさめる。何という素晴らしい仕事だろうか。
そして、かつて写真を撮ったある家族が
東日本大震災で被災する。
写真家として無力感に苛まれる彼が、
写真によって引き裂かれた絆をまた
取り戻していく。
あたり前の日常こそ、価値がある。
頬を伝う涙は、久しぶりに心地よいものだった。
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