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その人らしければそれでいいのか?【医療・介護・生活支援】

娘は障害支援区分6の最重度知的障害者で、自分の身を自分で守ることができず、清潔不潔を正しく判断することができず、自分の意思を言語で他者に伝えることが困難な25歳の女子です。

親なきあとの自宅での一人暮らしを見据えて、ヘルパー支援による自宅での暮らしを整えるべく、たくさんのヘルパーさんのお世話になりながら暮らしています。

日中は生活介護に通い、通所前(朝)、帰宅後(夕)、平日は夜中に泊まりの支援も行ってくださる方に恵まれ、少しずつ我々親の手を離れて、親なきあとの娘の暮らしが想像できるようになってきました。

この支援者不足の中、少しずつ、本当に少しずつ、何年もかけて支援者の輪を広げていただき、今は30人ほどの方が入れ替わり立ち替わり関わってくださっています。

ありがたい反面、関わる人数が多くなると1つのことを伝達するのがとても大変になります。
お通じのために、朝にバナナを半分食べさせてやって下さいということたった一つ、皆様に周知するのが大変だったりします。

ノートを駆使してできるだけ意思伝達をスムーズにし、継続した支援に繋げていただく工夫をしています。

また、これだけいらっしゃるとそれぞれ為人も違うし、支援の仕方も価値観も死生観も違うので、自ずと支援内容に差が出てきます。

ですが、支援者さんはなるべく支援者間で差が出ないように、前の方がされているようになぞってくださったり、本来親がしていたのはどうであったかとか、本人はどれが心地良いかと見極めながら支援してくださいます。

本人が混乱しないように支援を揃えることは実はとても大切なことなんです。

だがしかし、です。
やってきた通りで本当にいいのかな?!という視点は健康に寄与する専門職にとってはとても重要です。

行なっている支援が『本当にこれでいいのか?』と疑うプロの視点が必要だと思う事が、実はいくつもあります。
自分で自分の身を守ることのできないほど重度の要援護者の支援を行う場合、特に、です。

これからも長く生きていく娘の人生です。
できるだけ善い生活習慣でいる方が長く健康でいられる、病気や怪我に繋がりにくい、など、長期的なスパンでものを見たり、将来のためには変えておいた方がいい生活習慣もあります。

・親が良かれと思って用意している柔軟剤が、肌の弱い人にとっては不要ではないだろうかと提案したり、

・ベッドメイキングの防水シーツの敷き方によっては通気性を損なって肌に悪いのでは?シワになって安眠できないのでは?と疑問を持ったり、

・ベッドがこの向きでは朝方寒いのでは(または暑いのでは)と気づいたり、

・手洗いが徹底できない時のために手荒れのしにくいジェル状の手指消毒剤を使用してはどうだろうかと考えたり、

・水分補給にと用意してある飲料は、糖分が多いのでお茶などの方がいいのでは?と提案するなどなど、、、

プロのプロたる所以の細かいケアは実はとてもとてもとても奥深いものです。

なのに、人がそうしてきたから、親(家族)が良かれと思ってそうしているから、前の人に倣って…など、思考停止に陥っているケースが実は結構多いのです。

娘の支援者さんの中には、自らの経験と知識によって【お母さん、どうして◯◯されてますか?もしこだわりがないようなら、こういう理由でこうしませんか?】と、おっしゃってくださる方も多く、娘の健康上、生活習慣上【善かれ】と思っての新たな提案ややり方の工夫にこれまでいくつも助けられてきました。

その人や家族のこだわりで【そうしておかなければならない確固たる理由】があるのでなければ、身体や生活を支援する専門職の視点でいつも思考を巡らせ、少しでも良い方法を模索する、その姿勢が大切だなぁと、同じ専門職としても襟を正す機会をいただいています。

もちろん、こだわりやその方のやり方を尊重することはとても大切です。
でも、なんとなくそうなっている、という場合も少なくありませんし、常日頃から話し合える信頼関係がとても大切です。

その人がこれまでそうしてきたから、前の人がそうしているから、ただなんとなく…支援していないでしょうか。

また、【その人らしく】という隠れ蓑に隠れて、専門職がその人の生活や健康にとって本当に大切なことを思考しなくなったら、なんのための専門職だろうかとさえ思います。

娘のおかげでたくさんの方とお知り合いになりました。

継続支援が必要である一方で、常に初心に立ち帰り、これが最良の方法か?と問い続けることの大切さを、娘の支援者さんから学ばせていただいている今日この頃です。

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なつまま|🏠フリーの看護師🏠33万PV感謝🙇‍♀️
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