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言葉を持たない娘の【コトバ】を伝える
アンジェルマン症候群の23歳の娘には重度の知的障害とそれらからくる【自傷他害】と呼ばれる行動障害があります。
自分が望んでいないことをさせられそうになったら全身で嫌だと表現し、言いたいことが伝わらない時、伝える術を持たない彼女には、手や足を出したり、噛み付いたり叩いたり引っ張ったりすることでしか伝えられない思いがあります。
逆に嬉しくてテンションが上がりすぎ体の力が抜けなかったりすると、全身の関節が固定され石のように硬くなり、その身体が一度に強烈に動くのでまるでハンマーのような力強さで人を叩いてしまったり掴んでしまったりします。
力は入れようとするときよりも抜こうとするときの方が難しいのですね。
そして、それらは我々マジョリティにとっては【問題のある行動】と写り、時に【自傷他害】【暴力】とも呼ばれてしまいます。
専門用語では【行動障害】と表現します。
私たちの生きているこの日本社会では全くもって歓迎されない行動の数々ですが、娘の心の表出であり、それすなわち彼女の【言語】なのです。
もちろん親としては、娘が何とか別の方法で伝えようとすることができないかとこの23年試行錯誤してきましたし、これからも試行錯誤し続けていくことでしょう。
それでも知的障害を持つ者にとって限界というものもあり、首や腕など柔らかいところに爪を立てられると、私自身痛くてたまらず【痛ーい!】と叫び、時に娘を睨みつけ、叱ろうとしますから…そんな時はもう冷静に彼女のコトバが聞こえてきません(泣)
そんな時は夫が冷静に見ていて『どこか調子悪いんかな?』と言って彼女の【コトバ】に気づこうとしてくれます。
それにより痛くて目から涙や火が出そうな私もなんとか我に返り、夫婦ニコイチのチームワークで何とか乗り切っています。
親でさえこうなのだから、いくらプロの皆様とはいえ、支援者の皆さんが痛みや驚きでうまく支援ができないことは、口で言ったり机上で学んだりして理解したとしてもそう簡単にできることではないことだと重々理解できます。
ですが、仕事だからこそ親なんかよりもはるかに冷静に、根拠に裏打ちされた知識や技術で寄り添ってくださる方も実にたくさんいらっしゃいます。
その方々には感謝しても仕切れないですし、足を向けては寝られません。
でも、そんな方がいらっしゃる一方で、理性ではなかなか回避できず動物的な危機への対処機能で強く振り払い、時には大声で威嚇してしまう方もいます。
ひどい人だと仕返しの手が出たり、それが虐待につながってしまう危険だってあります。
そうなると娘は固まってしまい、余計にちゃんとしたコミュニケーションができなくなってしまいます。
悪循環なのです。
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親のように愛してやってくださいとは申しません。
でも、せめてそれを生業としている方には、プロとして、少なくともこれが娘の【言語】であることを理解し、娘の気持ちやしたい行動に寄り添った支援をしていただけたらとても嬉しいな、と切に切に願うのです。
ある時、同じ親としての立場であり【親なきあと】という同じ問題について語り合う仲間でもあるママ友とこの話題で話している時に、彼女は、
『それを支援者に求めるのは、こう言っちゃ申し訳ないけどハードル高いよ』と言いました。
そうなのです。
多分まだまだハードルは高い。
でもね。
それでも、専門職にそれを求めなくて誰に求めるの?
今はまだ、社会の多くの皆さんがわかってくれる状況にはないのだとしたら、せめて医療や福祉の専門職の方々にだけでも、彼女の【コトバ】を理解しようとしていただきたいのです。
そのためには、親が上手にお伝えしなくてはなりませんが、ただ親バカ丸出しで偉そうに言っているように聞こえたら言われた方は気分良くないですよね。
娘のためにもなりません。
本末転倒です。
従って、私自身のお伝えする能力も磨かねばと思っています。
多分10年前だったら、この親の思いを伝える術はほとんどなかったかもしれません。
親はみんな言いたかったはず、でもそれを支援者に求めることはきっと我が儘と受け取られたでしょう。
世話をしてもらい、命を守ってもらっているだけで当事者や家族は何も言えない、言ってはいけない時代が長すぎましたよね。
支援者に横柄な扱いを受けたり、親心を鼻で笑われたり、希望を言えばもう来ないでと断られたり。そんなエピソードが我が家だけでも一つや二つじゃありません。
でも最近は、強度行動障害の学習も幅広く行われるようになってきましたし、現任の皆様方が追研修を行って要支援者にとってより良い支援となるように専門職の皆様が高みを目指してくださっています。
『世話してやっている』ではなく、『これは私の仕事なのですから当然のことです』とおっしゃる支援者さんもとてもとても増えました。
親なきあとの我が子の幸せを願って、できる限り【わかってやってほしい】と愚かな親心をお伝えし、お願いすることが、少しずつ許される時代になってきたと私は実感しています。
これからもあたたかで芯のある支援者さんに、言葉を持たない娘の【コトバ】について出来るだけわかりやすく、イメージしやすく実行しやすい形でたくさんお伝えして、娘の幸せな未来を祈っていきたいです。
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