正解のない試行錯誤の尊さ
あるコロナ禍の、悪天候の日の出来事。
雪で気象警報が出て、朝突然、学校や障害者施設が休校・休業を決定した日のことです。
こういう急な施設休業は実はとても困りますよね。
お年寄りのデイサービスはもちろん、障害児の放課後等デイサービス、また、成人障害者の作業所や生活介護などの通所福祉施設の休業は、もちろん安全のための対策とは重々承知していますが、本人が何とか家族の手を離れて自立しようとしている場合、家族対応ができかねて大慌てすることがしばしばあります。
職員さんの安全や送迎の際の利用者の危険回避が大切なのはわかるのですが、福祉施設の休業というのはそれがなくては立ち行かない人々の生活を突然激変・困窮させます。
例えていうなら、警報が出て危険だから、という理由で病院が診療しません救急車も受け入れませんと言ったら誰もが『えっ!?』って二度見して聞き返すように、本来は福祉にもそれくらい大切なお仕事だと思っていただきたいというのが私の本音です。
この事は、昨今の防災の考え方や危機管理との兼ね合いで、かなり侃侃諤諤、永遠の課題になっている事柄です。
でもこの件についてはまた改めて😅
今日は、そんな話がしたいわけじゃないんです😊
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同じ町内に、お父さんを早くに亡くし、今は母一人子一人でお母さんが一生懸命働きながら笑顔で元気にお子さんを育てているおうちがあります。その男の子YくんはADHDで地域の学校の支援級に通っています。お母さんが仕事で忙しい時は放課後等デイサービスも利用していました。(※ADHD=注意欠如・多動性障害)
その親子さんとは日頃から仲良くしていただいているのですが、この日はお母さんの仕事が休めず、小学3年生のYくんがこの警報発令下におうちに一人になってしまうというので、たまたま私には仕事がなかったため我が家で預かって一緒に過ごしてもらうことになりました。
当然家には障害者通所施設が休業となってしまった重度重複障害の成人の娘(なっちゃん)がいます。
Yくんは、娘が障害を持っていて、悪気はないけど手加減知らずで叩いたり引っ張ったりすることをちゃんと理解しています。そして慣れています。慣れてはいますけど、まだ小学校低学年。やられたら痛いから泣いちゃいます。
でも、娘は娘でおそらく、小さな男の子のことを何くれとなく世話する自分の母親を見てやきもちを焼き、なんでうちのお母さんを取るのよ!?って感じでしょう。
ADHDの小さな子供さんの落ち着きのない賑やかな動きも、おしゃべりの仕方も彼女は時に苦手なのかもしれません。
Yくんに近づいて行っては手を出し足を出し、髪を引っ張り、、、。
少し時間が経って『今日はこのメンバーでこう過ごすんだよ』と娘が理解できるようになるまでは、一通り他害行為が起こるのです。
もちろん親の私は気が気じゃありません。なんとかして危険だけは回避しなくてはと必死です。Yくんが『もう嫌だ!二度と来たくない!』なんて思いになっちゃうのも悲しいことです。
『なっちゃん!優しくっ‼️』
『Yくん、逃げてっ‼️』
私が娘に注意をし、Yくんにごめんごめんと言い続ける時間が長ければ長いほど、娘の目は据わっていきます😓👿
しばらくすると二人はお互い違う部屋で好きなことをして過ごすようになって、特に互いを気にも止めずに落ち着いてきます。私もなるべく娘のそばで私のしなければならない仕事をするようにします。
場所は少し離れて、お互いが自分のしたいことをする、自分のことはできるだけ自分でする、そんな時間を工夫しながら丁寧に過ごしていきますが、ある時私が娘のそばにつきっきりになれずに何かに手を取られ、目を離した隙に娘の手がYくんの髪の毛をぐいっと引っ張りました。
Yくんが泣きべそをかきながら、
『ねえ!なっちゃんをトイレに閉じ込めて‼️』と私に懇願しました。
私の手が空くまで娘を鍵のかかった個室に隔離して、というのです。
Yくんの希望は全然酷くありません。ごもっともです。だって、髪の毛を渾身の力で引っ張られるのです。しかも結構な体格の差です。相当痛いもんね😓
でも私は、娘を鍵のかかる部屋に閉じ込めた事がありません。私と一緒に鍵のかかる部屋に入って鍵を閉めて、彼女が私の目を盗んで出ていけなくしたことはあるのですが。
彼女を1人きりにして鍵をかけることは絶対にしたくなかったんです。
かと言って、Yくんの願いを無視することもできません。
私は、もう小学3年生になったYくんに、真剣に大真面目に説明をしてお願いしてみることにしました。
『あのね、おばちゃんね、なっちゃんを鍵のかかるお部屋に一人で閉じ込めたことないねんね。ドアに鍵がかかってて出て来られないなんて嫌やん?Yくんだって嫌でしょう?だからね、どうしてもなっちゃんに悪さをされたくない時や静かになりたい時はおばちゃんがトイレに入って自分で閉じこもるねん。もしどうしても、しばらくなっちゃんと離れていたかったら、自分で鍵を開けることも閉めることもできるYくんが自分でトイレに入っといてくれへんかな?』
Yくんは、私のいうことをとっても一生懸命に聞いてくれ、
『うん、わかった!』
と、自分でトイレに行ってくれました。
Yくんはこの時、全然注意欠如なんかじゃなく私の話を一生懸命聞いてくれて、娘や私の気持ちもちゃんと汲んでくれました。
閉じ込められたら娘も嫌なんだということをちゃんと想像して共感してくれました。
そのことにたくさんたくさんお礼を言いました。
そして後の行動は彼に任せました。
もちろんYくんがトイレに行ったのだってほんの1分ほどのことです。
少ししたら娘の気も変わります。
Yくんも落ち着くし、娘もまた少し距離をおいた関わりができるようになります。
そんな色々なシチュエーションを3人で体験しながら、一番心地の良い過ごし方を模索した午前中でした。
試行錯誤しながらそれぞれのペースで過ごした時間はあっという間に流れ、すぐお昼になりYくんのお母さんが帰って来られたので、なつまま手作りのありあわせのランチを4人で食べました。
『4人で食べるランチは美味しいねぇ❣️』と言いながら最後にはちゃんと笑顔の時間になったことを心から嬉しいと思いました。
何より、YくんはYくんで一つ一つ確実に成長の階段を登っているし、娘は娘で私たちが丁寧に大切に関わろうとしていることを少しずつ汲めるようにもなってきているので、トラブルはそこそこありながらも折り合いをつけながら成長している3人(もちろん私も含みます!!)に大拍手👏👏👏👏👏👏でした。
正解なんかないからこそ、色々やってみる!
そして、色々失敗しても【大切にしたいよ】という気持ちが伝わればそれでとりあえずはよし、とする。
そんな試行錯誤が尊いと思った時間でした。