人生革命セミナーの闇 第8章: 副業の試行錯誤と失敗2
膨らむ借金
副業に次々と手を出し、失敗を重ねた田中一郎。その結果、彼の財政状況は日に日に悪化していった。ある日の朝、田中は恐る恐る通帳残高を確認した。
「まさか...」
残高はわずか数千円。田中は震える手で頭を抱えた。
そのとき、スマートフォンが鳴った。見知らぬ番号からだ。
「も、もしもし」
「田中一郎様でしょうか。○○銀行カードローン担当の山下と申します」
田中は胃が痛くなるのを感じた。
「はい...そうです」
「お客様のカードローンの返済が3ヶ月滞っておりますが...」
田中は焦って言い訳を始めた。「申し訳ありません。今、ちょっと資金繰りが...」
「分かりました。しかし、このままですと法的手続きに...」
電話を切った後、田中はソファに倒れ込んだ。
「どうすれば...」
その日の午後、田中は勇気を出して母親に電話をかけた。
「お母さん...お金を貸してもらえないかな」
母親の声には心配が滲んでいた。「一郎、どうしたの?何かあったの?」
田中は全てを話した。セミナー、副業、そして借金のこと。
母親は一瞬言葉を失ったが、すぐに優しく言った。「分かったわ。今回だけよ。でも、もうそういう怪しいものには手を出さないで」
田中は涙が出そうになった。「ありがとう...」
しかし、母親からの援助も一時的な解決に過ぎなかった。
数日後、田中は再び借金の返済に追われていた。今度は消費者金融からの催促だ。
「田中様、返済期限が過ぎております」
「すみません、もう少し待っていただけませんか...」
「分かりました。しかし、これ以上遅れますと、延滞金が発生しますよ」
電話を切ると、田中は冷や汗をかいていた。
その夜、田中は眠れずにいた。頭の中では借金の額が踊っている。
カードローン、消費者金融、そしてセミナーの参加費用のローン。全て合わせると、もはや自分の年収をはるかに超えていた。
「こんなの、一生返せないんじゃ...」
翌日、田中は藁にもすがる思いで、かつてのセミナー仲間の木村に連絡を取った。
「木村さん、お金を貸していただけませんか」
木村の声は冷たかった。「田中さん、お金の問題は自己責任です。セミナーで学んだでしょう?」
「でも...」
「むしろ、新しいビジネスチャンスがありますよ。これで一発逆転できます」
田中は誘いを断った。もう二度と騙されるわけにはいかない。
その後も、借金の督促は続いた。田中の携帯電話は鳴りっぱなしだ。
ある日、田中は意を決して法律事務所に相談に行った。
弁護士は田中の話を真剣に聞いた後、静かに言った。
「田中さん、あなたの場合、自己破産も視野に入れた方がいいかもしれません」
「自己破産...」
その言葉に、田中は現実の重さを痛感した。
家に帰る道すがら、田中は空を見上げた。雲一つない青空。しかし、田中の心は暗雲に覆われていた。
「俺の人生、どこで間違えたんだろう...」
その夜、田中は久しぶりに日記を書いた。
「借金が膨らみ続けている。もう返せる見込みはない。セミナーに参加したあの日に、戻れるなら...」
ペンを置いた田中の頬を、一筋の涙が伝った。
翌朝、目覚めた田中のもとに一通のメールが届いていた。差出人は大西小悟だ。
「田中さん、新しいセミナーを開催します。これであなたの全ての問題が解決します」
田中は苦笑いを浮かべた。もう騙されない。
しかし、その後に続く言葉に、田中は息を呑んだ。
「今回は特別に、以前のセミナー参加者は無料で参加できます」
田中の手が震えた。理性では「だめだ」と分かっている。しかし、藁にもすがる思いで...。
「行くべきか...行かざるべきか...」
田中の心は、再び激しく揺れ動いていた。
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