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人生革命セミナーの闇 序章: 紹介者とセミナーへの参加3
本セミナー参加の決意と紹介者の変更
田中一郎は、パソコンの画面を食い入るように見つめていた。山本悟から送られてきた本セミナーの案内メールだ。
「人生を変える7日間の集中セミナー」
そのタイトルに、田中は心を奪われていた。しかし、次の瞬間、目に飛び込んできた金額に息を呑んだ。
「参加費:100万円(税込)」
「100万...」田中は思わず声に出してしまった。
妻と別れてからの一人暮らし。給料は年々下がり、貯金も底をつきかけている。そんな中で100万円は、あまりにも大きな金額だった。
しかし、山本の言葉が頭の中でこだまする。
「あなたには無限の可能性がある」「人生を変えるチャンスは今」
田中は深いため息をついた。「このままじゃいけない」そう思いながらも、踏み出せない自分がいた。
その夜、久しぶりに同期の鈴木と飲みに行った。
「どうした? なんか元気ないな」鈴木が心配そうに声をかけた。
田中は少し躊躇したが、セミナーのことを話してみることにした。
「実は、ある自己啓発セミナーに興味があって...」
鈴木の表情が曇った。「自己啓発? お前、大丈夫か?」
「いや、これが本当にすごいんだ。山本悟って知ってるか?」
鈴木は首を傾げた。「知らねーな。でも、そういうの怪しいぞ。金だけ取られて終わりってパターンも多いんだろ?」
田中は少し反発を感じた。「いや、これは違う。山本さんは本物だ。テレビにも出てる有名人なんだ」
鈴木は諦めたように肩をすくめた。「まあ、お前が良いと思うならいいんじゃないか。ただ、気をつけろよ」
その言葉が、逆に田中の決意を固めた。
翌日、田中は意を決して山本に連絡した。
「セミナーに参加したいのですが、費用の支払いについて相談できますか?」
すぐに返事が来た。「もちろんです。分割払いのプランもございますよ。一緒に最適な方法を考えましょう」
田中は安堵の息をついた。そして、数日後、ついに参加の申し込みを済ませた。
「よし、これで人生が変わる」
田中は、久しぶりに希望に満ちた気持ちになった。
しかし、その翌週、突然山本から連絡が入った。
「田中さん、申し訳ありません。私に急用が入ってしまい、セミナーの担当を変更させていただくことになりました」
田中は驚いた。「え? 山本さんじゃないんですか?」
「はい、私の愛弟子の大西小悟が担当します。彼は私以上の能力を持っています。ご安心ください」
田中は困惑した。山本に惹かれて参加を決めたのに、突然の変更。しかし、今さら断るわけにもいかない。
「わかりました」田中は渋々承諾した。
数日後、大西小悟から連絡が入った。
「田中さん、はじめまして。大西です。セミナーの件、山本から聞いています。一緒に素晴らしい7日間を過ごしましょう」
声は若く、エネルギッシュだった。しかし、田中の胸には小さな不安が芽生えていた。
セミナー開始の前日、田中は荷物をまとめながら、自問自答を繰り返していた。
「本当にこれで良かったのか?」
「100万円も払って、人生は変わるのか?」
「大西って誰だ? 本当に山本以上なのか?」
不安と期待が入り混じる中、田中はセミナー会場のある都内のホテルに向かった。
ホテルのロビーに入ると、すでに多くの参加者が集まっていた。みな、期待に胸を膨らませているようだった。
「あの、田中一郎です。セミナー参加の...」
受付で名前を告げると、スタッフが笑顔で応対してくれた。
「田中様、ようこそいらっしゃいました。大西様がお待ちです」
案内されて部屋に入ると、そこには若い男性が立っていた。
「やあ、田中さん。大西です。お会いできて嬉しいです」
大西の笑顔は爽やかで、その場の空気を明るくするようだった。しかし、田中の胸の内はまだモヤモヤしていた。
「あの、山本さんは...」
大西は優しく微笑んだ。「ご心配なく。私が山本の教えを忠実に伝えます。それ以上のものをお届けできると確信しています」
その自信に満ちた態度に、田中は少し安心した。
「さあ、人生を変える7日間の始まりです。準備はいいですか?」
大西の言葉に、田中は深く頷いた。
「はい、よろしくお願いします」
部屋を出る時、田中は深呼吸をした。これから始まる未知の体験に、期待と不安が入り混じる。
「本当に人生は変わるのか...」
そう思いながら、田中は新たな一歩を踏み出した。