見出し画像

人生革命セミナーの闇 序章: 紹介者とセミナーへの参加2

山本悟との出会いと体験セミナー

「人生を変えたいあなたへ...」

田中一郎は、スマートフォンの画面をじっと見つめた。差出人は「山本悟」。見覚えのない名前だったが、なぜか目が離せなかった。

メッセージを開くと、そこには魅力的な言葉が並んでいた。

「あなたの人生は、今のままで本当に幸せですか? もし変わりたいと思うなら、私たちのセミナーに参加してみませんか?」

田中は思わず苦笑いを浮かべた。「こんなスパムみたいなメッセージに引っかかるやつがいるのか?」

しかし、その夜、缶ビールを開けながら、田中は再びそのメッセージを読み返していた。

翌日、昼休憩中にふと、山本悟という名前をネットで検索してみた。すると、驚くべき情報が次々と出てきた。

「成功者の師」「人生を変える講師」「カリスマ起業家」

田中は目を疑った。この人物は、テレビにも出演していたらしい。

「へえ...ただのスパムじゃないのか」

その日の帰り道、田中は勇気を出して返信を送った。

「セミナーについて、もう少し詳しく教えていただけませんか?」

すると、驚くほど早く返事が来た。

「田中様、ご連絡ありがとうございます。まずは無料の体験セミナーにご参加いただけませんか? 来週の土曜日、14時からです」

田中は少し躊躇したが、「まあ、無料なら行ってみてもいいか」と思い、参加を決めた。

土曜日、指定された会場に向かう田中の心臓は高鳴っていた。会場に着くと、すでに多くの人が集まっていた。

「あの、初めてなんですが...」と受付で言うと、笑顔の女性が応対してくれた。

「田中様ですね。ようこそいらっしゃいました。どうぞこちらへ」

会場に入ると、前方にステージがあり、そこに一人の男性が立っていた。

「皆さん、本日はお集まりいただき、ありがとうございます。私が山本悟です」

田中は息を呑んだ。テレビで見たことがある。本物だった。

山本の話は、驚くほど魅力的だった。

「皆さん、人生は一度きりです。今の自分に満足していますか? もし満足していないなら、変わるチャンスは今なんです!」

田中は、自然と前のめりになっていた。山本の言葉一つ一つが、自分に向けられているように感じた。

「でも、どうすれば変われるんでしょうか?」
会場から質問が飛んだ。

山本は微笑んで答えた。「それは、自分自身と向き合うことから始まります。私たちのセミナーでは、あなたの潜在能力を引き出し、本当の自分を見つける方法を学びます」

2時間のセミナーがあっという間に過ぎた。終了後、参加者たちは興奮した面持ちで話し合っていた。

「すごかったですね!」
「山本さんの話、心に響きました」
「私、本セミナーに参加しようと思います」

田中も、何か心が軽くなったような気がした。そんな中、突然肩を叩かれた。

「どうでしたか、田中さん」

振り返ると、そこには山本悟本人が立っていた。

「あ、はい...とても勉強になりました」
田中は緊張して答えた。

山本は優しく微笑んだ。「田中さん、あなたには大きな可能性が眠っています。それを引き出すお手伝いをさせてください」

田中は戸惑いながらも、なぜか断れなかった。

「はい、ぜひお願いします」

帰り道、田中の頭の中は山本の言葉でいっぱいだった。

「変われる」「可能性がある」「人生を変える」

家に帰り、再び缶ビールを開けながら、田中は考え込んだ。

「本当に変われるのか? でも、このままじゃいけない気がする...」

翌日、山本から連絡が来た。

「田中さん、本セミナーへの参加をお待ちしています。あなたの人生が変わる瞬間を、一緒に見届けましょう」

田中は深呼吸をした。そして、意を決して返信を送った。

「参加させてください」

送信ボタンを押した瞬間、何かが変わる予感がした。しかし同時に、不安も感じていた。

「本当にこれでいいのか...?」

そんな疑問が頭をよぎったが、田中は振り払った。今の生活を変えたい、その思いだけは確かだった。

「よし、やってみよう」

田中は自分に言い聞かせるように呟いた。新しい一歩を踏み出す決意が、少しずつ固まっていくのを感じていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?