見出し画像

人生革命セミナーの闇 1章: 初めてのセミナー体験3

懇親会での高揚感

セミナー初日の夜、豪華なホテルのバンケットホールで懇親会が開かれた。田中一郎は少し緊張しながら会場に足を踏み入れた。

「わぁ...」思わず声が漏れる。

ホールには高級感あふれる料理が並び、シャンパンタワーまで用意されていた。参加者たちは既に歓談を始めており、会場は活気に満ちていた。

「田中さん、こっちですよ」

声の方を振り向くと、昼間から隣に座っていた佐藤が手を振っていた。田中は安堵の表情を浮かべながら、佐藤の元へ向かった。

「ありがとうございます。すごい会場ですね」

佐藤は嬉しそうに頷いた。「そうでしょう? これも全て、私たちの可能性を開くためなんです」

そう言いながら、佐藤はシャンパングラスを田中に手渡した。

「さあ、乾杯しましょう」

グラスを合わせる音が響く中、大西小悟が壇上に立った。

「皆さん、素晴らしい一日でしたね。今日学んだことを、これからの人生で活かしていってください」

参加者たちから拍手が沸き起こる。

「そして、この懇親会では、新しい仲間との絆を深めてください。ここにいる全ての人が、あなたの人生を変える鍵を持っているかもしれません」

大西の言葉に、会場が一層盛り上がる。

田中は周りを見回した。みな楽しそうに会話を弾ませている。しかし、田中にはまだ馴染めない雰囲気だった。

「大丈夫ですか?」

突然、後ろから声をかけられた。振り返ると、そこには南由紀子が立っていた。

「あ、はい...ちょっと緊張してて」

南は優しく微笑んだ。「それは当然です。でも、ここにいる全ての人があなたの味方なんですよ」

その言葉に、田中は少し安心した。

「そうですね。ありがとうございます」

南は周りを見渡し、一人の女性を呼び寄せた。

「こちらは木村さん。前回のセミナー参加者です。今は自分の会社を経営していらっしゃいます」

木村は明るく手を差し出した。「はじめまして、木村です。田中さんは初参加ですか?」

田中は少し緊張しながら答えた。「はい、初めてです」

「そうですか。私も最初は戸惑いましたが、このセミナーで人生が変わりましたよ」

木村の言葉に、田中は興味を持った。「どのように変わったんですか?」

「それまでは平凡なOLだったんです。でも、このセミナーで自分の可能性に気づいて。今では年商1億円の会社を経営しています」

田中は驚いた。「1億円...すごいですね」

木村は謙遜しながらも、誇らしげな表情を浮かべた。「全て、ここで学んだことのおかげです」

その後も、田中は次々と参加者たちと言葉を交わした。成功者たちの話を聞くうちに, 田中の中にも希望が芽生え始めた。

「もしかしたら、俺にもできるかもしれない」

そう思った瞬間、大西が近づいてきた。

「田中さん、楽しんでいますか?」

「はい、皆さんの話を聞いて、とても刺激を受けています」

大西は満足げに頷いた。「そうですか。田中さんにも、大きな可能性がありますからね」

突然、大西が田中の肩に手を置いた。

「目を閉じてください」

田中は戸惑いながらも従った。

「今、あなたの未来が見えます。素晴らしい成功を収めている姿が...」

大西の声が、まるで催眠術のように田中の心に染み込んでいく。

「はい、目を開けてください」

目を開けた田中の表情が、少し変わっていた。希望に満ちた眼差しだ。

「ありがとうございます。頑張ります」

田中の声には、今までにない決意が感じられた。

懇親会が終わる頃には、田中の周りには新しい仲間が何人もできていた。LINEやFacebookの交換も済ませ、明日からのセミナーへの期待が高まっていた。

「田中さん、また明日ね」
「一緒に頑張りましょう」

仲間たちの声に送られ、田中は自室へと向かった。

部屋に戻り、ベッドに横たわった田中は、天井を見つめながら今日一日を振り返った。

「すごい一日だった...」

難解な理論や、成功者たちの話。そして、新しい仲間との出会い。全てが新鮮で、心が高揚していた。

「明日からも、頑張ろう」

そう呟きながら、田中は目を閉じた。明日への期待と、少しの不安が入り混じる中、彼は深い眠りについた。

セミナー初日は、こうして幕を閉じた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?