人生革命セミナーの闇 8章: 副業の試行錯誤と失敗1
次々と手を出す副業
うつ病の診断を受け、休職中の田中一郎。しかし、セミナーコミュニティからの圧力と、自身の焦りから、彼は休養に専念することができずにいた。そんなある日、田中のもとに一通のメールが届いた。
送信者は木村。セミナーで知り合った「成功者」の一人だ。
「田中さん、元気ですか?あなたにぴったりの副業を見つけました。これで休職中でも収入が得られますよ」
田中は躊躇しながらも、その誘いに乗ることにした。
木村との電話で、ネットショップの運営について説明を受ける。
「簡単ですよ。中国から安い商品を仕入れて、日本で高く売るだけ。利益が出ないわけがありません」
田中は半信半疑だったが、藁にもすがる思いで始めることにした。
しかし、現実は厳しかった。商品は売れず、広告費だけがかさんでいく。
「なぜだ...木村さんは簡単だと言っていたのに」
落胆する田中のもとに、今度は佐藤からLINEが入った。
「田中、聞いてくれ。今、仮想通貨がアツいんだ。俺も始めたけど、もう利益が出てるぞ」
田中は迷った。ネットショップで失敗したばかりだ。しかし、佐藤の熱意に押され、少額から始めることにした。
「よし、これで一発逆転だ」
しかし、仮想通貨の世界は変動が激しく、田中は瞬く間に投資額の半分を失ってしまった。
「ま、まさか...」
パニックになる田中。そんな時、セミナーのLINEグループで新たな副業の話題が上がっていた。
「アフィリエイトで月収100万円達成しました!」
田中は藁にもすがる思いで、その人物にDMを送った。
「どうすれば成功できるんですか?」
相手からすぐに返信が来た。
「特別なノウハウがあります。50万円でお教えしますよ」
田中は悩んだ。もう失敗は許されない。しかし、これが最後のチャンスかもしれない。
結局、貯金を崩してノウハウを購入。必死でブログを書き始めた。
しかし、アクセス数は伸びず、収益は全く上がらない。
「なぜだ...俺だけがダメなのか?」
焦りと不安で、田中の症状は悪化の一途を辿っていた。
ある日、友人の健太から久しぶりに電話がかかってきた。
「おい、一郎。大丈夫か?」
田中は涙ぐみながら現状を説明した。
健太は深いため息をついた。「お前、騙されてるんだよ。そんな簡単に儲かる話なんてないんだ」
「でも、みんな成功してるって...」
「本当に成功してると思うのか?」健太の声は真剣だった。「よく考えろ。本当に成功してる奴が、そんな情報を売るか?」
田中は言葉を失った。
電話を切った後、田中は長い間考え込んでいた。
そして、ふと気づいた。これまで手を出してきた副業。どれも「簡単に儲かる」と謳っていたが、実際に儲かっていたのは、情報を売った側だけだったのではないか。
「俺は...ずっと騙されていたのか」
その夜、田中は全ての副業アカウントを削除した。SNSも一時的に離れることにした。
しかし、問題はまだ残っていた。借金と、使い果たした貯金。そして、悪化したうつ症状。
田中は深いため息をついた。
「これから...どうすればいいんだ」
窓の外では、夕暮れが迫っていた。田中の部屋に、長い影が伸びていく。
彼の前には、まだ長い道のりが待っていた。
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