母、朝ドラ「虎に翼」からの脱線
毎朝、ホームで93歳の母と一緒に朝ドラ「虎に翼」を見ている。
#107放送の中で男子学生が寅子たちに対して 「… 女がなぜ働くの?働かない方が得なのに…」と。
戦後、うちの母も27歳で結婚するまでは働いていたから、「お母さんはなぜ働くことにしたの?」って聞いてみた。
「あたりまえだったから。人間遊んじゃいけないような、仕事しないのがおかしいみたいだったから。今は働くイコールお金って、なんでも金銭にしちゃうみたいだけど、お母さんの頃は違ったから。」と。
へえ、って思った。
「しなくてもいいんだけど、やってたわね」と笑う。
そこからは母の得意な話の大脱線が始まった(笑)
母は東京、虎ノ門育ち。
「あの頃、住んでたお家がさ、角地でね、大きな通りと小さな通りの角地だったの。大きな通り側の並びに京都の呉服屋さんがあったの。昔ながらの和風建築だった。
そしてお風呂屋さんがあったのよ。それは大通りのお向かいにあってね、子供達が一緒に開店と同時に行ったりして、一番風呂は気持ちいいの。遊ぶのよ、誰かしら大人も一緒だったけどね。」
朝ドラ話から脱線して、何の話かと思ったが、このお風呂屋さんの話は、たぶん母の少女時代。戦前の長閑な時代のお話。
「竹でできた縁台があってね。町内会が設置してくれるの。」
縁台とは木製のベンチの様なもので、あちこちにあったそうだ。
「縁台でちょっとお喋りしたりして、皆んな優雅なもんよ。虎ノ門は芸者もいた。大人は縁台に将棋盤持ってきたりもしてた。お風呂屋さんのあと、裸みたいな格好でおじさん達が涼んだりもね。」
なんだか長閑な風景が目に浮かぶようで、聞いていて心地良かった。
「虎に翼」がたくさんの母の思い出を引き出してくれる。