わたしは…

30歳の誕生日が過ぎた。

『もう30年も生きているのですね』

うん〜色々あったなぁ

『振り返ってみます?』

そうしてみようか

『じゃあ手始めに、自己紹介をどうぞ』

自己紹介ね〜
8月で30歳になりました
しし座です
配偶者と娘がいます、以上

『いやいや、貴方はどんな人かこれじゃ伝わらないですよ』

どんな人?
どんな人って言われても…

『性別は?』

生物学的には女です

『生物学的に?』

そうだけど…

『なぜその様に答えるの?』

なぜ?
わたしは…女性?

こんな疑問、普通は思春期に考える事なのだと思うけど
アイデンティティを確立する為の反抗期が来なかったわたしは、それをこの歳になって考える。

幼い頃から小さな違和感はあった
スカートよりもズボンが好きだった事
ロングヘアよりもショートヘアに憧れた事
可愛いよりもかっこいいと言われたかった事
異性からの告白を気持ち悪いと思っていた事
「女らしく」という言葉が大嫌いな事

それでも、
芸能人で好きになるのは男性だったし
だからわたしは間違いなく女だと思っていた

けれども、
男性と付き合っても気持ち悪く思った事はあったし
行為は好きになれないし
サラシみたいなのを巻いて胸を平らにした事もある
女性で可愛いと思う人や綺麗だなと思う人といると
ドキドキした

決定的だったのは、恋をした事だった。
ずっと可愛いと思っている女性に彼氏ができたり他の人と仲良くしていると無性にイライラしてしまったり
気がつくと真顔で可愛いと連呼していたり
SNSを追ったり好きな物を探ったり…
この感情は何なんだと思い、「恋だ」と気づいた時には絶望感しかなくて
その後、その女性から距離を置かれてしまって
悲しくて泣いた事があった
ああ同性を好きになるってこういう事か
わたしは女性を好きなのかと理解したと同時に
蓋をする事もした

単純に苦しかったから、辛かったから
おそらく受け入れてはもらえないでしょうし
そもそも信じてもらえるかも分からない
何故なら男性アイドルが好きだったから
彼らを好きな理由は異性として好きというより
あんな風にかっこよくなりたかったからという方がしっくりきた
そんな気持ちで過ごした学生時代だった。

社会人になって
自分はどう在るべきなのかを知らされた
そして
大嫌いな「女らしく」を受け入れた
メイクもして髪も伸ばして服装も変えて
愛嬌を持って接した
すると周りの反応が変わった
こうしなきゃいけないんだと悟った
男性から好かれるのを気持ち悪いと思わず
ありがたく思って好意に応えて
可愛いと言われる事に嫌悪感を示さず
「自分は女なのだから」と呪いをかける
笑ってる自分が気持ち悪かった
スカートを履いている自分が気持ち悪かった
触れられる事が気持ち悪かった

そんな中、運良く今の旦那と出会った
不思議と受け入れられた異性だった
この人の為に可愛くなりたい
綺麗になりたいと
初めて思った人だった
子どもができて結婚
わたしが女性も好きなんてこと
無かったことにしようと思った
今の幸せを大切にしなきゃって

そんな折
ぺこちゃんとりゅうちぇるの離婚
新しい家族の形
りゅうちぇるのカミングアウト
わたしはこの家族の決断に
このりゅうちぇるの決断に
物凄く勇気をもらった
こういうのもいいんだ!
ありなんだ!って
自分がそうするかは別として
ただ、りゅうちぇるが自分と似てる部分があって
とても安心した。
もしかしたら、そんな気持ちを何かの形で
りゅうちぇるに伝えておけば
彼女も今頃は…なんて考えてしまう。
結局は、世間は、ステレオタイプしか受け入れられないんだと思わざるを得なかった。

そんな葛藤を持ったまま30歳になった。
改めて自分を見つめ直してみた。
取り繕ったロングヘアをバッサリ切った。
最低限のメイクでほぼすっぴんでも良いと思える様になった。

旦那に行為はしたくないと伝えた。
女として見られるのが辛いと伝えた。
他の人に行っても仕方ないと伝えた。
離婚を提案した。

旦那はやっと掴んだ幸せを壊したくない。
と言った。

これで正解なのかは分からないけど
わたしは、わたしらしく生きたいと
30になって初めて思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?